2023.03.11
チョウ目昆虫においてオス殺しを実行するボルバキア因子の同定に成功
微生物の中には、自己の利益のために宿主を様々な方法で操作するものが存在します。共生細菌であるボルバキアはその1つであり、宿主の性決定や生殖のシステムを操作することで次世代への感染拡大を図っていると考えられています。チョウやガの仲間(チョウ目昆虫)では、ボルバキアの共生によってオスのみが致死する「オス殺し」現象が知られています。ボルバキアはミトコンドリアと同じように母系で次世代に伝わるため、オス殺しによって集団内の感染メスの割合を増やし、自身の感染拡大につなげていると考えられています。今回、勝間進らのグループは、チョウ目昆虫においてオス殺しを誘導するボルバキアタンパク質Oscar(オス狩る)を同定し、オス殺しの仕組みを明らかにしました。本研究成果は、微生物がいかにして宿主の性決定システムをハイジャックし、自身の感染拡大を行うのか、そのメカニズムを解明したものです。本研究を足がかりにして、微生物による宿主の性や生殖のコントロールに関する研究の進展やOscarを利用したチョウ目昆虫の性操作技術の開発が期待されます。
発表論文情報(Nat Commun)