| 会長挨拶 | 沿革と規約 | 役員紹介 | 会報 | メールニュース | 古市賞・田辺賞 | ホストファミリープログラム | 先輩の声 |
| HOME | 事務局から | リンク | サイトマップ | English | E-mail | 
先輩の声
三島 徹也氏(83年卒) 松井 保幸氏 (87年卒) 岡本 章司氏(89年卒) 土屋 智史氏(96年卒)
  上田 功氏(90年卒) 北河 大次郎氏(92年卒) 廣瀬 利雄氏(55年卒)
綿谷 昭夫氏 (72年卒) 大野 浩氏(83年卒・故人) 田口 治宏氏(84年卒) 瀬古 一郎氏(90年卒)
水谷 誠(85年卒) 盛谷 明弘(86年卒) 滝本 勝(97年卒) ジェ シュ氏(12年卒)
シタラム氏 (90年卒) ハメド ハドホウド氏(10年卒) ペンヌン ワーンニッチャイ氏(85年卒) ヤニさん(10年卒)
ヨランダ アルベルト氏 (14年卒) ラン ビン(89年卒) 森 昌文氏(81年卒) 天野 玲子氏(80年卒)
田代 民治氏 (71年卒)

 

氏 名: 森 昌文

昭56年卒、測量研究室(中村英夫先生)、写真左から2人目
昭和56年、旧建設省入省。米連邦運輸省道路庁、官房技術審議官、近畿地方整備局長、道路局長などを経て平成28年より技監

インタビュアー:梅澤祥太(交通研M1、写真右)・長谷川悠(大口井料研M1、写真右から2人目)

 

・学生時代の生活「授業よりも、本が好き。」

 学生時代は、授業に出ずに本を読んでいることが多かったですね(笑)。普通の文芸本も含め、本当に様々な種類の本を読みました。そんな生活のため授業に出なかったものですから、中村英夫先生から家に電話がかかってきたこともありました。「お前ら麻雀しているんだろ。授業に出てこい、出てこないと卒業させないぞ」って。たまに授業に出ても、ノートには和歌とか俳句とかをよく書いていました。そんな私を見ていた同級生は「森君が建設省に行くとは思っていなかった。君は物書きにでもなるんじゃないかと思っていた。」と笑っていました。

・現場に身を置いた経験が今の仕事の基礎に

 現場を経験することが技術者にとって本当に大切だと感じています。実は私は学生時代に土木作業員のアルバイトをしていたことがありました。今の建設産業は若手の不足に悩まされていますが、現場の人の考え方や大変なことを知らずに、その状況を改善する政策を作ることはできません。若い皆さんには、ぜひ現場の人たちの目線で社会を見ることができるような経験を積んでほしいと思います。
 建設省に入ってからの初期のキャリアでも、現場に出させてもらいました。はじめは通常ではあまり配属されない出張所にも配属してもらいました。自分の目で現場を見て、地元のおじいさんおばあさんと話をして工事の説明をして了解を得る、という大変なお仕事でしたが、非常に良い経験になりました。その経験は今の自分の仕事のやり方の基礎にもなりました。
 現場の仕事で大変なものに30才手前だった頃に経験した用地買収の仕事がありました。約500日の間に約500回説明会を開き、その間会った人は延べ2万人にも上りました。説明会ではちょっとしたものの言い方にも気を配りました。一言一句をテープレコーダーで録音されていますし、悪い時にはものを投げられたり、もう二度と来るなと言われたりすることもありました。そういった人たちにどのように説明して、彼らの意見をどのようにまとめていけばよいのかといったことを考えるためには、やはり現場の経験が重要になってきます。

・空想力、妄想力

 きっと東大の皆さんは、お父さんお母さんに怒られることなく育ってきたという人が多いのではないでしょうか。そんな純粋培養が続くと、世の中の人が何にどのように困っているのか想像もできないかもしれません。例えば、マイルドヤンキーと呼ばれる人たちがどう育ち、何をどのように考えているのか見当がつきますか。しかし日本の中には、皆さんが理解できない人々も含まれていることを理解すべきです。そことかけ離れた政策をやっていてはいつまでも現状の課題は解決できません。
国民の目線に立つために必要なもの、それが空想力・妄想力です。すべてが経験に裏付けられていれば申し分ないのですが、経験できないところは空想で補うしかありません。例えば子供が生まれてベビーカーを押すようになったら何が困るのだろうと空想するだけで町が違って見えるはずです。皆さんには、常に空想・妄想をしてほしいと思います。今思えば私の学生時代は、空想力の訓練をしていたのかもしれませんね。

・官僚としてのトレーニング

 現在の国交省の職員には、空想力が足りないと思います。今までうまくいっていたことはそれでも良いかもしれませんが、空想力が足りなければ必ず制度や政策からこぼれてしまう人が出てきます。現場の経験と想像力とそれを伝えるためのコミュニケーション力、それがすべてそろってこそ、良い仕事ができるのです。
 そこで、国交省で働く職員ために、様々なトレーニングを課すことにしました。国交省に入ってすぐの新人にはコミュニケーション力を鍛えるためのプログラムに取り組んでもらいます。先輩について行くのではなく自分で機会を設定して、地元のおじいさんおばあさんと話して理解してもらう力を養います。こういった経験を積み重ねることが大切です。
 その後入省15年くらいまでは色々なオンザジョブトレーニングをしていただこうと考えています。例えば、1年間で100人の、市町村長・社長・大学の先生などトップの人から話を聞いてくることもトレーニングです。また、技術力のトレーニングとして、新技術の現場での適用をテーマに年に2編の査読論文をメインオーサーで書いてもらうことを考えています。テーマは新技術の現場での適用です。

世界を考えること

 国交省の内定者には、こうしたい、こうすべきだと思うことをいつでも100個くらいはたちどころに言えないと駄目だという話をしました。例えば、年金・福祉の問題に興味を持っていますか。国家財政を破たんさせないためにはどうしたらよいかを考えたことがありますか。ちょっとニュースを見るだけでもたくさんネタがあるはずです。そういった問題について「誰かが解決してくれるだろう」という考えは大間違いです。ただし皆さんには、How to ではなくて what to をぜひ考える人になってほしいと思います。How to はもう先人が考えていますから。そのHow to を実行するだけでは、それは皆さんの役割ではありません。
 常に空想をめぐらし、社会のあらゆることに興味をもって「世の中、どう良くしていこうか」ということを考えて欲しいのです。

 


 
 Copyright(c)2008 東大土木同窓会 All rights reserved.