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先輩の声
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  上田 功氏(90年卒) 北河 大次郎氏(92年卒) 廣瀬 利雄氏(55年卒)
綿谷 昭夫氏 (72年卒) 大野 浩氏(83年卒・故人) 田口 治宏氏(84年卒) 瀬古 一郎氏(90年卒)
水谷 誠(85年卒) 盛谷 明弘(86年卒) 滝本 勝(97年卒) ジェ シュ氏(12年卒)
シタラム氏 (90年卒) ハメド ハドホウド氏(10年卒) ペンヌン ワーンニッチャイ氏(85年卒) ヤニさん(10年卒)
ヨランダ アルベルト氏 (14年卒) ラン ビン(89年卒) 森 昌文氏(81年卒) 天野 玲子氏(80年卒)
田代 民治氏 (71年卒)

 

氏 名:ペンヌン ワーンニッチャイ
タイ出身
昭和60年修士課程修了、平成2年博士課程修了
アジア工科大学教授

インタビュアー:アッタエ ムスタファ(橋梁、修士1年、パキスタン出身)、ラングラウィ ワッタナポンプロム(コンクリート、博士3年、タイ出身)

 

アジア工科大学から東大土木の卒業生であるペンヌン ワーニッチャイ先生(以下ペンヌン先生)が来日されました。現在、地震工学の研究のほか、構造物の能動的振動制御や空気力学そして構造動力学も専門にされています。

Q1.学生時代の生活は?
バンコクのチュラロンコン大学を卒業後、文部科学省の奨学金を得て東京大学に修士号を取りにきました。来日前には鋼構造学と橋梁工学ぐらいしか勉強していませんでしたが、来日後はそれまで想像できなかったほど、さまざまな分野の勉強をしました(笑)。勉強は面白かったのですが、修了時には「no more!」な気持ちで、藤野陽三先生に「もうこれ以上勉強しません。」と伝えました。すると伊藤學先生が日立造船での職を見つけてくださいました。この会社は当時バンコクで斜張橋を建設していたからです。ところが働いているうちに研究の方が面白いなと思ったのです(笑)。橋梁建設に用いる技術は興味深かったのですが、それは他の多くの橋ですでに採用された技術を改良し、バンコクの橋に適用したものでした。私は新しくて自分にしかできない仕事に挑戦するために、新しい研究をしたいと考え始めました。藤野先生に相談すると博士課程への進学を勧められましたので、今度は喜んで進学することにしました。
現場での経験がない時には、どのテーマも面白そうで、これという研究テーマが見つからなかったのですが、働いてみたおかげで、どのテーマがふさわしいのかがはっきりとわかるようになりました。それでもテーマを決めるのに1年半かかりましたが、最終的に当時は画期的なテーマであった振動制御をテーマに選びました。
博士課程を修了すると藤野先生はアメリカのノースウェスタン大学でポストドクターの職を紹介してくださいました。私はそこで1年間Igusa Takeru教授とともに構造力学を研究し、母国タイに帰国した後、AITに迎えられて今日まで研究を続けています。


Prof. Pennung WARNITCHAI, Prof. Koichi Maekawa, Atta E Mustafa, Rungrawee Wattanapornprom (Left to Right)

Q2. 日本に来て大変だったことは?
修士課程の1年目はホームシックにかかり辛かったです。文化の違い、言葉の問題、そして働き方がかなり違いました。それからだんだんと自分の環境を楽しめるようになり、漫画を読んだり、テレビを見たり、日本人の友達を作ったり、2年目にはすっかり第二の我が家のようになりました。

Q3. タイに帰ってから文化の面で違いを感じたことは?
特にありません。AITにはたくさんの国から学生が来ており、学内の文化も多様です。また、日本にいた時も日本人と一緒に働くのは楽しみましたが、日本人のスタイルに同調したいとは思いませんでした。私自身の性質は日本にいる間も変わらず、日本人とは違うとわかっていましたから。

Q4. 他の国と比較して、日本で研究することの利点は?
日本での研究は「問題解決を志向する。Problem Oriented」ということです。問題から出発し、それをあらゆる方法を見つけて解決していきます。日本以外の国の大学を卒業した人と働くと特にそのことを感じます。研究をやっていると自分の専門分野に固執しがちですが、問題があるとそれを解決するためには、他の分野の学問からも学ばなければなりません。実はこのことが長い期間キャリアを伸ばしていくのに重要なのです。私の場合、タイではまだよく理解されていない領域である地震工学を新たな自分の専門として選びました。そのために地震災害評価について知識も習得し、マスコミや政府の組織とともに取り組まなければなりません。私はこの働き方を私の先生たちから学びました。先生は研究だけしているのではありません。私たちは「結果を出すことを志向する。Result Oriented」であるべきです。そのためには居心地よい分野だけに固執してはなりません。むしろ、問題をみて答えを得るためにもっと広い分野の人々と関わっていかねばならないのです。日本には、さまざまな分野に優秀な研究者や大学教授がたくさんいます。タイに帰ったとき、面白い課題はたくさんありましたが、それに対して本格的に取り組んでいる研究者たちはまだ少数でした。日本では課題に対してありあまるほどの研究者がいる一方、タイには研究者の足りない課題がいっぱいです。

Q5. 修士課程や博士課程に行く前に、現場を経験することは重要ですか?
実際にエンジニアとして現場で働くことはとても重要です。大学教員の目からも現場経験のある学生の方が大人ですし、どのように物事が動くのかもよく理解しています。学業だけの知識、例えば数学などでは普通の学生と違いはありませんが、問題を理解する力は上です。よく知っていれば、よりよい判断をすることができます。現場経験があることで、さまざまな観点で問題を考えられます。ですから修士課程、博士課程に入る前に就業経験を積むという考えには強く賛成します。

Q6. 若い研究者や専門家に対してアドバイスは?
今、日本で勉強している学生には重要なアドバイスはありません。指導してくださる先生に忠実に従い、先生をHappyにする成果を出せば卒業させてくれるのですから(笑)。
問題はそれからです。卒業後が大変なのです。勉強している間は奨学金もあなたの研究を正しく導いてくれる先生もいます。でも多くの問題は卒業後にやってきます。帰国して自分の研究を続けられる場所を探すときです。私はこの問題をたくさん見てきました。適切な組織に入らないために、研究を続ける場所がないのです。研究設備や助成金もないところでは研究は続けられません。これについてはいいアドバイスはありませんが、打ち克つ方法はたくさんあります。
もしも生き残れたら、世の中にたくさんの変化をもたらすことができます。変化をもたらすことができれば、あなたの国を発展させるのにきわめて重要な貢献ができるでしょう。

Q7. 東大土木の卒業生として、若い同窓生へのアドバイスは?
“人とのつながり”は一生のものです。例えばAITの同窓会は、大学の経営が危機に陥ったとき、危機を救う大変大きな役割を担いました。卒業生たちがAITを危機から救ったのです。それは誰しも予想しなかったことでした。東大土木の組織も強いと思います。なぜなら、東大土木の先生と生徒の結びつきは、他のどの国よりも大学よりも強いからです。例えば、私・・ですが、今回藤野先生に招待されて3週間ほど日本に滞在します。卒業してもう30年以上も経つのにです。いまだに先生は私にたくさんの課題を与え、私はそれに対して“No”と言えないのです(笑)。
ですから東大土木同窓会はこのような”人とのつながり“をキーポイントにして、発展させていけばよいと思います。

 


 
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