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Vol.38 2010年 8月号 化学・生命系3学科特集! |
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Vol.38 8月号
アンモニアで目指すクリーン社会
アミノ酸、アンモニアなど窒素原子を含む化合物を我々は生活の中のいたるところで利用していますが、その生成は容易ではありません。西林仁昭准教授は触媒反応工学を専門とされており、工学系研究科総合研究機構が取り組んでいる「若手育成プログラム」に採用された通称「スーパー准教授」です。先生のご専門であるアンモニアの生成法について伺いました。
Q.「若手育成プログラム」とはどのようなものなのでしょうか?
将来世界に発信できる研究成果を上げることを目標に国内外から研究者を公募して、工学系研究科が独自に支援するプログラムです。現在私も含めて5 人の教員が採択されており、学内の研究以外の仕事は極力省いてもらっています。また、研究室のスペースとして200㎡、着任してから3
年間は1000万円を通常の研究費以外にもらっていました。 |
工学系研究科 総合研究機構
西林仁昭准教授 |
5 年( 3 年を限度とした1 回の再任可)という任期付きですし、最初は実験器具も何もないところから研究室を立ち上げなければならなかったので大変な部分もありましたが、研究に没頭できる良い環境を与えてもらっています。
Q.先生の取り組んでいらっしゃる「窒素固定」(空気中の窒素分子を窒素化合物に変換すること)の研究について教えてください。
人間の体内で生命維持に必要な核酸やアミノ酸には窒素が含まれていますが、人間は空気中の窒素を体内に取り込んで窒素化合物に変換することはできません。しかし、マメ科の植物の根に存在する根粒菌はニトロゲナーゼという酵素を用いて非常に温和な条件の下で窒素からアンモニアを合成できます。それを植物が取り込み、人間が植物を食べることで体内に取り入れているのです。
一方で、医薬品や繊維などにも含まれているアンモニアは工業的にはハーバー・ボッシュ法と呼ばれる方法を用いて生成されていますが、高温高圧という厳しい条件下で、しかも全人類の消費するエネルギーの数パーセントとも言われる非常に大きなエネルギーを必要とします。
そこで我々の研究室ではニトロゲナーゼを模した「窒素錯体」を触媒として用いる方法を研究しています。モリブデンを使った窒素錯体では実際に穏やかな条件下で効率よくアンモニアを作り出すことに成功しました。
また、将来的にアンモニアを窒素・水・光から合成することができるようになれば、アンモニアをエネルギー媒体として用いる「アンモニア社会」が実現すると考えています。
Q.「アンモニア社会」を目指すメリットはなんでしょう?
従来の化石燃料は燃やせば二酸化炭素を排出します。一方で、水素は水しか排出しませんが、貯蔵・運搬が非常に困難です。その点アンモニアは窒素と水素への分解反応で二酸化炭素を出さずにエネルギーを得られ、少し圧力をかければ液体になり取扱いも容易になります。
つまりアンモニアをエネルギー媒体にできれば現代の環境・エネルギー問題を解決し得るのです。実現するのはまだまだ先かもしれませんが、窒素固定の研究の一つの目標だと考えています。
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東京大学工学部・大学院工学系研究科 広報室学生アシスタント
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