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Vol.35 2010年 2月号 電気電子工学科特集 |
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Vol.35 2月号
脳の認識をもとにした人に近い半導体集積回路
今回お話を伺った電気系工学専攻の柴田直教授は脳の認識をもとにした半導体集積回路について研究されていらっしゃいます。さまざまな分野への応用が期待される人に近い回路の可能性を物理学の魅力とともに語っていただきました。
Q.半導体集積回路とはどのようなものですか?
半導体集積回路とは、スイッチの働きをするトランジスタを1cm四方ほどのシリコン(Si)の小片上に一杯に詰め込んだものです。一つの回路にトランジスタを詰め込めば詰め込んだだけ、高い能力が出せることになります。ここ40年間、トランジスタを小さくする研究が続けられてきましたが、もう限界に差し掛かっています。 |
柴田直教授
工学系研究科 電気系工学専攻
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Q.先生が研究されている脳の認識をもとにした回路の特徴は何ですか?
人間の脳のしくみはとても複雑です。心がどんな機構で働いているのかという謎は永遠に解けないかも知れませんが、私はその根本となる原理はごく単純なものなのではないだろうかと考えました。物理学の素晴らしさは、複雑な自然現象をシンプルな原理で説明できることです。
心の問題も同じように解けないかと期待しています。人間は写真でもイラストでも、犬は犬だと認識できますが、これは現在のコンピューターにはなかなか難しい問題です。複雑な方程式を瞬時に解くことができても、人間のように柔軟にものごとを判断するのが苦手です。私たちの心がどんな風に働いているのか。それを内省的に観察して、良く似た働きをする回路を作ろうというのが我々の研究です。
脳の認識をもとにした回路の概念図
Q.この回路は、どのような分野への応用が期待されていますか?
普段と様子が違うと瞬時に判断して異変を知らせてくれるセンサーへの応用です。これからの少子高齢化社会でお年寄りや患者さんを見守るシステムとして必要になります。連想・直感・類推を柔軟にできるコンピューターの応用はまだまだ広がるでしょう。
Q.最後に学生へのメッセージをお願いします。
今やっている勉強をしっかりと身につけてください。将来あらゆる場面で、諸君が活躍するときの基礎となります。私はよく学生に「10分の1法則」という話をします。たとえば同じ世代の人は、ざっと全人口の10分の1。そのうち大学で勉強しているのは10分の1。真面目に・・となるとまた10分の1。さらに、エレクトロニクスを専攻している、脳に興味がある・・・等々と何回か10分の1をかけていくと、世界でたった一人のスペシャリストになれるのです。基礎学力を涵養すること、そして、どのようにユニークな自分の特性を絞り込んでいくかが、とても大事です。
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東京大学工学部・大学院工学系研究科 広報室学生アシスタント
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