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Vol.35 2010年 2月号 電気電子工学科特集 |
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Vol.35 2月号
宇宙へ行くロボット
JAXA(宇宙航空研究開発機構)では、大学共同利用機関として全国の国公私立の大学院生を受け入れて、大学とともに共同研究を行っています。
東京大学の工学系、理学系の研究室も、ここ相模原キャンパスで宇宙科学の研究を行っています。そして相模原には、航空宇宙工学、機械工学はもちろん、電気・電子工学系の研究室もあります。
今回は、宇宙探査ロボットを研究されている、電気系工学専攻の久保田孝教授にお話を伺ってきました。
Q.研究内容について教えてください。
宇宙人工知能とロボティクスについて研究しています。月や火星等に行って探査をするとき、人間が全部指示するわけにはいかないので、ある程度知能を持ち、自分で考えて探査をする、探査機・ロボットが必要です。そこで、人間の代わりに探査して、我々がほしいもの、例えば画像や石をきちんととってきてくれたり、分析したりしてくれるロボットを作っています。
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久保田孝教授
工学系研究科 電気系工学専攻
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Q.実際にどんなロボットを作ったのですか?
はやぶさという探査機にのせて実際に宇宙へ打ち上げた、ミネルバという重さわずか600gのロボットを作りました。残念ながら小惑星におろすとき、落とす速度が速かったために失敗して、表面に降りられなかったのですが、ミネルバは写真を撮って地球に送ってくれました。これは日本初の探査ロボットで、小惑星で活躍していたら、世界初のロボットになったことでしょう。月と火星はアメリカや旧ソ連が探査していたことがありますが、小惑星はまだどこもやっていないのです。もちろん、月や火星に行くロボットも研究しています。
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崖を上ることができる
多脚型探査ロボット |
Q.探査してどのようなことがわかったのでしょうか?
まず一つは、宇宙の始まりの手掛かりを得たことです。写真を撮ったり、密度を測ったりしたことで、小惑星は宇宙ができたときにビッグバンで爆発し、ぶつかったり、衝突したり、くっついたりというのが繰り返されてできたとわかりました。この成果はサイエンスという世界的に権威のある雑誌にも取り上げられました。 |
太陽電池付きの
探査ロボット |
2つ目は、日本において、小さい天体に行く高精度な技術を確立できたことです。約3億km離れた天体に、カメラと距離計を使って誤差を吸収しながら近づいて行って、表面まで降りられたのです。これは、東京からブラジル上空の蚊を射止めるくらい難しいことです。ちなみにこの探査機は今年の6月に地球に戻ってくる予定です。
Q.次の目標は何でしょうか?
1つ目は、はやぶさ2で、今度は違う天体の探査をすることです。2つ目は、月におりて表面を移動するロボットを完成させることです。3つ目は、火星探査です。例えば、飛行機のように火星の上空を飛んだり、地中を掘ったりするロボットを考えています。2010年代後半には実現させたいと検討しています。
左:月面探査を行う環境を模擬した久保田先生の実験室の様子
右:ミネルバのモデル(左側はエンジニアリングモデル、右側はスケルトンモデル)
Q.先生が研究を始めたきっかけを教えてください。
小さい頃から宇宙に興味を持っていました。宇宙へ行ってみたい、宇宙から地球を見てみたいし、他の天体も見てみたい、というわくわく感が一番の動機です。自分はすぐに行くわけにはいかないので、探査機やロボットを開発し、それを通して宇宙探検をしたいと思いました。大学では、第5世代コンピュータが流行った時期だったので、人工知能を研究したいと思い、電気・電子工学に進みました。ただ、地球上ではそんなに賢いロボットは役に立っておらず、あまり応用がありませんでした。
そこで、今までやっていた研究を活かせる分野として宇宙を扱うことにしました。火星は遠いので、地球からいちいち指示をしていたら、効率的な探査ができません。まさしく賢いマシンが必要なのです。それで、ここ宇宙研に来ました。ここでは理学と工学が一体になり、たくさんの研究者・スタッフと一緒にミッションに取り組んでいます。実際、開発から打ち上げまで5年ほどかかりますが、みんなで協力して進めています。
Q.最後に、読者へのメッセージをお願いします。
工学では、単にものが動けばいいのではなく、なぜ動いているのか、逆にどうして動かないのかという理屈が大切です。ものの理屈をきちんと数式のような共通の言葉で表現できる能力を作っておくと恐いものはありません。ものの理屈を考えながら勉強してください。
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東京大学工学部・大学院工学系研究科 広報室学生アシスタント
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