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Vol.34 2009年 12月号 物理工学科特集 |
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Vol.34 12月号
技術を通した社会貢献
博士課程まで進学しアカデミックでのキャリアを作るか、企業に就職し産業界で研究開発に携わるか、悩んでいる方は多くいるのではないでしょうか?今回は東京大学工学部物理工学科の出身で、現在シャープ株式会社で太陽電池を研究開発されている小出直城さんにお話を伺ってきました。シャープ株式会社は国内太陽電池メーカーのなかでトップシェアを占めています。その一員として現在そしてこれからのエネルギー問題に深く関わっていく上での思いを聞かせていただきました。
Q.お仕事の内容について聞かせてください。
私は、ソーラーシステム開発本部に属し、次世代の太陽電池を開発しています。現在主流の太陽電池は素材の大半がシリコンでできています。しかし高純度なシリコンは高価であり、かつ生産量に限りがあるため、それに代わる新しい素材の開発が将来的に必要になります。そこで近年特に注目されている二酸化チタンを用いた色素増感型太陽電池を研究しております。
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小出直城さん
シャープ株式会社ソーラーシステム開発
本部次世代要素技術開発センター
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Q.アカデミックの道ではなく企業に就職して研究開発する道を選ばれた理由を教えてください。
私は大学では太陽電池ではなく超伝導に関連した酸化物材料の物性を研究していました。ただ、当時は超伝導デバイスが社会で本格的に実用化されるにはまだまだ時間がかかると感じていました。そんな中、修士1年の時にインターンに行った企業で出会ったのが太陽電池です。太陽電池ならば社会に需要があるのですぐにでも実用化が可能ということを知り、技術を通して社会貢献できるのではないかと感じ、少しずつ太陽電池の魅力にひかれていきました。その後、就職活動が本格化する中で私はシャープに出会いました。1912年に東京で創業されたシャープ株式会社はもともと金属加工会社でした。
みなさんシャーペンをもちろんご存知ですよね?
実はこれはシャープの創業者が発明したものなのです。シャーペンは欧米を中心に大ヒットし、シャープは順調に事業を拡大していきました。しかし、1923年に突如起こった関東大震災により、工場を失い事業は閉鎖の危機に立たされてしまいます。しかしシャーペンの特許を売って、今の大阪の本社へと移り、そして総合家電メーカーとして現在に至るまでの再生をしました。このような過去を知ったことも、シャープを選んだ1つの理由です。
Q.学生時代に培ったことは、仕事にどのように活きていますか?
大学生活を通じて培ったもので活きていることは忍耐力、そして何事も真剣に取り組み必ず成し遂げるやる気だと思います。私は大学の時にバスケットボール部に所属しており、日々厳しい練習をしていました。勉学との兼ね合いは大変でしたが、そこで現在の忍耐力が養われたと思っています。また、研究室の先生方の指導は厳密で、少しの間違いでも正しく指摘してくださいました。そこで、人に自分の言いたいことを伝える日本語の表現力や学ぶプロセスを教わったと感じています。大学はただ勉強するだけの場所ではないと思います。若いうちに興味があることに真剣に取り組み最後までやり通す力を身につけることが重要だと思います。
Q.会社での生活はどのようなものなのですか?
シャープではまず1年目の社員は先輩方にお世話になり見習いとして仕事の内容を教えてもらいます。一通り理解すると本格的な開発などを任されるようになっていきます。すべて自分の思い通りになるわけではありませんが、やりたいと思うことには積極的に取り組むことができます。シャープは今では大企業となりましたが、中身は中小企業のようなアットホームな感じです。そんな環境で毎日研究や開発をするとともに、海外の学会発表に参加したり、社内の部署対抗のスポーツ大会などへも積極的に参加したりして、充実した日々を送っています。
Q.最後に読者へのメッセージをお願いします。
まず、人との出会いを大切にしてください。社会に出ると多くの人と接する機会が増えます。これまでに築いた人間関係は必ずそこで活きると思います。
そして、大学で何か自分に興味のあることを見つけそれを徹底的にやり通してください。それを通して、何か一つでも、これだけは誰にも負けないという自信を身に付けてください。
小出直城さんの座右の銘は「人事を尽くして天命を待つ」だそうです。できる限りのことを実行する、これは学生でも社会人でも大切なことだと実感いたしました。
(インタビュアー 永野 智也)
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東京大学工学部・大学院工学系研究科 広報室学生アシスタント
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