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Vol.33 10月号
社会基盤におけるマネジメントとは?

 二人目にインタビューさせていただくのは、社会基盤学科の学科長でもいらっしゃる小澤一雅教授です。社会基盤学科の体系・コースの話から、小澤先生が研究していらっしゃる「マネジメント」の話まで、幅広く伺いました。


Q.最初に、社会基盤学科ではどんなことを扱っているか教えてください。

 社会基盤学科は3つのコースに分かれています。学科設立当初は「土木工学科」という名前で、道路・鉄道・ダムといったインフラをどうつくるかを中心に教育研究がされていました。これが、現在のAコース(設計・技術戦略)の原型にあたります。しかし、これらのインフラが社会において役に立つには、インフラに起因するサービス、計画、あるいは政策についても考えなければなりません。そこでできたのが現在のBコース(政策・計画)です。


小澤一雅教授
(社会基盤学科
社会基盤学専攻)
 また、インフラ整備や公共サービスの提供者になるには、日本に限らず外国でも対応できなければなりません。そこで国際的に活躍できる人材を育てるために作られたのが現在のCコース(国際プロジェクト)です。これらの3コースを包括して現在の「社会基盤学科」となっており、扱っている分野がとても幅広いといえます。


Q.小澤先生がマネジメントの研究を始めるきっかけはどんなものでしたか。

 私は、学生の頃コンクリートの研究をしていて、博士課程では新しいコンクリートの開発に携わりました。しかし、開発された新しいコンクリートが実験室の中だけでなく公共の場で使われ、社会に貢献できるようにするには多くの別の課題があることに気付きました。現場での新しい技術の普及活動を通して、建設事業のプロセスの中で新しい技術がどのように採用され、どのような関係者がその意思決定に関わるかなどを対象とした教育研究を始める必要があると強く感じました。そこで、建設マネジメント研究室を立ち上げた國島正彦教授(現新領域創成科学研究科国際協力学専攻)とともにマネジメントの教育研究を始めることとなりました。

 マネジメントの動詞形manageには、「経営する、処理する、何とかやる」などの広い意味があり、社会基盤に関わる、実社会で発生するさまざまな問題が研究対象となります。

Q.小澤先生が現在行っている研究の内容を教えてください。

 最近行っている主なプロジェクトは3つあります。

 1つめは「公共調達制度の改革」です。
 橋や鉄道などのインフラをつくるときに、事業を受け持つ会社を入札によって決めます。しかし、この入札におけるルールの多くは古い時代の法律がベースになっており、現代の社会に対応できていません。そこで、改革を行う必要があります。根底から変えなければならない点も多く、大がかりなものになっています。

 2つめは「インフラ資産へのアセットマネジメントの導入」です。
 現在、昔に作られ、今でも使われ続けているインフラが数多くあり、もちろんそれらのインフラの中には、維持・更新の必要なものもあります。しかし、インフラを足りないところに新しくつくるシステムはあっても、既存のインフラを長持ちさせたり、サービスを変えるといったシステムは発達していないのが現状です。そこで、インフラの維持・更新のためのシステムの構築だけでなく、そこに起因する予算配分(資金調達)、運営方法、体制、技術の調達方法などに関する研究が必要となります。インフラ資産に関するこれらの取扱をアセットマネジメントとして研究しています。

 3つめは「プロジェクトマネージャー育成プログラムの開発」です。
 インフラ事業に関わるマネージャーになるために、もののつくり方や材料の管理方法といったハード面は知識として学ぶことができますが、現場でトラブルが発生した時などに、状況に応じた適切な判断をする能力は、経験がないと培われないのが現状です。しかし、実際にする経験は人それぞれであり、経験できる内容の選択も難しく、どうしても年月がかかってしまいます。そこで、育成期間の短縮が可能となるような人材育成プログラムの開発を目指しています。

 そのプログラムの1つが、ケースメソッドです。実際に起きた事例などをもとに作成されたVTRを見て(右)、「自分ならどうするか」という意思決定を個人で行い、プログラムを受ける者どうしで議論するというものです。このプログラムによってさまざまな状況を疑似体験することができます。上司・部下といった違った立場の違いはもちろん、他国における事業の場合では英語を使った議論を行います。ケースメソッドのVTR教材は、2006年以降に計10本が完成しております。



 映像ケースメソッド第1回作品「夜間工事での苦情発生トラブル」より(実際に小澤先生の研究室の学生が出演していらっしゃいます)


Q.最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

 社会基盤学科の扱う範囲は、インフラの技術や設計といった分野から政策・計画・マネジメントや国際プロジェクトといった分野までさまざまですが、豊かで活気のある社会を実現するための生活基盤や経済基盤を構築し、社会からの要請にこたえる公共サービスを提供するための学問体系といえます。我々は、これからの変革の時代に社会や公共に貢献できるリーダーを育てたいと思っています。


マネジメントの研究についていろいろお話が聞けて勉強になりました。マネジメントする対象がインフラそのものであったり、人であったりと、研究の範囲が幅広いと感じました。


(C) 2007-2011 東京大学工学部・大学院工学系研究科 広報室学生アシスタント
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