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Vol.33 2009年 10月号 社会基盤学科特集 |
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Vol.33 10月号
景観をよりよくするために
鉄道、道路、広場、建物…。私たちの身の回りにはさまざまな景観が広がっています。そのような景観を誰もが納得する形にするためにどうすべきか、日々考えていらっしゃる、社会基盤学科景観研究室の内藤廣教授にお話を伺ってきました。
Q.今、先生が取り組んでいることを教えてください。
学内の活動としては、建築学・都市工学・社会基盤学をどう統合していくかを考えています。わたしは建築家から社会基盤学の教授になったので、社会基盤と建築あるいは都市をつなげるコネクターのような役割を果たそうとしています。具体的には、文部科学省のCOEというプログラム(*)を通じて、建築学・都市工学・社会基盤学の3専攻で「都市空間の持続再生学の創出」というテーマに取り組んできました。
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内藤廣教授
(社会基盤学科・社会基盤学専攻)
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学外では、委員会が多いです。2004年に景観法ができて以来、まちづくりを景観から見直そうという動きがあります。地方都市ばかりでなく首都圏でもその関連の動きがあります。その幾つかの取りまとめをしたり意見を言ったりする役割をしています。
今一番大きなプロジェクトは渋谷です。駅を中心としておおよそ半径300mぐらいのところが都市再生緊急整備地域に指定されたため、かなり大きな開発が予想されます。20年くらいかけて駅周辺を作り替えていくことになります。どうしたら渋谷の良さを失わずに、より活気あふれる街に出来るか、今が正念場です。
Q.都市の景観をよりよくするにあたり、大切なことは何でしょうか。
景観に取り組むことは、街の本質を考えることです。美しさはその結果として現れるものだと思っています。そのためには、都市の構造、歴史、仕組みなどを根本から考えなくてはいけません。景観は建築・都市・社会基盤の領域すべてに関わる問題です。
だから、これらをどうバランスよくコントロールしていくかが求められます。そのためには、明日のことと、50年後、100年後のことを同時に考えることです。明日、来月、来年のことを心配している人にも応えなければならないし、一方で、50年後をイメージして、次の世代に何を残し、何をやっておくべきかを考えなければなりません。
Q.先生は建築家としてご活躍なさっていましたが、どのような経緯で東京大学の教授をなさっているのでしょうか。
40才を過ぎたころからいろいろな賞をもらい、博物館や図書館など、建築家にとって一生のうちに一度はできたらいいなと思うような仕事をたくさんさせてもらいました。しかし一方で、忙し過ぎて、物造りとしてある種の限界を感じてもいたのです。そんな矢先、篠原修さんに景観研に誘われました。 篠原さんは20年近く前に景観研を立ち上げた教授です。アカデミックな場で景観のことを論じるだけではなく、街を実践的にどう作りかえていくか考えていきたいという強い思いがあったのでしょう。それで私を研究室に誘ったのだと思います。
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写真:研究室で設計した墓地。この他にも異なったタイプを現在も設計中。
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わたしとしては大きな転換点でした。大学に籍を置くことになった以上、わたしの事務所とは経済的関係を断つと同時に、建築家としての活動も限定的にならざるを得ませんでした。ただ、幸いなことに社会基盤は60才で定年なので、あと1年半です。そうしたら、もう一度ギアチェンジをして建築家としての活動を再開させたいと考えています。
Q.まちづくりを進めていくにあたって先生が心がけていることはありますか。
まずは、街造りに関係する人たちがどうやったらやる気になるかをなにより心掛けるようにしています。街造りは多くの人が関わる団体戦のようなものですから、関係する人が快く自分の持っているノウハウを提供してくれるかがとても大切です。そのためには、首長、役人、商店の人、職人、主婦、どんな人に対しても敬意を持ってちゃんと向き合うことが求められます。要は信頼関係です。それがあれば、多くの人から知識やノウハウが得られるし、助力も得られます。これはわたしが建築の仕事を通して身に付けたことです。
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写真:研究室で設計を手掛けた
コロンビア・メディジン市公園図書館
(2008年竣工)上が外観、下が内観 |
Q.最後に、読者へのメッセージをお願いします。
自分が他人と比べて優れていると思ったら、誰も歩いていないところを歩いてください。優れた能力を持っている人は、誰も歩いたことのない道を歩く社会的な責任を負っているのだと思います。まっさらな未知の荒野を歩く勇気を持ってください。そこにこの国の未来があります。
*COE…我が国の大学に世界最高水準の研究教育拠点を形成し、研究水準の向上と世界をリードする創造的な人材育成を図るため、重点的な支援を行うことを通じて、国際競争力のある個性輝く大学づくりを推進するプログラム。
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