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Vol.33 8月号
手術室に立つロボット研究者

  医者はロボット操作もできなくてはならない、そんな時代がやってくるかもしれません。いま、ロボットをもっと医療の現場に導入しようという“医工連携”の動きが広がってきています。今回お話を伺った小林英津子准教授は、そんな流れの先陣を切る“医療工学者”です。多彩なアイディアで外科手術を支援するロボットを続々と生み出している小林先生に、ご研究の内容をわかりやすい言葉でお話していただきました。




情授

Q.先生のご研究について教えてください。外科手術において医師の支援をするロボットの研究をしています。ロボットの強みはその「正確さ」です。人間の手だけでは難しい繊細な作業を高い精度で行うことができます。こうしたロボットと治療具を組み合わせることで、高度な手術をよりスムーズに行うことができます。また、従来の外科手術に比べて患者さんの体の負担が小さくなります。これは、ロボットを使うことで、切る範囲を減らしたり、手術時間を短くしたりすることが可能だからです。結果として患者さんが術後、早く社会復帰することができます。Q.具体的にはどのようなロボットがあるのですか?これ(下図)は私がポストドクターのときにつくった内視鏡です。従来の内視鏡では視野を変えるために、内視鏡自体を動かさなくてはならず、体内を傷つけてしまう恐れがありました。しかし、この内視鏡の中には直径1cm ほどのウェッジプリズムが2枚組み込まれています。このプリズムを外部からコントロールすることで、内視鏡自体を固定したままでプリズムの±19度ほどの視野を得ることができます。Q.手術支援ロボットに特に求められている機能はなんですか?第一に安全性です。患者さんの命がかかっている外科手術において、これは当然です。第二に扱いやすさです。スピードが求められる手術現場においては、器具をぱっと手にとってすぐ使えなくてはいけません。セットアップに時間がかかったり、重くて扱いづらかったりというのでは困ります。また、今は人ができる作業をロボットにさせている段階ですが、今後はロボットにしかできない機能を使って手術を支援できればと思います。Q.ロボット作りはどのようにするのですか?現場の医師の先生方とのディスカッションから始まります。そこで先生方からこういうロボットをつくれないかと相談を受けたり、逆にこちら側からこういうロボットをつくったら実用化できないかと提案したりと医学、工学2つの分野の知見を交換します。どういうロボットを作りたいかきまったら設計に入ります。まずは、どのくらいのサイズ、パワー、精度、駆動範囲が必要なのかを考えます。次にそれらを実現するモーター、センサ、機構を決め、それらを制御する方法を考えます。普段から世の中のモノがどのような仕組みで動いているのか注意していると、このときとても役に立ちます。最初に思い描いていたイメージが、実際にロボットの形になるのはとても面白いです。このような具体的な目的があるとそれに必要な知識も楽しく勉強することができますね。Q.工学と医学の結びつきが少し意外な感じがします。こうした試みは最近始まったのですか?そんなことはありませんよ。工学は古くから医学の発展に寄与してきました。たとえば100年ほど前に発明された X 線による診断方法は、人体を切らずに診察することを可能にしました。私たちの研究室では80年代から、ロボットを使って医学を支援する研究をしています。私ももともとはロボットを使って何かをしたいという漠然とした思いを持って精密工学科に入り、この分野に出会いました。研究は大変ですが、自分が作ったものが実際の現場で使われることはとても嬉しいですね。ものづくりの面白さと医療の向上に貢献したいという思い、この2つが先生のご研究を支える根幹であると感じました。工学と医療という全く異なる分野に通じておられる小林先生の見識の広さには、ただ驚くばかりでした。(インタビュアー 北野 美紗)

(インタビュアー )

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