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Vol.31 2009年 6月号 化学・生命系3学科特集! |
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Vol.31 6月号
光からエネルギーを ~人工光合成への挑戦~
化学・生命系は応用化学科、化学システム工学科、化学生命工学科からなります。応用化学科の橋本和仁教授にお話を伺うと、研究内容はもちろん大学での研究やこれからの研究者に求められるものも熱く語ってくださいました。
Q.先生の研究されている内容について教えてください。
基本的に光が関係していて、光触媒、高分子太陽電池、人工光合成、微生物を使った燃料電池などです。光からエネルギーを取り出すということでエネルギーと環境関係の仕事ともいえます。
現在特に力を入れている太陽電池では無機材料、有機材料、生物となんでも扱っています。また、光触媒は研究室で基礎研究から実用化まで手掛け、実際に市場に出ています。 |
工学系研究科 応用化学専攻
橋本 和仁教授
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Q.なぜ同じ太陽電池でも扱う材料が多岐にわたっているのでしょうか?
次世代の太陽電池として有機物を用いたものが期待されています。しかし一般に有機物は弱く強い太陽光の下では簡単に壊れてしまうという性質を持っています。植物がなぜ光合成し続けられるのかというと生きているから、つまり壊れても直るからなのですね。人工のものが植物に勝てないのはこの点にあると思います。
そこで塗って使える高分子膜の太陽電池なら壊れても簡単に塗りなおせるだろうとか、壊れない無機材料のものなら大丈夫だろうとか、さらにはいっそ生物を使ってしまえという発想で現在のようになっています。
Q.大学で実用化まで手掛けられるのは珍しいと思いますが、教育、研究に対するポリシーを教えて下さい。
自分の行っている研究がどのように役立つのかが研究室内で見られるというのはそれを知らないでやっているのとは全然違います。しかし、大学においてそれは結果であって目的ではないと思っています。大学での最大の目的は人材育成にあると考えているので学生には基礎よりのところを手掛けてもらい、応用よりの研究は主に研究員にお願いしています。
僕自身は基礎化学をしっかりやった人間で、だからこそ今研究室でいろいろな分野を研究できているのだと思います。この経験があるのでなるべく学生には基礎的なことをしっかりと学んでほしいですね。
Q.読者にメッセージをお願いします。
これからの時代においてはこれまでのようにただサイエンスが発展すれば人が幸せになるというような考えは通用しないと思います。しかし20世紀に汚してしまった地球を救えるのも枯渇したエネルギーの代わりを作るのもまたサイエンスなのです。サイエンスには誰でもかかわれるというわけではなく、興味や能力がありかつ教育を受けた人だけです。逆に言うとそのような人たちには常に責務があり、真剣に取り組んでほしいと思います。また、そのように考えて取り組むとサイエンスはものすごく楽しくなり、やりがいにつながります。
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東京大学工学部・大学院工学系研究科 広報室学生アシスタント
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