教授室
柳緑花紅
4月の雨です。「柳緑花紅」とは言いえて妙です。雨の江南をイメージさせるこの写真は、上野公園、不忍池の対岸から弁天堂を望んだものです。染井吉野はすっかり葉桜ですが、近影は緑の柳、遠くに八重桜が雨に煙っています。弁天堂の屋根の緑と欄干の紅が何処か中国的です。
柳緑花紅は蘇東坡の「柳緑花紅真面目」から取ったもので、一休禅師の「見るほどに みなそのままの 姿かな 柳は緑 花は紅」がその心をもっともよく表しているのでは… (2012.04.26)
走馬看花
京都府立植物園の桜です。京都で一日桜を見て回りました。今では「走馬看花」は事物の観察が粗略である例えに引かれるようですが、本来は科挙に合格して馬を走らせて長安の街中の花を看てまわったという高揚感と晴れやかな気分の例えに引かれたものです。
昔日の齷齪誇るに足らず、今朝放蕩として思涯無し。春風意を得て馬蹄疾し、一日看尽くす長安の花。
この花とは牡丹のことでしょうが、「今朝放蕩として思涯(はて)無し」というのが泣かせます。試験の翌日、暖かい布団にくるまって微睡む、遅い春の朝の気分です。皆さんにも覚えはありませんか… (2012.04.17)
3月の陽光
3月の陽光にまぶしい教授室です。この雑然とした感じが、この部屋の主の頭の中を象徴しているのかも知れません。
3月6日は二十四節気の啓蟄といって、冬ごもりの虫がはい出る頃です。部屋の主の頭の中にも、無数のアイデアがはい出てくるといいのですが・・・(2011.03.06)
Women's college
ある結婚式での一こまです。彼女たちは先端生命科学専攻の卒業生と現役の大学院生です。先端生命はもともと女子の比率が高い専攻ですし、優等賞であるIB賞もこのところ女子が独占しています。ただ、残念なのは、博士課程に進学する女子が少なくなってしまったことです。
社会に出ても笑顔で頑張れるのだから、研究者を目指しても笑顔で頑張れるのではと思っているのですが・・・(2011.02.26)
2月の満月
夜の教授室です。夜といっても6時です。冬の日の入りは早く、瞬く間に暮色が闇に変わります。窓越しに写っているのは2月の満月です。冬の満月は天頂近くまで昇ります。冬の満月が冴え冴えとしているのは、地表付近の水蒸気の影響を受けない天頂近くまで昇ることにもあります。冬至の頃、月は最も高く昇って高度は80°を越えますが、夏至のころには30°にもなりません。
月天心貧しき町を通りけり 蕪村
蕪村の有名な句が冬の句であることは、こうした月の高度からも明らかです。実験を終えて学生達が家路を急ぐ頃には、2月の満月もずいぶん高くまで昇っていることでしょう。(2011.02.18)
夜の図書館
夜の柏図書館です。設計者が夜の図書館を意識していたかどうかわかりませんが、柏図書館の夜の眺めは何処か神殿を思わせます。闇に浮かぶ輝く図書館は荘厳で、毎夜、知の創造と冒険へ誘う神託が授かるのではと錯覚します。
無に生きて無に果つ冬の星煌と 玉麗
柏図書館は夜9時まで開館しています。この時間、研究室でLCDを覗き込んでいないで、たまには輝く夜の図書館で印刷された活字を一心不乱に読んでみたらいかがでしょう。不思議な感動に浸れます。(2011.02.01)
- 幻の大図書館 http://www.lib.u-tokyo.ac.jp/kashiwa/aisatsu201105.html
- ご挨拶 http://www.lib.u-tokyo.ac.jp/kashiwa/aisatsu200906.html
- 光陰 http://www.lib.u-tokyo.ac.jp/kashiwa/aisatsu201002.html
- 歓酒 http://www.lib.u-tokyo.ac.jp/kashiwa/aisatsu201205.html
1月最後の塔
生命棟から望む建設中のスカイツリーです。赤く染まった空を背景に立つ塔を見ていると、『指輪物語』に出てくる、サルマンが籠もったオルサンクの塔を思い出します。
私がトールキンの『指輪物語』を夢中で読んだのは40年以上も昔のことですが、『ロード・オブ・ザ・リング』3部作として映画化されたので最近ご覧になった方も多いでしょう。善悪の表裏一体性は全編を通してのテーマですが、それは第2部作『二つの塔』で顕著だったように思います。(2011.01.31)
12月の鯨
シロナガスクジラの目です。上野公園をブラブラ歩いて居ると大きなクジラの野外模型と機関車に出くわします。国立科学博物館です。小学生の頃、父に連れられて何回か来たことがあります。時を経て、今度は、自分が娘達を科学博物館に連れて来ることになったのには感慨深いものがありました。
このところ、科博付いていて、二年続けて12月に講演することになりました。題して「お母さんからしか遺伝しない ―母性遺伝と雌雄性の謎を解く―」、小春日和のなかクジラの目が笑っているように見えました。(2011.02.01)
11月の霧
霧のスカイツリーです。ヘルマン・ヘッセの詩に、霧の中と題する有名な詩があって、
不思議だ、霧の中を歩くのは
どの茂みも石も孤独だ
どの木にも他の木は見えない、
と『車輪の下』の作者でもある詩人は書いています。この霧は夜霧だろうとずっと思っていたのですが、ふと朝霧でもいいように思いました。朝霧なら希望の詩になりますが、それでもヘッセが思ったのは夜霧だったのでしょうか・・・(2011.11.28)
8月の室蘭
室蘭にある北大の臨海実験所の8月のひとコマです。板張り床の大部屋で、好きな風に実験できるのが魅力です。この日は、カメラマンを入れて11名でしたが、興味深いのはその外国人比です。外国人が6名、日本人が5名です。国内にありながら、こういった環境が優れた研究者を生み出すように思います。羨ましい環境です。(2009.08.17)