航空宇宙工学科を志す皆様へ

航空宇宙の歴史は、1903年のライト兄弟によるわずか12秒、36mの飛行に始まったといえるでしょう。その後の発展はめざましく、24年後には大西洋無着陸横断飛行、44年後には音より速い飛行、54年後には宇宙まで飛行、そして66年後には人を月に運びました。かつて飛行は挑戦と冒険でしたが、いまや航空機は生活に欠くことができない移動手段となり、また宇宙空間の利用も、気象、通信、測位などでインフラの一部となっています。「航空宇宙工学」は、これらを実現する航空機・宇宙機・人工衛星・推進機関といったハードウエアを生み出すための総合工学です。

航空宇宙工学科では、数学、物理学、化学などの基礎科目を基盤に、空気力学、材料工学、構造力学、飛行力学、制御工学、推進工学、信頼性・安全性工学等の専門分野を学びます。そして、総合工学として、それら専門技術を横断的に統合させる演習と設計教育も重視しています。学生は4年生で卒業論文に加えて卒業設計を履修します。各自が航空機、宇宙機、レシプロエンジン、ジェットエンジン、ロケットエンジンを選び、基本仕様を決めて設計図面を完成させます。また最近は、超小型衛星や無人航空機(ドローン)を対象としたモノづくり活動にも学生は熱心に取り組んでいます。さらに、大学院の航空宇宙工学専攻では、本郷キャンパスだけでなく、先端科学技術研究センター(駒場キャンパス)、新領域創成科学研究科(柏キャンパス)、そして相模原のJAXA宇宙科学研究所の研究室に所属し、世界最先端の研究に浸ることができます。1920年の学科創設以来、4000人を超える卒業生が、我が国の航空宇宙分野はもちろんのこと、自動車、電機、エネルギー、情報通信など幅広い分野で活躍しているのは、総合工学で重要なシステム統合化技術、プロジェクトマネージメント能力を学ぶことができるからに他なりません。

いま航空業界には、持続的な発展のために、安全、効率、環境適合という課題が突きつけられています。カーボンニュートラルな航空燃料とエンジン、電動化、新しい材料、構造、設計法、運航方式が求められています。一方で最近は、ドローンや空飛ぶクルマとも呼称される新しいプレイヤーが仲間入りしました。宇宙分野に関しては、民間主導の宇宙ビジネスが立ち上がりつつあり、衛星の小型化・高機能化で宇宙利用がさらに促進され、加えて、電気推進エンジン、AI技術の活用など、新しい技術が次々に生まれています。惑星や小惑星の探査、宇宙観測、そして人類は月や火星への有人探査にも挑もうとしています。夢は広がります。

大切なのは飽くなき情熱と探究心です。いっしょに空や宇宙を開拓していきましょう!

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