基質と基質結合分子の解析を通して、紡錘体形成メカニズムを明らかにする

M期キナーゼ(mitotic kinase)と総称されるセリン/スレオニンキナーゼはM期進行を制御する重要なキナーゼ群です。私たちは中でもPlk1に注目しています。Plk1は酵母からヒトまで高度に保存されており、M期における重要性や癌化との関連が明らかになっているものの、基質分子がまだ少数しか同定されていません。私たちは固相リン酸化法を用いた基質候補分子のスクリーニングを行い、50以上の候補を得ています。


Kizuna

最初に解析した分子は新規の中心体タンパク質で、私たちはKizuna と名付けました。中心体はM期には構成タンパク質の量の増大を伴う“成熟”をし、紡錘体の極として機能します。中心体には染色体を整列させる際に大きな力がかかりますが、Kizunaの発現を抑制した細胞ではその力に負けて中心体が断片化してしまうことがわかりました。つまり、Kizunaは紡錘体極として働く中心体の構成成分どうしの”絆”を保ち、紡錘体の二極性の維持に必要な分子でした。また、Kizuna の活性にはPlk1によるリン酸化が必要であることがわかりました。
関連リンク
1. M期中心体の構造と機能を保障するKiz
2. KIZUNA−中心体のまとめ屋


Cep72

更に私たちは最近、Kizunaに結合しKizunaの中心体局在を担う因子としてCep72を同定しました。Cep72はKizunaだけではなく、CG-NAP/AKAP450 やgamma-tubulin ring complexなど他の主要な中心体構成要素の一部を中心体に局在させる働きがありました。特にCG-NAPをPCMに局在させることは中心体の微小管重合中心(MTOC)活性に必須であり、また分裂期には染色体を中期板に整列させることが可能な紡錘体を形成するために必須であることを示しました (Oshimori N., et al. EMBO J., 28:2066-2076, 2009)。


KizunaとCep72の更なる解析から、新たな中心体、紡錘体極の機能・構造制御機構の解明が期待できます。


解析中の課題・今後の課題

Kizunaの他にも、分裂期モーター分子、アクチン結合因子、動原体局在分子、他のキナーゼの調節因子など、分裂期進行に必須な新たな基質分子の解析をすすめています