講演要旨
台風や竜巻などの自然の脅威から我々が身を守るにはどうすればいいのかを考える時,極めて重要なのは想像力であろう。我々を脅かすような自然の脅威は滅多に生じることはなく,通常ではまず経験することはない。経験できないものに対して対処するためには,過去の被害の実態等から,将来起こるであろうことを想像し,それに有効に対処するために,日頃から備えておくことが必要である。
本講演では,これまで行われた台風や竜巻などの強風被害調査等から見えてきた,人を含めた建物などの地物の脆弱性を,被害低減の観点から指摘するとともに,その対策について討議する。経済発展とともに住環境は改善され,1970 年ごろに比較して現在では強風による住家の全壊率は2桁程減少した。一方,最近ではスプリングエイトをはじめ多くの現代建築の大屋根の葺き材が次々に強風被害に見舞われており,耐風設計を施したはずのこれらの屋根の耐風性が一般の住家より劣るという驚くべき状況が現れている。
また,最近の竜巻等の被害状況から推察するに,住家にしても室戸台風なみの強風に耐えることができるとは考えにくい。もし,室戸台風なみの台風が来たら,我々はどのように対処すべきなのであろう。竜巻などの極めて強い風によって引き起こされる被害の状況は,極めて局所的ではあるが昨年の3月に起こった大津波の被害に類似する。より広範囲にこのような状況になったら,私達の生活はどうなるのだろう。想像するだけでも恐ろしいが,想定外で済ませられる問題でもない。
日頃,豊かな自然の恵みを享受している我々は,その裏表である自然の脅威とともに生きていることを忘れがちである。自然の脅威に謙虚に畏敬を示し,それに真摯に向き合う姿勢が重要であろう。
発表資料
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