タンデム加速器研究施設MALT

[PDF]  2012年4月号 [第47号]原子力国際専攻特集 
カテゴリ:[エネルギー]  学科:[大学院の専攻]

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 加速器と聞くと、ヨーロッパにある全周数十kmにおよぶ大規模なものが有名ですが、実は東大の浅野キャンパス敷地内にも加速器があります。今号ではタンデム加速器研究施設MALT(Micro Analysis Laboratory,Tandem Accelerator)に取材に行ってきました。




 加速器とはその名の通りイオンを加速させる装置で、加速イオンを用いて物質中の超微量の元素分析や同位体比測定を行うことが出来ます。


 例として、元素分析の測定原理を一つ挙げます。
 あるエネルギーを持つイオンが特定の原子と衝突すると核反応が発生します。この際生じる放射線を測定することで、物質中にどのような原子が存在するかがわかります(図1)。この核反応を起こすためのエネルギーをイオンに与えるために加速器を用いてイオンを加速させます。
 今回はイオンを加速させる仕組みを紹介します。


~二段階で加速されるイオン~


 右図は加速部の模式図です。加速器中心部にかかる100万~500万ボルトという高電圧により内部には強い電場が発生しています。

 まず、入口より入射した負イオンは中心に向かう力を受けて加速されます。装置の中央部には負イオンから電子をはぎ取り正イオンに変換する装置が設置されており、ここをイオンが通るとそれまでとは逆に出口に向かう力を電場から受けてさらに加速されます。
 このように二段階の効率の良い加速をする装置をタンデム加速器と呼びます。

~高電圧を生みだす仕組み~




 上の写真は加速部内部の様子です。中央の加速管(青矢印)をイオンが通過します。
 横の細いチェーン(黄矢印)はペレットチェーンと呼ばれ、電位差を作り出します。このチェーンが下部にある電極から電荷を受け取ります。その後チェーンが回って上へ昇り、中央にある電極にチェーンの持つ電荷が放出されます。すると中央部の電位が上がります。下部の電位は0ボルトなのでここに電位差が発生します。まるで、井戸深くから水をくみ上げる桶のようにチェーンで電荷をくみ上げるイメージです。

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 今回の取材では、このように電位差という目に見えないモノを作り出す機構が、動きを目で見ることのできる機械的な構造をしていることが興味深かったです。

MALTのHP

取材協力 松崎浩之准教授(原子力国際専攻)
(インタビュア― 逢澤正憲)



[PDF]  2012年4月号 [第47号]原子力国際専攻特集 
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