原子力国際専攻 学生座談会
 ~研究と、将来のビジョン~

[PDF]  2012年4月号 [第47号]原子力国際専攻特集 
カテゴリ:[エネルギー]  学科:[大学院の専攻]

この記事をブックマークする   



 原子力国際専攻に所属する学生は、どのような研究をし、どのようなビジョンを持っているのでしょうか?今回は、原子力の安全性や原子炉工学といった分野で研究を進めている石渡研究室から、3人の大学院生の皆さんに集まっていただき、座談会形式で研究や進路などに関してお話を伺いました。 

 参加していただいた大学院生の皆さんは、修士1年の河原卓美さん(写真左)、修士2年のシルワ・カムパナートさん(写真中央)、修士1年の川上俊弘さん(写真右)です。





皆さんが原子力国際専攻を選んだ理由をお聞かせください。


シルワ:もともとエネルギー関係、特に太陽光発電に興味を持っていたのですが、インターンで一度出身地であるタイに戻った際、将来のエネルギーとしてより現実味があるのは原子力だと思いました。そこで、大学院では原子力について学ぶことにしました。

河原:学部は理学部の地球惑星物理学科でしたが、工学系の大学院にも興味を持っていました。日本のエネルギーとして有力な原子力に魅力を感じ、この専攻を選びました。

川上:私の場合は、エネルギーへの興味に加え、大学院で学ぶ中で何か自分の軸を持ちたいと思っていました。そこで、原子力の分野でしっかり勉強・研究しようと決めました。

研究の面白いところは何でしょうか?


シルワ:理系でありながら、原子力の規制や政策に関われるところが面白かったです。
 修士論文では福島原発事故を題材に、マクロな立場から研究をしました。具体的には、原子炉の格納容器が破壊されるような過酷事故が起こった際、コスト面で社会にどのような影響が出るかを評価しました。これは原子力利用の規制や、原子力政策に対して役立つものになっています。
 私自身、理系文系の枠にこだわらず幅広い分野に対して興味を持っているタイプなので、文献調査なども行い理系と社会との橋渡しとなれた今回の研究は自分に合っていたと感じています。

河原:自分で組んだシミュレーションが、実験事実と一致すると面白さを感じますね。研究は、シルワさんの研究にシミュレーションを用いて出したデータを加えるなどして、進めていく予定です。
 もともと漠然と、次世代の原子力技術について研究したいと思っていましたが、ちょうどこの専攻に入る直前に福島原発の事故が起きて以降、原子力安全に関連した研究に関心を持っています。

川上:私は二人とは違って、よりミクロな立場からの研究をしていきます。
 過酷事故の際には原子炉の炉心や圧力容器などに注水することが必要ですが、蒸気と水が反対方向に流れる状態では注水がうまくいかないことがあります。そこで、注水が成功する条件について、シミュレーションを使って解明していく予定です。原子力の研究は実験がしづらい分野も多いので、シミュレーションは重要な手法なんです。

 そのような研究の背景として勉強した内容は、原子力だけでなく火力発電所などでも使える応用範囲の広いものなので、それらを学ぶこと自体が面白いですね。

皆さんの進路や、目標をお聞かせください。


河原:原子力関連に進みたいです。日本が原子力の技術を失うのは大きな損失だと考えているので、技術伝承に努めたい。そして技術的な視点をもって、原発のより高い安全性を追求したいです。

川上:私もなんらかの形で原子力に関わりたいです。具体的にはメーカーか電力会社などを考えています。また、河原君と同様、原子力技術の伝承には取り組んでいきたいです。

シルワ: 私はこの4月からはタイに戻り、国の原子力技術研究所で働く予定です。将来的には、培った原子力の知識を活かしつつ、エネルギー全般に関して広く精通したジェネラリストとしてタイのエネルギー政策に関わっていきたいと思っています。


= = = = = = = = = = =
原子力に関連した立場で日々勉強・研究をされている方々の話が新鮮で、インタビュアーである筆者も刺激を受けた座談会となりました!


原子力国際専攻のカリキュラムについて


(インタビュアー 清水裕介)


[PDF]  2012年4月号 [第47号]原子力国際専攻特集 
カテゴリ:[エネルギー]  学科:[大学院の専攻]

トップへ戻る