小型高エネルギーX線源
~がん治療の高度化と構造物健全性検査~
堀先生の研究分野はシステム制御。柏キャンパスを拠点に、電気自動車から福祉用ロボットまで幅広く扱っています。今回は電気自動車(EV)に焦点を当て、研究内容について語っていただきました。
従来のEV開発では、電池の高性能化のみに焦点が当たりがちでしたが、先生の提案する電池不要の電気自動車が新時代を切り開いてくれるかもしれません。
Q.研究内容について教えてください。
現在の電気自動車(以下EV)研究では、長距離走行を可能にすべく、大容量で小型軽量なリチウムイオン電池の開発が盛んに行われています。一方で私たちは「モーター・キャパシタ・ワイヤレス」をキャッチコピーに、急速充電スタンドいらずに“どこでも充電”して走れる、新たなEVを目指しています。
Q.キャッチコピーは何を意味するのですか。
まずはモーターですが、私がEVの研究を始めた動機は電気モーター制御にあります。
エンジンではなくモーターを搭載するEVは、スリップを防いだり、スムーズに止まったりさせる「モーションコントロール」に優れています。これは、モーターがエンジンより100倍速く応答可能で、さらにモーターに流れる電流の状態から路面の状態が把握できるためです。センサーを付けなくても、例えば路面が滑りやすい状態であればそれに応じて車輪の動きをゆっくりにする、などと素早い応答ができるのです。さらに、前輪のみ動かす通常のエンジンに比べ、前輪と後輪どちらにもモーターを配置できるEVは、より細かにタイヤの動きを制御できます。
また、キャパシタとは、電気エネルギーを化学エネルギーの形で蓄える電池と違い、電気エネルギーをそのまま蓄える装置です。
電池に比べ一度にためられる電気の容量は少ないですが、充放電が電池に比べ格段に早く、寿命が長くなります。また、電池生産コストの大半を占めるレアメタルが不要です。30秒の充電で20分以上走ることが出来ますが、それでも容量の小ささが課題となります。
そこで、キャパシタ搭載のEVを長距離走らせるための技術として、ワイヤレス給電の研究も行っています。ワイヤレス給電は、磁気共鳴という現象を利用し、ワイヤレスに送電・給電ができる技術です。
従来ワイヤレス給電技術には電磁誘導という現象が利用されてきましたが、コイル間の距離が短くないと送電できないという問題点がありました。しかし、コイルの形状を調節して磁気共鳴させると、コイル間の距離が広がったり、コイル中心が多少ずれたりしても送電できます。この原理をEVの充電に使えば、走行中でも素早い充電ができます。
日本においてキャパシタの認知度が上がり、インフラ整備が国策として進められれば、ワイヤレス給電と組み合わせて、ETCのようにエネルギーをチャージする、そんな時代が来るかもしれません。
Q.最後に読者に向けてのメッセージをお願いします。
これまでEV開発は電池の改良にのみ焦点が当たりがちでした。こういう話をすると、“リチウムイオン電池・キャパシタどちらが良いのですか”、という二者択一の議論に陥りがちですが、多様性をもっと大事にするべきだと思います。
皆さんには、既存のものに縛られず自分の頭で考えてほしいですね。
堀研究室のHP
(インタビュアー 沼田 恵里)