本研究に関する論文が公開されました。Abstractはこちらのサイトにあります。また、プレスリリースはこちらです。
この研究は、福島原発事故から10年目の今年、2020年にオリンピック会場の放射性物質による汚染の実態を海外の方に知っていただく目的で始めました。
この研究の動機は、「チェルノブイリで野球の試合やるっていったら、日本は調査団送るだろ?」と言われたことがきっかけのひとつです。私はこの言葉に重みを感じました。
プレスリリースのサブタイトルにも挙げているのですが、この研究は「海外から渡航してくる方」に焦点を置いています。
現在の東日本は、福島原発の周辺を除いて、事故当初のような極めて高い線量率が確認されることはないことは周知の事実であり、かつ、そのことはもはや誰もが手持ちの線量計でも確かめることができます。
しかし、このような研究を真面目に進めなければならないほどに、海外からの視線の中には、福島の事情などほとんど知られていないことがベースにあります。
「福島」第一原発の事故が起きた「福島」市でオリンピックが行われる、つまり、事故が起きたまさにその場所でオリンピックが行われると思っている方が(意図的かどうか、という問題もあるのですが)海外には相当数いらっしゃいます。
冒頭の「チェルノブイリで野球やると言ったら日本だって調査団送るだろ」というコメントはこの点を良く理解している海外の研究者からのものです。
オリンピックのホスト国を務めるというのであれば、そういった事情もきっちり把握して、徹底的に分析し、丁寧に公開して、他国からの理解を得られる努力をしなければ事故を起こした当事国として非常にまずい態度だと思います。
私たちが日本語でプレスリリースを出した理由もここにあります。
一方で、特に帰還困難区域やその周辺の汚染の調査、被ばく対策はまったく十分ではありません。事故以来10年間現場に通い続けて調査を行っていますが、特に近年は隙や油断が至る所に見受けられます。
引き続き細やかな放射線測定を行うことで、より良い被ばく対策や事故収束に向けた提言を行っていくつもりです。