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手記

東原和成 ┃ Monell Center 2017┃ 2017年10月15-17日

Kunio Yamazaki Dinstinguished Lectureship Awardを受賞して

14年前、まだ嗅覚研究者としては駆け出しだったころ、アメリカ東海岸セミナーツアーをやり、5カ所でトークをした。そのとき、世界で唯一、化学感覚研究に特化した研究所であるMonell Chemical Senses Centerでもセミナーをさせていただいた。そのときにホストをしていただいたのが山崎邦郎先生である。山崎先生はMHCといった免疫に関係する遺伝子の個体差が体臭の違いを生み、生殖活動に影響しているということを提唱した先生であり、「においを操る遺伝子」の著者でもある。山崎先生は、アメリカに向いているというよりか逆に極めて日本人的なひとであるのにも関わらず、研究者生活のほぼすべてをアメリカでやったひとである。嗅覚領域で師匠がいない私が毎年AChemSに参加して多少なりとも孤独感を感じていたとき、山崎先生からいつも励ましのお言葉をいただき、それが今の自分の大きな自信になっているといっても過言ではない。

 今回、14年ぶりのMonell 研究所への訪問となったが、山崎先生はすでに4年前に急逝されてしまっていてMonellにはいない。実は、山崎先生を偲んでMonellが2年前に作ったメモリアルアワードである、Kunio Yamazaki Distinguished Lectureship Awardを授賞するための訪問である。第一回は、九州大学の二ノ宮先生が授賞されている。Monell研究所に足を踏みれたとたんに14年前が蘇った。匂いで記憶が一瞬にして蘇るという話は有名だが、今回はおそらく匂いではなく、視覚と空間である。元所長のGary Beauchamp博士が自分のオフィスに私を案内してくれたとき通った階段で山崎先生の後ろ姿が見えた。実験室につながる廊下では、山崎先生が見せてくれたY mazeのセットのことが思い出された。今年から選考委員長をさせていただいている加藤記念財団の創始者の言葉がふと頭に浮かんだ、「生かされている」。

 日本の賞は、応募に出さないともらえない。ある意味、出したもん勝ちである。最近いろいろな賞の選考委員をさせていただいているとわかるのだが、応募してくるひとたちはみんな常連である。ほぼ自薦に近い形でありとあらゆるところに出すひとがいる。一方、アメリカの賞は、選考委員会が独自に選ぶところが多い。もちろん調査はして口コミ的に推薦を集めるとはいえ、日本のように出したもん勝ちなんていうものはない。そういう意味では、外国から賞をもらえるのは大変嬉しい。10年ほど前にWright賞をいただいたときもそうであるが、その領域のひとたちがきちんと評価して選考する。ただ、今回は、業績だけでなく、山崎先生と研究的にも近く、交流があったひとという縛りがあったようなので、純粋なサイエンスの賞ともいえない側面はある。とはいえ、私が尊敬し気持ち的にも大変お世話になった山崎先生のメモリアルアワードをいただけるのは大変光栄である。セミナーも今回は万全を期して時差をクリアして自己評価的には90点の講演ができたと思う。天国で聞いていていただけたとしたら嬉しい。山崎先生は「またMonellによってください」と会うたびにおっしゃっていた。「また来てセミナーをさせてもらえましたよ」

 授賞講演は、毎年おこなわれているMonellのスポンサーミーティングにひっつけておこなわれた。山崎先生のつながりもあり、日本の企業も多く参画している。そして、今回のミーティングでは、MonellがThomas Jefferson Medical Schoolの連携研究所となる道を選んだことが発表された。来年設立50周年を迎える節目に大きな決断といえよう。若干元気が落ちていたところであるので、臨床現場とのつながりが強化されてまた活気がでてくるのではと楽しみである。最後に、山崎先生からの最後のクリスマスカードに書かれていた山崎先生のお言葉を紹介して終わりたい。「遠く離れていて何もお役に立てなくても、日本の未来が気懸りで、護憲と脱原発を訴える勢力が伸びることを願っています。—山崎邦郎 Dec. 2012」

平成29年10月19日帰国の機中

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