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手記

東原和成 ┃ Frontiers in Neuroscience: From Brain to Mind ┃ 2011年12月6-9日

Frontiers in Neuroscience: From Brain to Mind
(IIAS, Kyoto, Japan)

国際高等研究所というものがある。不遜ながら、私は今回の国際シンポジウムがあるまで、その存在を知らなかった。研究所は、関西の京阪奈に位置し、京都大学が中心になって、いくつかの財界からの出資でできたものである。産学官の融合と研究交流などの活動はしているものの、場所が不便ということもあるのか、ハードコアな研究をしているわけでもなく、シンポジウムやセミナーを積極的に開催しているわけでもなく、実は、今回がはじめての国際シンポジウムだそうである。

高等研所長は、元京都大学学長の尾池先生、理事のひとりが志村先生ということもあり、その弟子の坂野仁先生がオーガナイザーとして白羽の矢がたったというわけである。題目は、Frontiers in Neuroscienceということで、「神経科学の最前線:脳からこころへ」がタイトルである。Invited speakerの多くが嗅覚研究者であったが、認知科学、動物心理科学など様々な脳科学者がよばれた。そのメンバーはそうそうたるもので、CNSクラスのジャーナルに論文をだしているひとばかりである。部屋の収容人数や予算的なことを考慮して半分クローズでおこなわれたが、ポスター発表も十数題あり、Howard HughesのJanelia Farmミーティングを彷彿させる。

外国からInvitedされたひとで嗅覚あるいはそれに関連する研究者は、Linda Buck, David Anderson, Sigrun Korsching, Barry Dickson, Noam Sobel, Ivan Rodriguez, Lisa Stowers, Hiro Matsunami, Nao Uchidaであり、国内からは坂野仁先生、森憲作先生、吉原良浩先生、そして私である。

私はNarrowly-tuned chemoreceptionをキーワードに、昆虫の性フェロモン、餌への誘引行動、そしてマウスの涙フェロモンの話を展開し、最後に、unpublished resultととして、嗅覚受容体のnatural ligandの同定手法の確立とその例を発表した。マウスの涙フェロモンについては、Davidと熱いディスカッションをすることができたし、リガンド同定法についてはLindaが食いついてきた。Noamとは涙からのフェロモンについても語り合い、彼らの見ている人間の涙ファクターについてのことなどを教えてくれた。海外出張をせずに、われわれの研究を推進するうえで、貴重なディスカッションを日本国内ですることができてとても有意義であった。

参加した学生は、坂野研からが中心であったが、海外からも多かった。Lindaのところでがんばっている近藤君、Davidのところで活躍している稲垣君など、若い力に接することができたのも貴重であった。私の研究室からはちょうど連れてこれる学生がいなかったのは残念であるが、今後、こういったハイレベルのミーティングに耐えられるだけの成長を研究室メンバーみんなに期待したい。

平成23年12月9日

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