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年頭所感

┃ 令和2年元旦 ┃ 東原和成

令和2年新年にあたって

新年あけましておめでとうございます。

昨年、JST ERATO東原化学感覚シグナルプロジェクトの重点期間が終了しました。6年間、自由に研究をさせていただけて、大変感謝しております。ERATOは今時めずらしく、なんでも好きなことをやってよく、スタート時も終了時も必要経費が計上されていて、とても研究がしやすい環境を与えていただきました。そこで、ERATOでは、前からやりたかったヒトの嗅覚プロジェクトを立ち上げました。ようやく起動にのってきたときにERATOが終了しましたが、幸い、同じくJSTの未来社会創造事業という、どちらかというとアウトプット志向のプロジェクトに採択され、ヒト研究をそこで継続することができることになりました。マウスのほうは基盤Sに採択され、そちらで継続、昆虫のほうは民官財団の予算などでまかない、ERATOという巨大プロジェクトを終了するにあたって、縮小はしたものもの、幸い、それほど停滞なく研究を継続させていただけることになり、大変ありがたいと思っています。

さて、話は変わりますが、体力的にまた試練の時期がきたようで、先月12月に大学時代の古傷のヘルニアが再発してしまい、3日間ほど大学を休みました。最近やばいな、やばいな、と思いつつ身体を動かしている日々が続いたと思ったら、夜、猛烈な痛みが足に走り、動けなくなってしまいました。休んでいる間、いろいろ考える時間がありました。研究のこと、私生活のこと、これからの人生、ふと思うと、もう人生の後半戦ですね。平成が始まった年に米国大学院留学して走り出して30年経ちました。留学してPIになるまで10年、准教授で10年、そして今年で教授になって10年と、私の人生は10年が区切りになっていますが、30年というのも、もうひとつの区切りになっているようです。平成の30年間は自分としては充実していたと思いますが、これからの30年もそう思えるような30年にしたいものです。とはいっても、あと30年あるかどうか。

大晦日では、久しぶりのテレビで、紅白を見ました。とても印象的だったのは、AI美空ひばりです。美空ひばりの声を分析して、AIの力で、新曲を歌わせるという、いままさに最先端の技術をつかったアイデアです。話を聞くと、第一世代のAI美空ひばりはファンからするといまいちで、何世代か重ねた後、涙がでるほどの再現が実現したようです。それはひばりさんが息子さんに本を読み聞かせた録音が残っていてデータが豊富だったからだそうです。つまり、データさえあれば、AIが望みのものを作り出してくれるという時代になったのです。情報社会がはじまって久しいですが、これがまさに究極のデジタル化と言えるかもしれません。しかし、今回のAI美空ひばりに欠けているものはなんでしょう。それは匂いです。体臭です。これに再現された体臭がつけば、AIの限界を超えた生身が蘇った美空ひばりさんになるでしょう。亡くなった楊貴妃の服の匂いを玄宗皇帝が嗅げたのもせいぜい数ヶ月でしょう。それがいつでも呼び出して嗅げることができれば、というリクエストは少なくありません。それは、今回私たちが取り組んでいる未来社会創造事業における匂いプロジェクトのひとつでもあります。

AIがなんでもできる時代になりました。では、ヒトにしかできないことはなんでしょう。ある大学でAIに関する専攻を作って学生をとったら、入試を突破してくる成績のよい学生が持つ能力はAIの研究現場ではあまり活かされないということがわかったという話を聞きました。その原因として私が思うのは、ヒトに求められる、AIにはできない能力は、想像力と問題解決能力だからだと思います。そういう意味では、AIが調香をできる時代がくるのは間違いないのですが、AIは想像力を働かせて新しい香りをどこまで生み出すことができるでしょうか。AIはツールでしかなく、やはり本当に必要なのはアナログ的な感覚であり、それを研ぎ澄ませることに意義あると、AIの時代についていけない私は開き直っています(笑)

このあたりで今年のご挨拶は終わりにします。というのも、今回の年末年始は、総長補佐としての宿題をやっています。その宿題の結果は、4月にお披露目される予定です。

本年も研究室ともどもよろしくお願いします。

東原和成
令和2年元旦

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