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年頭所感

┃ 平成31年元旦 ┃ 東原和成

平成31年新年にあたって

新年あけましておめでとうございます。

個人情報が厳しくなかなか自宅住所がわからない世の中になりましたが、毎年、年賀状には向かい合うことにしています。しかし、今年は29日に家のプリンターが想定外の故障。修理では間に合わないし、わざわざ電気屋に購入しにいくか、大学にいってプリントアウトするか、どうしたものかと頭を悩ましていたところ、アマゾンなら明日来るよ、との一言。なるほど!ということで、貯まっていた楽天のポイントでプリンターを購入し、31日の朝には着。遅れましたが無事に年賀状を発送。便利な世の中になりました。一方で、便利さを求めるあまりに失うものもあります。そんなことを考えていたら、今年のキーワードとして「バランス」という言葉が思い浮かびました。

ついてない、、そんなとき、うまくバランスがとれているからまたいいことがあるよ、という話をします。厄落としもそういうことかと思います。一方で、いいことが続くと悪いことがおきそうで怖くなります。ただ、それは、自分にとって良いか悪いかは確率二分の一ということなので、そういう意味では恐れることはないのかもしれません。今回の私の場合は、この数ヶ月、論文がいくつかアクセプトされて良い流れがあったので、その代償として年末の自家用車のトラブルとプリンター炎上があったのかと思うのですが、あまり関係ないのでしょうね。研究の世界でも、実験がうまくいかないのが続くと、うまくバランスがとれているからそのうちうまくいくよ、とよく言います。でも、実験の場合は、うまくいかない=失敗、ではなくて、うまくいかないのも良い結果なので、間違った使いかたともいえます。

一方で、バランスという言葉は、物事の評価や人間性にも使います。科研費などの審査をしていると、良い評点をつけるとき、その理由としてバランスがとれているという言い方をするときがあります。着目点、計画、研究遂行能力(業績)、すべてが合格点のときで、必ずしもそれぞれの項目が100点である必要はありません。欧米ではとかく何かが秀でていればよいという考え方がありますが、日本ではバランスという概念が重要視されます。ただ、良い言い方をするとすべてが及第点、悪い言い方をするとすべてが凡人レベルになります。人間性に対しても、あのひとはバランスがとれている、という言い方で高い評価をするときがあります。例えば、教員を採用するとき、業績は突出しているが人間的にちょっととんがっていているひとより、業績も人間性もバランスがとれている(平均並みな)ひとを日本では採用しがちです。右に倣え、列からはみでるな、という教育を受ける日本ならではの価値観かと思います。

上に立つものはバランスがとれているほうがよいのか、何かに秀でているほうがよいのか、日本人的価値観でいうと前者かと思います。何かに秀でていると、とかく何かが欠如している、あるいは何かが極端にずれているということが多いので、日本ではそういうひとを上に立たせることに警戒をしがちです。秀でているひとの足し算で勝負する欧米とは違います。ただ、重要なのは、バランスのレベルを常に高く保たないと、いい仕事ができないし、高いレベルへ前進できずに時に失墜するということです。だとすると、そのレベルを高く保つために必要なものはなにか、それが「教養」だと思います。

以前にニッポンの教養という番組の取材を受けたことがありましたが、私の研究領域のトピックで爆笑問題に対峙するとどんな変な方向に進むかわからないと思い、断りました。そのとき最後に番組スタッフから、「先生にとって教養とはなんですか?」と聞かれたのですが、私は、教養は単なる知識ではなくて、引き出しにしまってある知識を建設的に有機的に引き出して自分の概念として表すことができる能力、と答えました。いまでもそう思いますが、その基盤となる知識は常日頃から取り入れていかないといけないなと思います。私は最近それを努力する時間がとれていない、あるいは怠っている気がします。それを改めて認識することが、私がステップアップできるために必要なことなのでは、と最近思わされたことがありました。もちろん、頭でっかちになってしまっては冒険ができませんが、自分のignoranceを知るためにも勉強することは必要なのでしょう。

今年は、3月にKeystone meeting、5月にGordon conferenceと、二大学会にトークしにいきます。この2年間専攻長業務でなかなか抜けられませんでしたが、今年は大学業務から少し離れて、研究のグローバル展開を再開できそうです。評価を維持するには、いい仕事をし続けなくてはいけなく、そのためには自分のバランスをさらに高めて、さらに学生が育つ環境を提供できるようにしないといけないな、と思います。公私共々いそがしい一年になりそうですが、それも文字通り「ワークバランス」で乗り切りたいと思っています。

本年もどうぞよろしくお願いします。

東原和成
平成31年元旦

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