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年頭所感

┃ 平成28年元旦 ┃ 東原和成

平成28年新年にあたって

新年あけましておめでとうございます。 年末に、私が敬愛する山田洋次監督映画「母と暮せば」を見てきました。思えば、山田監督に会いたい一心で松竹50周年記念映画「キネマの天地」のオーデションに応募したのがちょうど30年前です。今、私は50歳目前にして、人生の後半戦について真剣に考えはじめていた最中でしたので、完全にうちのめされました。人は生かされているんだということ。周りにいる人たちだけでなく、亡くなった人たちにも。そして、平和の最後の砦である日本が、安倍政権のもと、人災である戦争のほうへまた歩み出していることに危機感を改めて持たないといけないということ。忘れがちです。

父が亡くなってちょうど2年、先月3回忌をおこないました。いなくなったという感じはいまだにせず、時々思い出しては、父の声が聞こえます。また、私が神戸大から東大へ移ったころに指導していた学生のT君が亡くなって8年になります。時々彼のことも思い出します。父もT君も何を言うわけではないけれど、私の心の無意識の底への問いかけがミラーリングして戻ってくるのを感じます。「母と暮せば」のなかで吉永小百合が息子と会話するのと似ているような気がします。やっぱり生かされているのです。

私のオフィスの本棚には「生かされている」と書かれた盾が飾ってあります。13年前に加藤記念財団から奨励金をいただいたときのものです。日本帰国後に立ち上げた嗅覚研究がまだまだ陽の目を見なくて、研究者としても認められずになかなか研究費がとれなかったころでしたので、大変ありがたく、励みになったのを覚えています。これもご縁だと思いますが、今は審査委員として逆の立場になっています。当時の生かされた恩返しで、光る若い逸材を発掘することができればいいなと思っています。

昨年は、農学部研究室対抗のソフトボール大会で春と秋で二連覇を達成しました。他にも強いチームがたくさんあるなか、私達の研究室が勝てたのは、明らかにチームの結束力があったからだと思います。ERATOプロジェクトが始まってから、研究室の人数は40人近く、部屋も5つに分かれていますが、多くの飲み会や様々なイベントを通じて、みんな仲良く、協力しあう風潮があります。その結果が二連覇だと思います。

こんな楽しい私達の研究室でも、外部の学生から見ると厳しい研究室に見えるようです。おそらく、研究室のみんなが高いレベルを目指していて、論文も妥協はせずに常にいい仕事を追求していく風潮が、そう見せているのだと思います。楽な研究室となめられるよりはいいと思っています。

世の中的には、アクティビティーを高めるためには、あまりにもプレッシャーがあるのも雰囲気が悪くなってよくないし、逆に仲良し過ぎるのも甘えが出てしまってよくないと言われます。でも一番の理想は、楽しく仲良く協力しあい、そして一方でお互い研鑽しあう厳しさを忘れずに、そのバランスのなかで素晴らしい仕事をだすことです。

そう、みんな、生かされているのです。生かされていると思うからこそできる仕事をしようではありませんか。それが、個人主義のアメリカと違って、協調を良しとする文化を持つ日本だからできる仕事につながるはずです。

本年も、研究室ともども、何卒よろしくお願い致します.
平成28年元旦

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