プロフィール

英語プロフィールへ

年頭所感

┃ 平成24年元旦 ┃ 東原和成

平成24年新年にあたって

新年あけましておめでとうございます。

毎年、新年のあいさつをHPにアップし始めて6年になります。それとは別に年賀状も毎年欠かさず書いております。昨年と比べて今年は、年賀状を出すひとがかなりのパーセント減ったとニュースにでていましたが、ネット社会になって、ますます活字体の手紙は減っているようです。年賀状は、めったに会わないひとと年一回近況を通じ合うという意味と、お世話になっているひとに、改めて感謝をするという意味があると思います。そういう意味では、礼儀であるとともに、昨年の言葉にもなった「絆」であると思います。仕事関係で大学に来るもの、家に来るもの、プライベートの旧知や友人からのもの、いろいろありますが、私は基本的には、会社の住所から来る年賀状には、メールや口頭でのお礼に止めさせていただき、賀状の形は失礼することにしています。賀状は、公的な意味ももつ一方で、やはり私的なものであると思うからです。でも、自宅住所がなかなかわからない昨今、最初は大学住所への賀状からはじまるのは仕方がないですね。

さて、私の賀状には、その年の一文字が真ん中に座ります。2009年から今年まで並べてみると、「育」「流」「躍」そして今年は「味」でした。いろいろなものを大切に育み、運命の流れに逆らわず、自分に甘えずに躍進したい、そんな数年でありました。今年の賀状は、「味」としましたが、その心は、さまざまな局面で美味しい食に接することができたということだけでなく、昨年の唯一の私の研究室からの原著論文が「味覚」の論文であったということもあります。2009年12月に現在のポジションに異動し、2010年春にラボの移転、そしてそれから2年近くたちましたが、移動の影響か、ついに昨年は論文1報、ひとつの研究室を運営する研究者としては厳しい年になりました。以前にも、論文ゼロの年(2000, 2002年)がありました。共通しているのは、新しいポジションに移って数年後というところです。以前の新年のあいさつでも書きましたが、なかなか「移植」は難しいということで、やはり、新生の生物化学研究室がラボとして形となり、伝統が回りはじめて、学生の意識が高くなってくるまでは忍耐なのかなと思います。

そもそも論文が年に1報しかでない年もあれば、10報でる年もあってもいいのではと思います。自分を納得させる言い訳かもしれませんが、研究というものは、いつも順調にいくわけではなく、新しいことを発見しようとすると何年もかかるものです。そうは言っても、研究費をもらっている手前、きちんと発表していく義務はあるのです。科研費の審査で「この人は○○年と○○年と論文がでていないから研究遂行能力が低いのでは?」という言葉をよく聞きますが、確かに当たっている側面もあると思いますが、そうでない場合も多いと思います。そもそも、毎年何十報もだしている研究室がありますが、もちろん分野にもよるし、スタッフの数にもよりますが、その研究室主導で力をいれて書ける論文数はせいぜい5報程度だと思います。少なくとも、私は、それぞれの論文をきちんと推敲して納得のいくものに仕上げ、そしてそのなかに自分の「味」を含める作業は、そんなにたくさんできません。論文に関しては、いつも、数と質の議論がなされますが、質は引用数で計れるかといったら、その分野の研究者が多いほど引用数は多くなるのは当たり前なので、それもなかなか難しい。結局のところ、その論文を読んだひとが、どれくらい「素晴らしい論文だ」と思うかという、極めてあいまいなものなのではないかと思います。しかし、論文の質に人間の言葉が貢献できる部分はわずかであり、やはり、そこに描かれる自然の摂理の美しさが主役なのであります。

昨年は、京都の先生のお導きで、お茶屋の世界に接する機会をもつことができました。その世界は、美しい宇宙空間でありながら、それは極めて健全に論理的に築かれている空間であることを感じました。細胞のように閉鎖系の空間のなかでおきているシグナル伝達、私の研究対象としている開放系における匂いやフェロモンなど化学物質による交信も、すべて精密に設計された論理的空間における、モノとモノとのコミュニケーションとつながりだと思います。私の好きな駅伝は、日本独自なものでEkidenと英語でいわれます。襷をつなぐ、そういう感覚を持てる日本人だからこそできる研究がきっとあると思います。去年から今年にかけて研究室メンバーの大きな変化がありましたし、4月から専攻主任の役をこなさなくてはいけないので、いろいろ大変ではありますが、味わいのある研究室ができるように、そして今年は論文をだせるよう、スタッフ、ポスドク、学生諸君とともにがんばっていきたいと思っております。

毎年混雑をさけていましたが、今年は久しぶりに元旦に初詣でをしました。この意気込み(?)で今年も走ります。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

平成24年元旦

TOPページに戻る