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コラム

以下は、「化学」2009年4月号に掲載されたコラムです(連載第四弾)

東原和成 ┃ 化学 ┃ 2009年4月号

大学か企業か?就職で迷ったら

経団連勧告に基づいて、本年度から、修士新卒採用が最終学業年度まで自粛されることになった。従来のスケジュールでは、大学院に入学して半年も経たないうちに就職活動をはじめ、長い人では半年以上も続くケースがあり、学業への影響が懸念だったので良いことではある。とはいっても、就職活動期が先送りされたからといって、進学か就職かの見極めができるとは限らない。

よく聞くのが、自分は大学に残れるほど実力や能力がないから就職するとか、自分は会社に向いていなさそうだからとりあえず進学する、という消去法的な選択である。しかし、会社の人事の目も節穴ではないので、このような消去法で就職活動をしても絶対にうまくいかない。選択肢のなかから人生を消去法的に選ぶのではなく、自分の内在的な気持ちに正直になって、どの道にいきたいかという能動的な選択をするべきだと思う。

より多くの選択肢があったほうが、やりたいことがみつかる可能性は高いので、視野は広くもったほうがよい。そのためには情報も積極的に取り入れ、いろいろなひとの話を聞くことが大切である。しかし一方で、それぞれのひとの価値観も、向き不向きも違うので、人の話は参考までに留めるべきである。イメージばかりが膨らんでしまうと、こんなはずじゃなかったということになる。

さて、能動的な気持ちで道を選んだとしても、その道で自分がやっていけるか、どんなひとでも不安になるものであるし、実際、こればっかりは誰にもわからない。会社は会社で合併倒産の可能性もあるし、大学のポジションは限られているのでどちらにしても不安材料はある。しかし、私が知る限り、ある道で活躍したり大成しているひとは、他の分野や領域でもどこでも十分やっていける素質をもっている。だから、やりたい道を選んでがんばれば、きっとやっていけるはずである。

それでもやっぱり迷ったときのひとつのロジカルな方法を教えよう。英語では、pro-and-conとよばれるやりかたである。まずいろいろなファクターを列挙する。例えば、自由度、好きな仕事ができるか、給料、安定性などなど。そして、どの選択肢がそれぞれのファクターをもっているかを考える。自由度や仕事は大学、給料と安定性は会社など。そして、自分のなかでファクターの優先順位をつけて、どっちがより高い点数がつくかやってみれば、自ずと自分がどっちのほうを好んでいるかがわかる。もしこれでも甲乙つかなかったらどうするかというと、仮にどちらかを選んだとして、後ろ髪をひかれるほうがあるはずであり、それが実は本心で選びたい道なのである。

大学に残るよりは会社にいったほうが、世間が広がる、社会人になれる、と思っているひとが多いと思うが、実際はそうとも限らない。どこにいっても、やれることは限られるかもしれないし、部署のなかだけの狭い世界になるかもしれない。給料取りになることは自立するということであるが、社会人の指標には必ずしもならない。社会性や世間の広さは、そのひと次第である。誌面がつきた。結局は,縁を大切にして直感できめるのがよい、と非サイエンティフィックな結論でしめてしまおう(笑)

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