バイオミネラリゼーションによる脱炭素研究

カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことが日本のみならず、世界的に強く求められています。脱炭素は地球環境や生態系と密接に関係する問題であり、東京大学全体での研究および教育の取り組みと、特に海洋研究を含む農学的なアプローチが求められています。

脱炭素の取り組みは様々な方法が模索されていますが、空気中の二酸化炭素を直接的に固定する手法として地中に二酸化炭素を貯留するCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)が最も研究開発が進んでいます。また、植物などの光合成を活用して有機物として二酸化炭素を固定する取り組みも盛んに進められています。しかしながら、地球上で最も多い炭素の化学形態は炭酸カルシウム(4千万Gt)であるにも関わらず、炭酸カルシウムとして二酸化炭素を固定するという取り組みはこれまでほとんど試みられて来ませんでした。この理由は主に炭酸カルシウムの石灰化時に生じるプロトンの作用により、バイオミネラリゼーションは二酸化炭素が海洋から放出される反応であり、炭素固定には寄与しないと認識されているためであります。

このような説は1990年代以前に確立されたものであり、生物による石灰化も無機的に海洋から炭酸カルシウムを生成する反応と同様であるという仮定の下に議論されてきました。近年の最新のバイオミネラリゼーションの研究により、生体反応では急激なpH上昇が石灰化反応の前に起こること、特殊なバイオミネラルタンパク質が触媒としてカルシウムイオンと炭酸イオンを結びつけることで速度論的に非常に有利になり、炭酸カルシウムの結晶形態、方位、欠陥などが厳密に制御されることなどが次々に明らかになり、バイオミネラリゼーションの石灰化によるプロトン放出が海洋からの二酸化炭素の放出には直接的に寄与せず、放出されるプトロンを適切に処理できれば、海水のカルシウム源を利用して炭素固定ができることが明らかになってきました。二酸化炭素から炭酸カルシウムへの反応は外部からのエネルギーを必要としないため、固定のコストが安く、また固体として安定であるため漏洩の心配がない。さらに合成した炭酸カルシウムを産業利用することができる(CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)ので、販売して利益を得ることも可能です。

しかし、1990年代以前にバイオミネラリゼーションが炭素固定に寄与しないという学説が定着してしまったため、このような新たな試みは多くの研究者には受け入れ難いものになっています。バイオミネラリゼーション研究会を中心に、脱炭素研究教育拠点として活動を強化することで、社会に新たな学説を発信し革新的なCCUS技術の開発に繋げたいと考えています。

バイオミネラリゼーションによる脱炭素研究