トップ 一覧 検索 ヘルプ RSS ログイン

物性セミナー/2018-5

<< 2018-5 >>
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

2018-5-29

2018年 夏学期 第2回 物性セミナー

講師 大江 純一郎 氏(東邦大理)

題目 スピン波干渉効果を用いたマグノニクス研究

日時 2018年 5月 29日(火) 午後4時50分

場所 16号館 827

アブストラクト

近年、磁性体を用いた新しい熱電効果や、スピン波によるエネルギー整流作用などが報告され盛んに研究が行われている。特に、スピン波伝播の制御は、新しいスピントロニクス素子を作成する上で非常に重要である。我々はこれまでに、スピン波の波としての性質を利用することで、新しいスピン波のデザインや、スピン波伝播現象の理論的研究を行った。特に、メゾスコピック系の電子伝導現象の知識を用いることで、新しいスピン波伝導現象が現れる事を明らかにしている。本講演では、磁気超格子と呼ばれる周期磁化構造中に現れるスピン波端状態と、反強磁性体におけるスピン波局在効果について紹介する。スピン波端状態は、スピン波バンドのトポロジカルな性質に由来する現象で、スピン波の量子ホール効果」に相当する物理現象である。スピン波局在効果は、2次元電子系における「弱局在効果」に相当する現象で、スピン波の運ぶ熱流の抑制を引き起こす。これらの効果の基本的な性質と、スピントロニクス素子への応用について紹介する。

参考文献

"Topological chiral magnonic edge mode in a magnonic crystal" Ryuichi Shindou, Ryo Matsumoto, Shuichi Murakami, and Jun-ichiro Ohe Phys. Rev. B 87, 174427 (2013)

"Weak localization of magnons in a disordered two-dimensional antiferromagnet"N. Arakawa and J. Ohe Phys. Rev. B 97, 020407(R) (2018)

宣伝用ビラ

KMB20180529.pdf(223)

物性セミナーのページ

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar

2018-5-15

2018年 夏学期 第1回 物性セミナー

講師 白石直人氏(慶應義塾大学理工)

題目 XYZ+磁場のS=1/2スピン鎖における局所保存量の不在

日時 2018年 5月 15日(火) 午後4時50分

場所 16号館 827

アブストラクト

量子多体系において、厳密に解くことが出来る「可積分系」の具体的な模型は多数知られている[1,2]。可積分系が解けることの背景には、多数の局所保存量を持つ点が挙げられる。局所保存量の存在は他にも、熱平衡化しないことや、準位統計がポアソン分布になることなど、可積分系のさまざまな特徴をもたらしている。このように可積分系が非常によく研究されている一方、「非可積分系」についてはこれまであまり研究されていなかった。ここでは特に「局所保存量を持たない系」を非可積分系と呼ぶことにする。局所保存量がないことは、熱平衡化が生じることや、準位統計がランダム行列に従うことなど、自然な物理系の性質をもたらすと期待されるものであり、具体的な系において局所保存量の不在を示すことは重要な課題である。しかし、「ベーテ仮説等の既存の手法で解けないこと」や「準位統計の数値計算が予想と一致すること」などの状況証拠から非可積分であることが強く期待されている系はいくつもあるものの、「局所保存量がないこと」がきちんと証明されている量子多体系はこれまで存在しなかった。

本セミナーでは、非可積分であることが期待されている系の一つである、スピン1/2のXYZ鎖に磁場を加えた模型を対象とし、この模型に局所保存量が存在しないことを厳密に証明する[3]。まず、連続3サイトにまたがって作用する物理量の並進和の形の保存量が存在しないことを証明する。一般kサイトの場合の証明のエッセンスは連続3サイトの場合の証明に見ることが出来るので、まず連続3サイトの場合の説明を丁寧に行い、その後一般kサイトの場合の証明を行う。本証明の手法は、次近接ハイゼンベルグ鎖などへも応用可能なものである。

参考文献

[1] R. J. Baxter, “Exactly Solved Models in Statistical Mechanics”. Dover (2008).

[2] L.D. Faddeev, arXiv:hep-th/9605187 (1996).

[3] N. Shiraishi, arXiv:1803.02637 (2018).

宣伝用ビラ

KMB20180515.pdf(277)

物性セミナーのページ

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar