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物性セミナー/2018-5-15

2018年 夏学期 第1回 物性セミナー

 講師 白石直人氏(慶應義塾大学理工)

 題目 XYZ+磁場のS=1/2スピン鎖における局所保存量の不在

 日時 2018年 5月 15日(火) 午後4時50分

 場所 16号館 827

アブストラクト

量子多体系において、厳密に解くことが出来る「可積分系」の具体的な模型は多数知られている[1,2]。可積分系が解けることの背景には、多数の局所保存量を持つ点が挙げられる。局所保存量の存在は他にも、熱平衡化しないことや、準位統計がポアソン分布になることなど、可積分系のさまざまな特徴をもたらしている。このように可積分系が非常によく研究されている一方、「非可積分系」についてはこれまであまり研究されていなかった。ここでは特に「局所保存量を持たない系」を非可積分系と呼ぶことにする。局所保存量がないことは、熱平衡化が生じることや、準位統計がランダム行列に従うことなど、自然な物理系の性質をもたらすと期待されるものであり、具体的な系において局所保存量の不在を示すことは重要な課題である。しかし、「ベーテ仮説等の既存の手法で解けないこと」や「準位統計の数値計算が予想と一致すること」などの状況証拠から非可積分であることが強く期待されている系はいくつもあるものの、「局所保存量がないこと」がきちんと証明されている量子多体系はこれまで存在しなかった。

本セミナーでは、非可積分であることが期待されている系の一つである、スピン1/2のXYZ鎖に磁場を加えた模型を対象とし、この模型に局所保存量が存在しないことを厳密に証明する[3]。まず、連続3サイトにまたがって作用する物理量の並進和の形の保存量が存在しないことを証明する。一般kサイトの場合の証明のエッセンスは連続3サイトの場合の証明に見ることが出来るので、まず連続3サイトの場合の説明を丁寧に行い、その後一般kサイトの場合の証明を行う。本証明の手法は、次近接ハイゼンベルグ鎖などへも応用可能なものである。

参考文献

[1] R. J. Baxter, “Exactly Solved Models in Statistical Mechanics”. Dover (2008).

[2] L.D. Faddeev, arXiv:hep-th/9605187 (1996).

[3] N. Shiraishi, arXiv:1803.02637 (2018).

宣伝用ビラ

KMB20180515.pdf(276)

物性セミナーのページ

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar

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最終更新時間:2018年04月28日 16時27分05秒