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手記

東原和成 ┃ ISOT2016/Satellite meeting┃ 2016年6月5-9日

ISOT2016プログラムを担当して(本手記は、日本味と匂学会誌へ寄稿したものです)

 12年振りの日本開催のISOTミーティングは、822名の参加者中4割近い300人近くが外国からの参加ということで、日本開催の国際学会としては真の意味での国際学会となりました。この成功の原動力となったのは、レベルの高い国際学会にしたいという二ノ宮大会長の強い意向です。私はプログラム委員長を仰せつかりましたが、二ノ宮先生の意向を実現すべく、プログラム委員としてAChemSやECROそしてアジア・オセアニアのメンバーをいれた計24人の国際チームをつくりました。

 プログラムは、Plenary lecture, Presidential symposium, Parallel symposiums, Poster sessionから構成しました。Plenary lectureは、必ずしも嗅覚と味覚の分野ではなく、これからの嗅覚や味覚の研究の方向性に重要な領域のトップサイエンティストを選ぶ基準としました。その一方で、Presidential symposiumは、嗅覚と味覚の分野で活躍している大物を、多少領域を考慮しつつ、JASTS, AChemS, ECROのメンバーから選抜しました。Parallel symposiumsは、2時間半枠で4人のスピーカーで公募をおこなった結果、36題の応募がありました。そのなかから、プログラム委員の投票結果と分野を配慮して、18題に絞りました。競争率も高かったので高いレベルのシンポジウムが選ばれました。また、結果論ですが、18題中、16のシンポジウムで日本人が座長あるいはスピーカーとして含まれていて、JASTSのホストとしての面目が保てたと思っています。

 今回のシンポジウムの特徴のひとつとして、late-breaking symposium speakerの枠を用意しました。昨今のサイエンスのスピードは凄まじく、1年前に選んだスピーカーはもう時代遅れというケースもあり、直前まで新進気鋭あるいはいい論文を最近出した研究者のための枠を用意しました。late-breaking symposium speakerの候補がいないシンポジウムでは、応募ポスタ−のなかからshort talkを2つ選びました。プログラム委員による投票の結果をうけて、座長と相談の上、シンポジウムを活性化するのにふさわしいものを選抜しました。このようにして、シンポジウムのupdateをはかり、なるべくexcitingなプログラムを目指しました。

 シンポジウムでは、参加者は思ったより散けて、ほとんどの会場で半分以上席が埋まっていました。混雑を見越してテレビ中継を導入しましたが、ほぼ満員の会場がいくつかあったのでよかったと思います。そして、会場の場所が集中していたので、効率よくいろんな話を聞けてよかったという声も聞いております。ただ、シンポジウム間の時間がなく、全体的にタイトなスケジュールでご迷惑をおかけしました。

 ポスタ−のほうは、当初、数が集まらずにとても心配でした。年度をまたいでいたせいか、AChemSとのからみがあったせいか、締切2月28日の一週間前くらいで100題にもいかない状態でした。そこで最初に二週間の延長、さらに4日の延長をおこなったところ、400の大台を突破することができました。300-350題くらい集まればいいなと思っていたので、ほっとしましたが、事前登録参加者が800人を突破したということで、急遽、ポスタ−会場を拡大しました。この変更は、プログラム集の印刷に間に合わずに、皆様にはご迷惑をおかけしました。なお、嗅覚と味覚の発表はだいたい3:2の比率でした。JASTSは若干味覚のほうが多いですが、AChemSやECRO学会などとはほぼ同じ比率だったと思います。ポスタ−セッションでは食事や飲みものが好評でしたが、奇数偶数などに分ける十分な時間がなかったためにポスタ−間隔がせまくなってしまったのが唯一の心残りです。

 プログラム委員会が担当したもうひとつのイベントは、Young Investigator Awardの選抜です。最初はTravel Awardとして設置して、外国の大学院生やポスドクがより多く来日できるようにというのがそもそもの趣旨でしたが、Travel awardよりYoung Investigator Awardのほうが聞こえがいいのではということで名前が変更されました。ただ、後から聞いたのですが、Travel awardではないと思ってYoung Investigator Awardなんて無理だと思って出さなかったひともいたということで微妙な気持ちになりました。58人の応募があり、投票によって28人(外国18人、日本10人)を選びました。選ばれた若手は、この受賞を自信に今後活躍してほしいと思っています。

 さて、今回のISOTが国際大会として成功した理由のもうひとつが、Satellite symposiumsだったと思います。味覚を6月4日に、嗅覚を6月5日に、二ノ宮先生と私がオーガナイズして東大弥生講堂でおこないました。嗅覚のほうは、吉原良浩先生、Leslie Vosshall,Peter Mombaertsの協力のもと、ISOTのスピーカーには入っていない外国人スピーカーを11人、日本人を5人、inviteしました。その結果、230人ほどの参加者のうち、外国人が80人も来ました。外国人がここまで弥生講堂に入ったことはないと思います。終了後、すぐにバスで横浜まで移動して、サイエンスの興奮が覚めきらないうちにWelcome receptionに突入しました。

 10年ほど前、AChemSで、LeslieとPeterがSatellite meetingを開催して、Richard Axel, Linda Buck, 故Larry Katz, Charles Zukerなどの大物が話していたのを思い出しました。今、時がたち、その弟子達、そしてさらにより若い研究者達が活躍しているのはとても喜ばしいことだと思います。シンポジウムのスピーカーは、比較的若いひとが多く、一方で、JASTSをはじめとするChemical Senses Societyからは大御所の先生の参加も少なく、世代の交代がおきている感じがしました。そして、今回のISOTは、次の10年のChemical Sensesの領域の方向性が見えたような学会となりました。そんな時代の変遷を胸に、12年後はどのようなISOTを日本で開催できるか、JASTSの若い嗅覚味覚研究者とともに目指すものが徐々に見えてくればいいなと思っています。

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