年頭所感
┃ 平成23年元日 ┃ 東原和成
平成23年新年にあたって
あけましておめでとうございます。
科研費の審査の書類の山を消化しなくてはいけない年末年始です。今年はいろいろな種目で約250件数ほど見なくてはいけないのですが、それぞれにきちんとコメントを書かなくてはいけないので、一件最低10分はかかり、単純計算すると休まずやって40時間、一日2時間やったとしても20日かかるという計算になります。12月の半ばに送られてきて、1月中には提出、よく考えてみると修士や博士の審査がある時期に無理難題で、文部科学省のひとにはどれくらい誰に集中しているかをきちんと把握してもらいたいものです。とはいえ、こういう責任のあることをまかせられるのですから、逆に感謝すべきことなのかもしれません。でも、この半分くらいの数であれば、もっと時間をかけて審査できるのにと思います。新年早々に苦言で申し訳ありません。
さて、菅采配で来年度の科研費予算も増えたことですし、研究費申請書の書き方に関する話を少ししたいと思います。まず読みやすいこととよく言われますが、それは流し読みをできることと一緒の意味だと思います。各パラグラフは起承転結があるということを念頭に読むので、きちんと書かれている申請書は隅々まで読むまでもなくエッセンスがつかめます。そして細かいところを読むと詳細がわかる、つまり階層的になっていることです。それはパワーポイントの図でも一緒で、ぱっと見て、まず目に入ってくる部分で大まかなメッセージがつかめることが大切です。そして細かいところをみたいなと思ってみたらちゃんと書かれている。メッセージ性に階層をつけて、図だと文字の大きさとか色とか配置、文章だと起承転結はもちろん、下線やハイライトやキーワードの配置などで表現すればよいのです。私も来年度で終了する予算が多いので、今年は研究費申請書をたくさん書くことになりますが、審査の経験を活かして、「メッセージの階層」を肝に命じたいと思います。
それにしてもこの一年でずいぶんと失念が多くなりました。メールですぐにレスポンスしないで一日二日おいてしまうと必ず忘れてしまいます。おそらくメールソフトを使えこなせればよいのかもしれませんが、アナログ人間にはできません。そこで紙に書き出してみました。これはある程度功を奏したのですが、その紙がそのうち行方不明になってしまう。そこで一番よいとわかったのが、すぐにたたき台を作っておくということです。そんなこんなで昨年は自転車操業的な毎日になってしまいました。結局、仕事ができるひとになるためには、優先順位をつけられる、ロジックを組んで階層化できる、延さずにすぐにやれる行動力、こんなことにいきつくのではと思います。身体はひとつしかないので仕事を断ることも増えてきましたが、「仕事の階層」を作って、今年も乗り切りたいと思います。
前を向いて自分の足で歩いていかないと夢あるいは目標への階段は昇れません。そして走り続けていると、いいパス、チャンスがやってくる。それを持って階段を昇る。すると、素晴らしい視界が見えてくる。仕事も広がる。先日の科学ニュースによると、若手研究者が激減しているそうです。素晴らしい景色を見ようとせずに階段を昇ることから逃げてしまっているひとが増えているのではと思います。留学にしても然りです。モーティベーションの問題でしょうか。でも、必ずしも研究自体が好きでなくてもよい。世の中のひとが面白いと思ってくれることをしたときの喜び、そしてそこから生まれる新たな出会いがまた新しい仕事をよびこむ。実験は多少めんどくさくても、そんな楽しさがモーティベーションでよいのです。でも、研究の面白さは、必然的な直感で感じたことが生命のロジックであったときの感動でしょうか。実験結果を解釈するときにバイアスをかけずに白紙の頭で「直感」を働かせることが必要なのですが、これは昨今話題になっている経済学者のドラッカー理論でいう「直感」と同じだと思います。今年も、理路整然とした直感を働かせられるように、感覚を常に研ぎ澄ませていきたいと思います。
新生の生物化学研究室もようやくまとまりがでてきました。素晴らしい研究は、いい雰囲気の研究室でないと生まれないと信じています。でも、ほんわかしすぎても駄目です。適度な緊張感のなか、高いモーティベーションをもって、学生さん達が成長していってくれることを願っています。研究室メンバーともども今年もよろしくお願いします
平成23年元日