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物性セミナー/2022-1-14

2021年 冬学期 第8回 物性セミナー

 講師 作道 直幸 氏 (東京大学工学系研究科)

 題目 高分子ゲルの熱力学: 準希薄スケーリング原理と負のエネルギー弾性

 日時 2022年 1月 14日(金) 午後4時50分

 場所 Zoom によるオンライン開催

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アブストラクト

高分子ゲルは、架橋された高分子鎖の網目が大量の水を保持した固形のソフトマターであり、ゼリー・豆腐などの食品や、ソフトコンタクトレンズ・止血剤など医療に活用される。高分子ゲルの物性を理解することは、産業的な材料開発への需要もあるが、その平衡熱力学すら十分に理解されていない。その理由は、通常のゲルは制御できない不均一な高分子網目構造を持つために実験の再現性が低く、その不均一性の影響を評価することも困難なためである。我々は、極めて均一で制御可能な網目構造を持つ高分子ゲル(テトラゲル)を用いることで、この不均一性の問題を克服し、高分子ゲルの熱力学の構築に取り組んでいる。本講演では、高分子ゲルの熱力学において最も基本的な弾性率と浸透圧に関する我々の研究を紹介する。弾性率に関しては、熱力学第二法則に由来する「エントロピー弾性」が支配的であると長年信じられてきたが、エントロピー弾性に加えて、内部エネルギー変化由来の「負のエネルギー弾性」を持ち、その合計で弾性が決まることがわかった [1,2]。浸透圧に関しては、液体状のゾル状態から固体状のゲル状態までの、ゲル化(固化)の進行に伴う浸透圧の低下は、高分子溶液で知られる普遍的状態方程式で決まることがわかった [3]。最近、この発見に基づき、ゲルの浸透圧の本質は「準希薄スケーリング則」だと考え、これを原理として認めると、ゲルの平衡膨潤率が従来の標準的な平均場理論(Flory-Huggins 理論)よりも正確に予測できるだけでなく、自己回避ウォークの臨界指数が実験的に決定できることがわかった。また、deGennes の c*定理の主張を実験的に明確に否定し、実験と整合的な新しいスケーリング則が導出される。最後に、非平衡におけるゲルの普遍法則についても紹介する [4]。

[1] T. Yoshikawa, N. Sakumichi, U. Chung, T. Sakai, Phys. Rev. X 11, 011045 (2021).

[2] N. Sakumichi, Y. Yoshikawa, T. Sakai, Polymer J. 53, 1293 (2021).

[3] T. Yasuda, N. Sakumichi, U. Chung, T. Sakai, Phys. Rev. Lett. 125, 267801 (2020).

[4] T. Fujiyabu et al., Phys. Rev. Lett. 127, 237801 (2021).

宣伝用ビラ

KMB20220114.pdf(82)

物性セミナーのページ

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar

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最終更新時間:2022年01月12日 18時45分53秒