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物性セミナー/2021-12

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2021-12-17

2021年 冬学期 第6回 物性セミナー

講師 笠原裕一 氏 (京都大学理学研究科)

題目 キタエフ量子スピン液体における熱量子ホール効果とトポロジカル相転移

日時 2021年 12月 17日(金) 午後4時50分

場所 Zoom によるオンライン開催

・物性セミナーMLに登録されている方は、セミナー案内メールでZoomアドレスを通知します。

・登録のない方は、以下で予め登録をお願いします。(自動的に物性セミナーMLへ登録されます。)登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdT67ZsTDiKsvutP59tY4tOUlx4WTInMKkTQIGWLqYCrPAQKA/viewformをご利用ください。

アブストラクト

キタエフ模型と呼ばれる2次元ハニカム格子におけるスピン模型が大きな注目を集めている。この模型では基底状態が厳密に量子スピン液体となり、電子スピンがマヨラナ・フェルミオンとZ2渦に分数化されることが示されている。ゼロ磁場では遍歴的なマヨラナ粒子系となるが、磁場をかけるとマヨラナ・バンドにギャップが開き、チャーン数で特徴づけられるトポロジカル状態となる。このトポロジカル状態は量子ホール状態と対応するものであり、試料端にはマヨラナ粒子のエッジ流(カイラル・マヨラナ・エッジモード)が、試料内部にはマヨラナ粒子とZ2渦が結合した複合粒子が生じ、この複合粒子はマヨラナ・ゼロモードを持つ非可換エニオンである。そして、熱ホール伝導度が電子の場合の量子熱コンダクタンスの半整数倍に量子化される(半整数熱量子ホール効果)。 我々はキタエフ模型の候補物質α-RuCl3において熱ホール効果の測定を行い、半整数熱量子ホール効果を観測した[1,2]。さらに磁場を2次元ハニカム格子面内に平行にかけた場合にもホール効果(planar Hall効果)が生じ、planar Hall効果についても半整数量子化が観測された[3]。これらの結果は電子系の量子ホール効果とは本質的に異なるものであり、マヨラナ粒子および非可換エニオンが存在することを強く示唆している。一方、高磁場では量子化が消失し、熱ホール伝導度は急速にゼロになる。このことは、カイラル・マヨラナ・エッジモードを持つ状態と持たない状態の間のトポロジカル相転移の可能性を示唆しており、実際、最近の熱伝導率や比熱の測定から相転移にともなう異常が観測されている。本講演ではこれらの結果について紹介し、その現状と今後の展望について議論したい。

[1] Y. Kasahara et al., Nature 559, 227 (2018).

[2] 笠原裕一、水上雄太、芝内孝禎、松田祐司、日本物理学会誌 74, 639 (2019).

[3] T. Yokoi et al., Science 373, 568 (2021).

宣伝用ビラ

KMB20211217.pdf(50)

物性セミナーのページ

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar

2021-12-6

2021年 冬学期 第5回 物性セミナー

講師 藤本 聡 氏(大阪大学基礎工学)

題目 キタエフ・スピン液体における量子相転移

日時 2021年 12月 6日(月) 午後4時50分

場所 場所 Zoom によるオンライン開催

・物性セミナーMLに登録されている方は、セミナー案内メールでZoomアドレスを通知します。

・登録のない方は、以下で予め登録をお願いします。(自動的に物性セミナーMLへ登録されます。)登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdT67ZsTDiKsvutP59tY4tOUlx4WTInMKkTQIGWLqYCrPAQKA/viewformをご利用ください。

アブストラクト

2006年にキタエフによって提唱されたキタエフ蜂の巣格子モデルは異方的なイジング相互作用(キタエフ相互作用)より成り,2次元量子スピン液体が実現することを初めて確立した厳密可解モデルである.キタエフ・スピン液体ではスピン自由度が分数化し,遍歴的マヨラナ粒子とゲージ場マヨラナ粒子が出現して,系はZ2ゲージ場と相互作用する遍歴マヨラナ粒子系となる.キタエフ相互作用の異方性が強い場合にはZ2トポロジカル秩序を示し,可換エニオンを有するZ2 トーリック・コード相となる.他方,キタエフ相互作用の異方性が弱い場合には,磁場を印加することによって,第1Chern数が1で非可換エニオンを有するカイラル・スピン液体となる.この系の候補物質であるα-RuCl3では半整数量子化熱ホール効果の観測や,磁場角度分解比熱測定によるマヨラナ励起の観測などから,カイラル・スピン液体(非可換エニオン相)が実現していることが期待されている.さらに最近の実験で,磁場下において結晶構造の3回回転対称性が2回対称に低下する現象が観測され,何らかのネマティック相転移の可能性が示唆されている.この実験結果を理解するため,現実の候補物質に存在する非キタエフ相互作用と印加磁場の絡み合いで生ずるマヨラナ粒子間の多体相互作用が引き起こす相転移の可能性について調べ,磁場誘起による非可換エニオン相からZ2 トーリック・コード相へのトポロジカル・ネマティック相転移が可能であることが分かった.さらに非キタエフ相互作用がマヨラナ・バンド構造を劇的に変え,別のトポロジカル相への転移を誘起する可能性もあることが分かった.本講演ではこれらの結果について紹介するとともに上述の実験との関連についても議論したい.

宣伝用ビラ

KMB20211206.pdf(85)

物性セミナーのページ

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar