1. アミノアシルtRNA合成酵素の新規機能の探索、及び、その作用機序の解明
チロシルtRNA合成酵素 (TyrRS)とトリプトファニルtRNA合成酵素 (TrpRS)は、tRNAにそれぞれチロシン及びトリプトファンを結合させる反応(アミノアシル化反応)を触媒する酵素であり、細胞質内で蛋白質合成において重要な役割を担っている。ヒトのTyrRS及びTrpRSは、触媒活性には不必要な余分な付加ドメインをそれぞれC末端、N末端にもっていることが報告されている。我々は、ヒトTyrRSがアポトーシスの初期段階で細胞から分泌され、余分な付加ドメインがプロテアーゼで切断された後、触媒活性ドメイン(mini TyrRS)及び余分な付加ドメインが二種類のサイトカインとして働くことを発見した。また、ヒトTyrRSの触媒活性ドメイン(mini TyrRS)が、血管新生促進因子として働くこと、他方、近縁の酵素であるヒトTrpRSも蛋白質分解酵素により余分な付加ドメインが切断されこの触媒活性ドメイン(mini TrpRS)は逆に血管新生抑制因子として働くことを明らかにした。現在、アミノアシルtRNA合成酵素のさらなる新規機能の探索、作用機序の解明を行っている。
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