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  subtheme1.超小型衛星用信頼性工学の構築と実衛星を通した先進的衛星開発・試験・運用・利用手法に関する研究

研究概要

a. 超小型衛星を題材にした「ほどよし信頼性工学」の理論体系の構築
b. 実衛星開発を通した先進的衛星開発・試験・運用・利用手法
c. 利用・ビジネス開拓
 

 a.超小型衛星を題材にした「ほどよし信頼性工学」の理論体系の構築

 これまでの宇宙開発では、衛星やロケットにきわめて高い信頼度目標値を設定し、それを実現すべく信頼性管理・信頼性設計手法を生み出してきました。その超高信頼度を実現するために、多くの試験用モデルの開発と、莫大な人数の研究者・技術者による長期にわたる作業が必要となり、衛星のコストや開発期間は地上の他システムからは考えられない値(1機数百億円、開発期間5年以上等)になっています。
一方、1985年頃からイギリス、ドイツ、アメリカをはじめにいくつかの国では、大学を中心に50kg程度の超小型衛星を開発し、地球周回軌道上に打ち上げてきました。1機数百万~数千万円、開発期間も2年程度の大学研究者・学生による手作り衛星であるにもかかわらず信頼度はそれなりに高いものが打ち上げ・運用まで成功させています。そこには、信頼度で最高水準を狙わず、実現しやすい適切な信頼度を設定する「ほどほどの設計」の考えがあったはずです。我々はこれを「ほどよし信頼性工学」という形で体系化しようと考えています。たとえば、冗長系などを駆使したくさんの部品を使って信頼度の高いシステムを作ろうとすると、もちろん計算上は信頼度はあがるでしょうが、複雑なシステムになるせいで、人間のロジックの間違いが入ったり、ワークマンシップ・エラーが入ったりすることで、その信頼度通りに動作する確率は下がり、その二つの信頼度の掛け算となる「実質信頼度」は結局は下がってしまうことが予想されます。一方で、イギリスの大学発ベンチャー会社のSSTLの衛星などは、冗長系を持たずシンプルなシステムを目指すことで、上記の「実質信頼度」が結果的に高くなったからこそ、一度も失敗をしなかったのではないかと推測されます。
  本サブテーマでは、この「ほどよし信頼性工学」という新たな観点を取り入れ、衛星の設計信頼度の目標値を適度に設定することで、開発過程でのミスを大幅に減らし、最終的には従来の開発過程よりも高い信頼性の衛星をつくる研究を行います。どこまで手を抜くか、安く・早くできるかを考え、欲張りすぎず、コスト・手間と信頼性・性能のちょうどよいバランスを見つける手法を構築することが本プロジェクトのカギです。

 b.実衛星開発を通した先進的衛星開発・試験・運用・利用手法に関する研究

 本研究では、約4年の研究期間に、4~5機の超小型衛星を開発し、打ち上げ、軌道上実証します。
それぞれの衛星は次のようなミッションを実現します。
#1:地球観測衛星であり、そのデータを公開して広くデータ利用法を検討するミッション
#2:宇宙科学ミッション、特に海外の研究機関からのミッション
#3~:2~3機の同型衛星をコンステレーションで運用することで、新しいビジネスを実験するミッション

 以上の衛星は、ミッションの発掘と詳細化、衛星の概念設計、詳細設計、エンジニアリングモデルの開発と地上試験を経てフライトモデルの開発、打ち上げ、軌道上運用までを実施し、その成果を次の開発にフィードバックします。打ち上げ後は搭載技術の軌道上実証データを取得するとともに、宇宙科学、地球観測やビジネスへのデータの利用を実験し、その成果を広く公開することで、利用コミュニティの発掘や醸成につなげます。いずれのミッションも、将来、利用コミュニティから衛星の発注が起こることへの「呼び水」になることを意識しています。多くの方のデータ利用などを通した、我々の試みへの参加を期待しています。

 c.利用・ビジネス開拓

 超小型衛星のメリットは、その超低コスト、短期開発の利点を生かして、衛星のパーソナルユースを進めることと同時に、多数機を打ち上げてフォーメーションフライトやコンステレーションなどの新しい衛星利用法を追求できる点にあります。1機の中・大型衛星は分解能が高くとも同じ地点を観測できる頻度は少なく、望みの場所を望みのタイミングで撮像できるシャッター権も得られにくく「変化の把握」や「リアルタイム性」が重要なミッションには対応できません。多数機により全世界を短時間間隔で観測できる「地球の目」ができることで、日々の変化を見ることが重要な農林水産業への応用、災害の監視、大気中の水蒸気量の頻繁な観測、地球のハイビジョン画像の常時撮像など、これまでの少数の衛星群では無理であった、さまざまなミッションが可能となります。今回のプロジェクトでは数機を使った実験しかできませんが、将来、100機規模の超小型衛星コンステレーションが重要な社会インフラになることを目指した研究開発と利用開拓を進めています。

 
 
その他のサブテーマ
サブテーマ2: 産業化を目的とする超小型衛星技術の実用化研究とものづくりインフラの構築
サブテーマ3: 先進的超小型衛星設計論と要素技術に関する研究
サブテーマ4: 革新的工学系及び地上情報処理技術に関する研究
サブテーマ5: 超小型衛星用の先進型・非可動型地上局に関する研究
サブテーマ6: 地上試験手法に関する研究
サブテーマ7: 実践的宇宙教育・人材育成に関する研究
サブテーマ8: 科学への応用法とミッション系先進インターフェースに関する研究
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