含フッ素化合物の反応性を最大限に活かした新しい合成法

含フッ素化合物の反応性を利用して、なるべく環境負荷をかけずに有用物質を合成する新しい手法の開発を目指しています。


二酸化炭素を原料とした含フッ素炭酸ジエステルの合成

 ホスゲンは、耐衝撃性透明素材であるポリカーボネートや、ポリウレタンの原料であるイソシアナートの生産に利用される有用な工業原料ですが、高い毒性が問題となっています。 含フッ素炭酸ジエステルはホスゲンの代替原料となることが知られていますが、その合成法のほとんどがホスゲンを原料としており、完全なホスゲンの代替とはなりません。 当研究室では、地球上に豊富に存在し毒性の低い二酸化炭素を原料とした含フッ素炭酸ジエステルの合成に成功しています。 また、二酸化炭素の水和によって得られる無機炭酸塩を原料とした含フッ素炭酸ジエステルの合成法も開発しました。 これらの反応を用いることで、より環境低負荷な工業原料の生産が可能になると期待されます。
M. Sugiyama, M. Akiyama, K. Nishiyama, T. Okazoe, K. Nozaki ChemSusChem, 2020, 13, 1775–1784.


アクリル酸エステルのワンポット合成

  メタクリル酸エステルは有用な化学製品であり、その用途は多岐にわたります。 例えばメタクリル酸メチルはポリマー合成原料として知られており、その需要は今後ますます増大すると予想されています。 しかしながら、現行の工業的な合成プロセスで増産するにはいくつかの問題があり、供給のための新たな合成プロセスが必要です。 当研究室では、アセトン、クロロホルム、アルコールを原料とし、有機強塩基であるジアザビシクロウンデセン(DBU)存在下、ワンポットで対応するメタクリル酸エステルを得る 新たな合成プロセスを開発しました。含フッ素アルコールを用いることで、含フッ素メタクリル酸エステルの合成にも成功しています。
M. Koyama, T. Kawakami, T. Okazoe, K. Nozaki Chem. Eur. J., 2019, 25, 10913–10917.