科研費基盤(B)

 

〈日常学としての民俗学〉の創発性―世相史的日常/日常実践/生活財生態学の国際協働

(研究代表者:岩本通弥 課題番号:18H00780、2018年度‐2020年度)

 

 

本研究は日中韓の民俗学が、ドイツ民俗学における市民運動的実践や、その鍵概念である〈日常Alltag〉を受容する際に問題化してきた、それぞれの包摂の相違を創発的に協働させることによって、東アジアに〈日常学としての民俗学〉の確たる基盤を構築することを目的とする。各々の学史的蓄積によって日中韓の民俗学では、同じ日常研究でも相互に異質な特徴を有している。口承研究に特化して発展してきた中国では、生活世界研究に厚い蓄積があるとともに、ミシェル・ド・セルトー的な日常実践に焦点を当てるのに対し、韓国では当たり前の現代の日常を、モノの記録集積から「普通の人びと」の生き方を捉える生活財生態学=暮らし向き研究に特筆すべき実績がある。セルトー的日常を即時的日常と呼ぶなら、日本のそれはタイムスパンの長い世相史的日常と呼べる、生活文化の体系的変化をプロセスとして捉える点に研究の強みを持っており、日中韓と独との国際的な研究協働は、社会編成を攪乱しつつ「いま」が現働化する〈日常〉という新たな領域を共創的に開拓しよう。