SIP 革新的燃焼技術 制御チーム

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研究課題

戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)
課題「革新的燃焼技術」新規採択研究開発課題および研究責任者

研究開発課題名※ 研究責任者 概要
ロバスト性確保および運転領域拡大、適合試験を不要とするための革新的精密燃焼制御 金子 成彦
(東京大学 大学院工学系研究科 教授)
本研究課題では、従来の制御マップに基づく制御からModel Based Control(MBC)の概念へ移行するために、ECU上で実行可能な物理に基づく着火燃焼予測モデルを構築し、その制御性能の評価を行う。また、物理モデルでもモデルパラメータは有しており、定数決定は必要になるが、基本設定はクラスター大学で検討する高次元高精度の物理モデルを用いた計算結果でそれらのパラメータを設定した上で、さらに路上走行時に、走行環境や運転条件に応じて最適化できるようなオンボードでのキャリブレーション手法を検討し、その有効性をトランジェントベンチによって実証する。
CFDに適合するディーゼル噴霧燃焼サブモデル群の構築およびMBC・MBDモデルへのリダクションに関する研究 川那辺 洋(京都大学大学院 エネルギー科学研究科 准教授) ディーゼル燃焼を記述する上で最も重要となる噴霧・混合気形成過程、着火・燃焼およびエミッション生成におけるCFDサブモデル群を構築する。さらに、これらのモデルをリダクションすることにより、モデルベース開発(MBD)および制御(MBC)に適応可能な0Dモデル群を整備する。また、これら0Dモデルの最適化をCFDの計算をから推定する手法を確立するとともにシステム化することにより、シンプルで高精度なモデルを自動生成する手法を構築する。
MBC用噴霧燃焼サブモデルの構築 小島 宏一(国立研究開発法人産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター 研究員) MBCに適用可能なディーゼル燃焼の物理モデル構築およびモデル定数推定のための手法・ツール開発を行う。モデル作成においては解析的に解を得る手法と統計的手法を組み合わせ、比較的処理の軽い噴霧燃焼、排気のサブモデル構築を行う。サブモデル構築の際には3D-CFDによる詳細計算を活用して予測精度の高いモデル構築を目指す。さらに、作成したモデルに含まれる経験定数を実験を行わず簡便に決定することを目指し、3D-CFDに基づき定数を予測する手法の検討・ツール開発を実施する。
ディーゼル噴霧の混合気形成・燃焼過程の可視化観察 河崎 澄(公立大学法人滋賀県立大学 工学部機械システム工学科 准教授) 本研究課題では、ディーゼル燃料噴射における噴射開始から噴霧発達、混合気形成・燃焼に至る物理過程を、定容容器内における噴霧のレーザ画像計測により明らかにする。すなわち、ディーゼルエンジン設計開発支援ツールに搭載する、噴霧挙動を記述するための物理モデル構築に必要な基礎的知見とキャリブレーションデータを提供することを目的として、定容容器噴射試験システムを試作し、LIF法に基づく気相・液相燃料濃度分布の可視化観察を行う。観察対象には、主燃焼に関連する十分発達した噴霧に加えて、噴霧が十分発達する前に噴射期間が終了するような多段・少量噴霧、壁面衝突噴霧も含め、それら発達過程に及ぼす雰囲気および噴射条件の影響を明らかにする。
エンジンのモデルベースト制御用の壁面熱伝達モデルの構築 一柳 満久(上智大学 理工学部機能創造理工学科 准教授) 当該研究では、エンジンの熱効率50%以上を達成するため、熱損失推定のための壁面熱伝達モデルの構築、着火時期予測のための壁温・ガス温度推定法の開発、ECUで計算可能な0次元過渡熱伝達モデルへの開発及びモデルベースト制御への実装を目的とする。初年度は、熱伝達モデル構築のため、燃焼室内のガス流動を数値計算により評価する。2、3年度は、可視化エンジンにて壁面熱流束とガス流動を実測し、熱伝達モデルの妥当性検証、ならびに燃焼室壁温・ガス温度推定法を開発する。4、5年度は、構築したモデルを、ECUで計算可能な0次元過渡熱伝達モデルへ展開及びモデルベースト制御へ実装し、熱発生率推定に対する精度検証を実施する。
モデル化誤差を補償する制御アルゴリズム構築とオンボードキャリブレーション実装の検討 大森 浩充(慶應義塾大学 理工学部 教授) 制御に利用するモデルと実際の現象の間には必ず誤差が存在する。一般に、その誤差を補償するフィードバック制御アルゴリズムを付加すると、ロバスト性を向上させることができる。一方、ECUの制御モデルのオンボードキャリブレーション実装では、ハードウェア性能とのトレードオフが表面化する。そこで、本グループでは、モデルに基づくロバストなフィードバック制御アルゴリズムを構築し、さらに実用性を考慮したオンボードキャリブレーションのECUへの実装技術およびECUハードウェア仕様要求を検討する。
モデルベースト制御を高精度に実現するための制御理論の実装と高性能ECUの可能性検討 平田 光男(宇都宮大学 工学研究科 教授) モデルベースト制御を高精度に実現するためにはフィードバック制御器、フィードフォワード制御器及びフィードフォワード入力の適切な設計が必要となる。そこで、ハードディスクドライブやレーザ加工機、半導体露光装置の超精密超高速制御で用いられている最新の各種制御法を燃焼制御系に適用し、ベンチマーキングを行う。そして、その結果を踏まえ、革新的燃焼制御系を実現する制御アルゴリズムの精度向上手法をを計算機上で検討するとともに構築、その実装化技術も検討するする。また、ECUの制御プロセッサが従来の32bitから64bitになると、高次制御器となるμ設計法や非線形モデル予測制御など、複雑な制御アルゴリズムが実装誤差なく高精度に実現できるようになる。そこで、高性能ECUを前提とした制御アルゴリズムの構築及び実装を通して、性能ECUの可能性を検証する。
モデルベースト制御における不確かさに適応し高性能化を実現するFB制御アルゴリズムの構築と実装可能性の検討 水本 郁朗(熊本大学 大学院自然科学研究科 准教授) モデルベースト制御では、実際のシステムと構築したモデルに差がある場合、必ずしも所望の制御性能が得られない場合がる。また、実際のシステムでは、環境の変化や経年変化により、構築したモデルと必ず何らかの差が生じることが考えられる。このように、常に変動する不確かさに対して、自動で適応する(または不感である)制御手法の検討を行い、モデルベースト制御系のロバスト性の向上および制御性能を保つフィードバック制御アルゴリズムの構築を目指す。さらに、ECUへの実装に関しては、より単純な構造のフィードバック制御の構築が不可欠である。本グループでは、簡単な構造ではあるが高性能な制御を実現できる制御器の開発を行い、制御器のECU実装への実現可能性を検討する。
自動車エンジン燃焼室3次元CFDコアソフトの構築 溝渕 泰寛(宇宙航空研究開発機構 航空技術部門 数値解析技術研究ユニット 主幹研究員) 自動車エンジン燃焼室内の流れ場を把握し、また、吸気/排気系との相互作用を考慮した解析を可能とする移動境界を容易に扱える3次元圧縮性流体解析コードを開発する。均一直交格子法と境界埋め込み法をベースに、シンプルでかつ今後のスーパーコンピュータのアーキテクチャに適合するプログラム構造とすることにより、使い勝手のみならず計算速度においても海外ソフトに対して優位性を持ちえるコードとする。市販コードと互換性のあるサブモデルインターフェイスを具することにより自動車業界共有のコアコードとして仕上げ、ガソリンチームでのサブモデル開発および熱効率50%のシナリオ確認に提供する。
3次元燃焼解析ソフトへの最新燃焼サブモデルの組み込み方法提示と熱効率50%のシナリオ確認のための1次元モデルへのリダクション 草鹿 仁(早稲田大学 理工学術院創造理工学部創造機械工学科 教授) 3次元燃焼解析モデルへのサブモデル組み込み方法を抽出し、他クラスター大学に提示し、チーム内の作業の円滑化を図る。火炎伝播モデルをKIVA-4およびコアソフトで構築し、精度検証を進め、構築した火炎伝播モデルを1次元モデルにリダクションした上で、この1次元モデルを用いて熱効率50%達成のシナリオの確認を行なう。そのリダクションの対象となる3次元燃焼解析は、各クラスター大学において最新のモデルや知見を組み入れており、予測精度の高い1次元モデルによる解析が期待される。
自動車エンジン燃焼室3次元CFDコアソフトへの点火モデルの組み込み 堀 司(神戸大学 システム情報学研究科 講師) ガソリン機関で用いられる点火のモデルを構築し、3次元燃焼解析ソフト(KIVA4)に組み込む。点火モデルはKIVA4に組み込まれているモデル、放電経路を考慮できる既存モデルなどから基本点火モデルを提案し、KIVA4に組み込むと同時にコアソフトへの組み込み方法を提示する。次に、KIVA4を用いて、超希薄大量EGRを想定し、温度、圧力、当量比、速度、投入エネルギー、ギャップなどの影響を計算できるかを検証する。さらに、他グループにて行われる点火の実験およびDNSの結果を用いて改良を行った点火モデル(新点火モデル)を提案し、KIVA4への組み込みおよびコアソフトへの組み込み方法の提示を行う。
自動車エンジン燃焼室3次元CFDコアソフトへの最新噴霧モデルの組み込み 高木 正英(海上技術安全研究所 環境・動力系 主任研究員) エンジン開発において、燃焼性能に大きく影響する燃焼室内の燃料分布やすすの排出に大きく影響する燃料液滴の壁面付着のシミュレーション解析の重要性が高まっており、燃料噴霧液滴の挙動を現す精度の高いモデルが求められている。本研究においては、先ずは噴霧の基本計算手法である離散液滴モデル(DDM)をプラットフォームソフトの新たな計算手法に適合できるようにし、更に安定的に計算できる分裂、蒸発、付着のベースモデルを載せ、ベースソフトとしての基盤を構築する。その後、SIPの革新的燃焼技術の他の分科会などで開発された最先端モデルを組み込み、高精度の噴霧、燃焼モデルを構築する。
自動車エンジン燃焼室3次元CFDコアソフトへの壁面熱伝達サブモデリング群の組み込み 尾形 陽一(広島大学 大学院工学研究科 准教授) 本研究では、乱流状態、既燃・未燃領域での詳細な壁面近傍速度・温度境界層分布計測から得られる改良された壁面熱伝達サブモデル群をコアソフトに組み込み、 複雑形状を持つ実機エンジンの様々な運転条件に対する3次元CFD数値解析を用いた冷損評価及び低減要素の提案を行う。また、壁法則に代表される従来の壁面境界条件に対し、更に改良されたサブモデルを用いた条件での3次元解析から得られる局所瞬間熱流束から、1次元シミュレータの開発・高精度化に必要な空間平均瞬間熱流束・熱伝達係数も求めることが出来る。サブモデル群が組み込まれたコアソフトを用いて熱効率50%を達成する為の必要要素を明らかにする。
直噴ガソリンエンジンにおけるPM 生成詳細モデル構築ならびにPM 低減指針の提示 秋濱 一弘(日本大学 生産工学部 教授) 本研究では,直噴ガソリンエンジン特有の冷間始動時プール火炎からのPM生成を含めて,前駆体から粒子核生成までの過程を明確にする。粒子生成計算手法を駆使し,直噴ガソリンエンジン内でのPM核生成過程をモデル化する。また,構築したPM核生成モデルを汎用コード等に組込み,計算によってPM低減のための指針を提示する。
ガソリンインジェクタでの噴霧ならびピストン上部での液膜形成過程のモデル化 河原 伸幸(岡山大学 大学院自然科学研究科 産業創成工学専攻 准教授) 本研究では,燃料噴霧の可視化ならびにPDA(位相ドップラ法)計測を行い,燃料噴霧挙動を詳細に計測し,ガソリンインジェクタでのノズル出口での噴霧モデルを構築する。PDA計測,高速可視化を用い,高圧インジェクタが形成するノズル出口における燃料の一次分裂挙動のモデル化を行う。また,ピストン頂面における噴霧の壁面衝突挙動を可視化し,壁面付着・液膜形成・燃焼過程をモデル化する。構築した噴霧モデルならびに壁面付着モデルを汎用コード等に組込み,高効率・高出力でクリーンなエンジンを構築する燃料噴射制御手法を構築する。
ガソリンインジェクタに適用可能な多成分燃料蒸発モデルの構築 小橋 好充(北海道大学 大学院工学研究院 助教) 本研究ではガソリンインジェクタから噴出される燃料噴霧とその壁面衝突後に形成される液膜の蒸発に対し、多成分燃料の効果を組み込む。また、多成分燃料の気液平衡特性を加味することで、壁面衝突・液膜形成過程もモデル化する。本モデルによって、燃料噴霧と液膜の蒸発速度と液相組成の時間変化ならびに蒸気相における各成分の時間・空間的分布を予測可能にする。
これらのモデルを自動車エンジン燃焼室3次元CFDソフトに組み込み、燃料噴霧による混合気形成過程やピストン表面の液膜挙動の予測精度を向上し、PM低減指針の提示に貢献する。
ガソリンエンジンでのプール燃焼場PM生成機構解明・モデル化とデータベース構築 相澤 哲哉(明治大学 理工学部 准教授) 本研究では、定容容器ならびに圧縮膨張機関を用いて、ウォールガイド方式直接燃料噴射ガソリンエンジン冷間始動時におけるプール燃焼からのPM/PN生成・酸化・排出過程のデータベース(燃料濃度、OHラジカル濃度、局所熱発生率、すす濃度、温度の時空間分布、TEM観察によるすす粒子性状解析)を構築する。このデータベースを基礎とし、既存のPM/PN生成モデルで十分に考慮されていない核生成過程、混合気の不均一性、すす酸化過程の影響等も考慮した新たなPM/PN生成モデルを構築する。
筒内直噴ガソリンエンジンにおける壁面熱伝達モデルの構築 窪山 達也(千葉大学大学院 工学研究科 准教授) ピストン頂面の壁面温度,熱伝達は,噴霧の壁面衝突・液膜形成に強く影響を及ぼし,プール燃焼,微粒子生成に強く影響を与える。本研究では,急速圧縮膨張装置を用いて実機の冷間始動時相当の雰囲気,壁温条件のもとで,燃料噴霧衝突領域におけるピストン頂面温度と熱流束を計測し,液膜燃焼・すす生成過程における壁面温度影響を明らかにし,壁面熱伝達モデルを構築する。構築した熱伝達モデルは,「自動車エンジン燃焼室3次元CFDコアソフト」に組み込み,研究拠点に導入予定の試験設備を用いて,コアソフトおよびサブモデル群の予測精度を実機検証する。次いで,汎用コード等を用いて,ガソリン機関の3次元筒内燃焼シミュレーションを実施し,特に冷間始動時の排出微粒子の質量及び数濃度の低減技術を検討し,提案する。
ガソリンエンジンでの低温始動時PM/PN予測モデルの構築 橋本 淳(国立大学法人大分大学 工学部 機械・エネルギーシステム工学科 准教授) 燃料直接噴射式ガソリンエンジンでは冷間始動時において、ピストン頂面に燃料噴霧が付着し、液膜を形成することで、プール燃焼による微粒子(PM)排出が大きな課題となっている。高い熱効率を保ちながらその排出量を抑制する手法を提案するために、本研究では、プール燃焼場でのPM/PN排出予測モデルを構築する。そのためにまず、バーナ火炎を用いてPM前駆物質の計測を行い、生成モデルの検証と最適化を行う。次に、前駆物質からの粒子成長に関するモデル化を行い、一次粒子生成モデルを提案する。壁面に付着した燃料の燃焼過程についても計測を行い、その燃焼量予測モデルについても検証と開発を行う。
ガソリンエンジンにおける燃料噴霧流動モデル化およびサブミクロン粒径計測手法構築とプール燃焼場PM生成機構モデリングのためのデータベース構築 荒木 幹也(群馬大学 知能機械創製部門 准教授) 本研究では,燃料噴霧の時系列PIV計測を行うことで,噴霧挙動を詳細に把握し噴霧流動モデルを構築するとともに,液膜プール燃焼からのPM粒径・数密度を非接触計測する手法を開発する.多波長の直線偏光をPMに入射し,その散乱光に含まれる偏光成分の強度比(偏光比)から粒径を求める.構築したデータベース,噴霧流動モデルならびにPM生成モデルを汎用コード等に組込み,高効率・高出力でクリーンな燃焼のための燃料噴射制御手法を構築する。