SIP 革新的燃焼技術 制御チーム

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研究概要

SIP「革新的燃焼技術」

総合科学技術・イノベーション会議が自らの司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野の枠を超えたマネジメントに主導的な役割を果たすことを通じて、科学技術イノベーションを実現するために新たに創設したプログラムである。その特徴は、社会的に不可欠で、日本の経済・産業競争力にとって重要な課題を、基礎研究から実用化・事業化までを見据えて研究開発を推進し、規制・制度、特区、政府調達なども活用し国際標準化も意識し、企業が研究成果を戦略的に活用しやすい知財システムを目指すものである。

SIPは11テーマから構成されており,いずれも喫緊の課題に関するもので、日本の強みを増強し、革新的な技術を生み出そうとの狙いを持って進められている。その11テーマのうちの一つが「革新的燃焼技術」である。「革新的燃焼技術」の技術的な目標を「革新的な制御技術を生み出し、内燃機関の最大熱効率を50%に高める要素技術の研究」および「プロジェクト終了後の2018年には内燃機関から発生するCO2 を30%削減(2011年比)するための基盤技術として、順次、社会に提供する」ことである。この大目標を共有した4チーム(ガソリン燃焼チーム,ディーゼル燃焼チーム,制御チーム,損失低減チーム)が,密に連携して研究活動に取り組んでいる。さらに、もう一つの柱として、人材育成の観点から、持続的な産学連携体制の構築を掲げている。

制御チーム概要

内燃機関は,筒内の燃焼現象の物理的な複雑さに加え,排ガス規制に対応すべくシステムも複雑化の一途を辿ってきた。今後の排ガス規制,燃費評価は,実走行を模擬したランダムな加減速の条件で行われ,過渡性能が問われるようになる。また,地域や季節により異なる燃料性状は,内燃機関の性能に大きく影響する。このように,定常での性能設計に加え,様々な過渡状態に対応した制御システムが必要となってきている。さらに,熱効率50%を目指す革新的燃焼技術は,ガソリンエンジン,ディーゼルエンジンとも究極的には予混合気の自己着火燃焼を基盤とする燃焼技術を見据えることとなる。このような燃焼技術は温度等の状態量に敏感で,環境変化等の外乱に対して,制御なしでは実用上要求性能の維持は困難となる。このように,革新的燃焼技術の実用化には,サイクル毎の燃焼自体を制御し安定化させる等の技術が必要であり,従来のエンジンの制御とは制御思想,対象が大きく異なるものが要求されている。

従来のエンジンの制御系は非常に多くの定常試験で取得されたデータに基づいて構築した制御マップを元に,過渡は定常の知見を試行錯誤的につなぎ合わせ対応してきた。しかし,上記の様な複雑なエンジンシステムで過渡性能までを保証するには,実験数は激増し,制御マップによる方法はもはや現実的な制御系の設計開発手法ではない。

そこで,制御チームでは,熱効率50%の実現可能性を有する革新的燃焼技術の実用化と過渡性能向上のために必要となる革新的な制御システムおよびその設計開発支援ツールの開発を目指す。

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具体的には,革新的な制御システムでは,従来から行われてきた多数回の実験に基づくマップの利用を排し,ECUに実装した可能な限り物理に基づくモデルによってサイクル毎に最適なアクチュエーターの目標値を演算し,制御を行うModel Based Controlの手法により,ロバスト性と汎用性を備えるものを開発する。並行して行われる設計開発支援ツール開発は,新たな燃焼コンセプトの机上検討を可能にし,また,制御モデルに含まれる定数の事前決定に利用できる高速高精度のシミュレーションコード開発と,さらに運用時にそれら定数の最適化を行うアルゴリズムの構築から成る。本研究はこれらをシームレスに扱える体制の構築を目指す。

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制御チームは,とりまとめ役となるリーダー校 東京大学(チームリーダー 金子成彦 東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻 教授)のもと,約20のクラスター大学(研究機関を含む)が,3つのグループのもとで活動している。

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