5/20と5/27の講義が入れ替わりました。5/20が二瓶先生、5/27が根本先生の講義になります。
2011年3月の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故では多くの放射性物質が環境中に放出されました。放射性物質が降下した場の多くは農林水畜産業の場であり、事故直後より農学者により多くの調査研究がなされました。本講義では、食の安全と農業環境に焦点を当て、農業の場における放射能汚染の実態とその対策のための試験研究で得られた知見を紹介します。同時に放射線や放射性物質の基礎も講義します。受講者は、本講義を通じて、農業環境における放射能汚染の実態把握と放射能汚染からみた食の安全確保への取り組みを理解することが期待されています。
キーワード:放射性物質/放射性セシウム/放射能汚染/農業環境/食の安全
各講義の内容について示します。講義の順番については、講義の中で告知します。 講義では各講師およびゲストスピーカーにより話題が提供され、議論が行われます。 尚、講義の順番やシラバスの内容に変更があった場合には、このページ(http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/radio-plantphys/lecture.html)で最新情報を紹介します。
本講義は第1回に予定されており、ガイダンスを含んでいます。2011年3月の震災直後から大学院農学生命科学研究科では、40-50人の教員が、専門分野を超えて、福島の現場での調査研究を進めています。被災地の自然環境を対象にする研究はひとつの専門からだけでは解けないことが多いのです。震災から3年近く経って次第に判ってきた科学的知見を一緒に考えていきたいと思っています。
キーワード:農地/研究者/放射能汚染
配付資料:講義情報
本講義の理解に必要となる基礎知識の習得を目的とした授業を行います。主な内容は以下の通りです。 1.放射線の基礎知識:放射線とは何か/放射線と物質の相互作用 2.放射性同位体の基礎知識:放射性同位体(放射性物質)とは何か/放射性同位体の性質/放射性同位体の生成 3.被ばく評価の基礎知識:放射線の人体影響/ベクレルとシーベルト/自然放射線被ばく
キーワード:放射線/放射性同位体(放射性物質)/被ばく評価/ベクレル/シーベルト
放射線の農業への影響を考える上での大前提となる今回の福島第一原発事故の全体像を包括的に紹介します。すなわち、事故の原因、経緯等とそれによる放射性物質の放出、土壌の汚染を説明します。加えて、避難区域の設定、食品等の規制基準の設定など、国、地方自治体によって取られた対策も整理します。そして住民の帰還といった最新の状況もできるだけ盛り込んでいきます。
キーワード:福島第一原発事故/土壌汚染/避難区域
福島県では、放射能汚染の懸念から、生産・収穫された農林水産物について、放射性物質検査を行っています。また、米は特に詳しく検査されており、福島県内で生産された全てのものについて放射性物質検査を行っています。原発事故直後から現在までの膨大な検査結果をもとに、放射性物質の農産物への影響や放射能 汚染の経過を説明します。
キーワード:モニタリング検査/米の全量全袋検査/福島県
原発事故で放射能汚染が広がった福島県では、トマト、キュウリ、アスパラガスなど多様な園芸品目が県の主力品目として栽培されています。また、中山間地や転換畑では昔からコムギ、ダイズ、ソバなど多くの穀類が栽培されています。福島県で現在取り組まれている最新のデータを基に、園芸作物、穀類の放射能汚染に関する問題点と放射性物質を抑制する取組について紹介します。
キーワード:園芸作物/穀類/モニタリング検査
平成23年3月の福島第一原発事故により放射性セシウムをはじめとする放射性物質が福島県を中心とする広範な水田地帯に降下しました。本講義では、こうした水田における放射性セシウムのイネへの移行の問題を、水田生態系の特質と関連づけながら解説します。
キーワード:イネ/水田生態系
モモやカキといった永年性の作物である果樹では、放射性Csの土壌から樹体への移行のみならず、枝や幹などの旧器官に蓄積した放射性Csが果実をはじめとする次年度の新生器官へ移行します。ここでは、土壌→樹体、旧器官→新生器官、樹体→土壌などの、果樹園内での放射性Csの動態について紹介します。
キーワード 果樹/物質分配
原子力発電所事故後に20キロ圏内で飼養されていたために被曝した家畜とその後代における生殖機能、放射性核種で汚染した飼料を摂取した家畜が生産する乳や肉における汚染レベルとそれを軽減する手法、その家畜の糞尿の汚染実態とこの糞尿を原料とした堆肥から作物への移行レベルなどの牧場を中心とした家畜と畜産物における放射性核種の汚染とその統御について多面的に紹介します。
キーワード:家畜/畜産物/堆肥
キノコから木材まで、人々は森林のさまざまな林産物を食べ物や生活資材として利用しています。福島原発事故による森林の環境放射能汚染は林産物にも及び、人々の暮らしや林業・林産業に多大な影響を与えました。汚染の実態やその対策の紹介を通して、林業・林産業分野で放射能汚染の問題をいかに乗り越えようとしているか、紹介します。
キーワード:シイタケ/針葉樹林/広葉樹林
農作物の放射性セシウム混入問題に取り組むにあたり、植物がどのようにセシウムを体内に取り込むのかを理解することは非常に大切です。本講義では、植物栄養、生理学の中から、関連する最新の知見を紹介します。また、放射性セシウムを「見る」ことを可能にする放射性イメージングの技術と、それを利用した研究例を解説します。
キーワード:植物/セシウム吸収/カリウム/イメージング
海水魚の鰓に存在する塩類細胞は、体内に過剰となるNa+やCl-を排出するばかりでなく、K+の排出も行います。生体内でK+と似た挙動を示すセシウム(Cs+)についても、近年、塩類細胞に備わるK+排出経路を介して鰓から排出されることが示されました。本講義では、イオン・浸透圧調節の観点から、魚類におけるセシウムの取込みと排出について概説します。
キーワード: 浸透圧調節/セシウム/塩類細胞
福島第一原発事故により放出された放射性セシウムはその放出量と半減期(30.1年)から、生物への影響が懸念れています。周辺の森林生態系の樹冠や落葉の上に降り積もった放射性セシウムが、今後系内でどのように分布が変化し、森林外にどのように流出していくかを明らかにすることは、生態学的リスク評価のために重要な課題です。現在進められているモニタリングのコンセプトやこれまでにわかってきたことを解説します。
キーワード:福島第一原発事故/森林生態系/物質循環
福島県飯舘村では全村避難から3年が経過しました。この間、行政主導の農地除染は遅々として進まず、イノシシなどの野生動物による農地攪乱によって当初想定されていた除染法の効果にも疑問の声が出てきています。そんな中、当教授は土壌物理学と農地工学の知見に基づいてNPO法人・村民・大学が協働で農地除染法の開発を試みています。この講義では大学で学ぶ基礎学と応用学の融合の重要性と地域復興における大学の役割について考えます。
キーワード:農地除染/土壌/地域社会/地域協働
出席回数とレポートの成績による総合評価を行います。出席は、授業後にメールを指定したアカウントへ送信することでカウントとします。レポート課題は講義の中で告知します。
なし
Springer社『Agricultural Implications of the Fukushima Nuclear Accident』中西友子&田野井慶太朗 編 (各章、HPから無料でダウンロードできます)
NHK出版『土壌汚染 フクシマの放射性物質のゆくえ』中西友子著
第1回授業日に行います。
なし
放射線の基礎知識がないことを前提とした講義ですが、講義内で解説される基本的な用語は早速習得することが求められます。
東大農学部・放射能対策のページ http://www.a.u-tokyo.ac.jp/rpjt/index.html
講義内容について http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/radio-plantphys/lecture.html
農における放射線影響フォーラムグループの講義情報はアグリコクーンのサイトにて掲載しております。