初回から5回すべてでCOG審査委員として関わってくる中で、住民や学生と行政、そして企業の方々との連携がとても重要な時代になっているということを感じてきました。日本はこれまで東京一極集中が叫ばれ、若者たちが地域に戻ってこないことが問題とされてきました。しかし、COGでは特に若い世代が地域の人と関わりながら、自ら課題を捉え、主体的にアンケート調査を実施したりデータ分析やアプリ制作をしたりしています。多様な人々がもう一度地域課題を見つめて地域のことを考えることが、愛着や関係性を深めるということにつながります。そして、その関係が長期にわたって続いていくことが、地域の活性化につながると感じています。
また、COGに関わることが、一人一人のエンパワーメントにつながっているように感じています。COGに参加しなければ関わることのなかったような人と関わった経験が、「自分でも何かができる」という自信や「自分から行動したい」という思いを高めます。その経験をした人が増えることで、社会は変わっていくのではないかと思っています。
データ活用は課題解決の宝の山であると言われています。しかし残念なことに、日本はまだまだデータ活用が十分にできていないと言われています。もし自治体が積極的に住民と一緒になってデータを活用し、データを使いながら様々なチャレンジをするようになれば、その地域が多様性を重んじていたり、変革に積極的な自治体であったりする「魅力的な地域」あることが発信することにつながるのではないのでしょうか。
地域のことを住民と考えることについては、その大事さがずっと指摘されてきました。自治体の財政は厳しくなってきている今だからこそ、自治体ではできないようなサービスを住民と考えることのインセンティブは高まってきているはずです。それでも、課題解決で自治体と住民が具体的に動くというのは、できそうでできていないことです。まだ取り組めていないとお考えの自治体には、COGという場を使って果敢に挑戦してほしいですし、それをすることで地域の魅力化につながると自負しています。むしろ自治体の方から住民に向けて「COGというものがあるから挑戦しませんか」と呼びかけて、積極的にチャレンジをしていってほしいと思います。オーバーな言い方になるかもしれませんが、COGにチャレンジする姿勢こそが、本当に民主主義のあるべき姿であるといえるのではないかと、強くお伝えしたいですね。
現在、企業においては科学技術や学問の分野、そして政治の世界であっても、自分たちだけではなかなか良い発想が生まれないのが現状です。ですが、連携をする事によって、全く違う視線を持った人々と出会い、新しい発想が生まれ、そこからイノベーションが生まれるということが見直されています。ですから、連携するという経験を積むということは、まさにこれからの時代に重要な「変革やイノベーションを生み出す力」を得るチャンスになると思います。COGでは普通ならば出会うことがない人々と出会い、ともに考えて行動する機会が生まれます。市民・学生の方々には、COGを通してこうした連携の経験を味わっていただきたいと思います。
COGは、「SDGs(持続可能な開発目標)」にも貢献したいと考えています。認知度が高まってきているSDGsとは「2030年、つまり10年後にどうありたいか」という世界的な目標です。世界で目指したい目標を眺めながら、「自分たちの地域に何が欠けているのか」「どんな課題に取り組むべきなのか」「何をすればより多くのゴール達成に寄与できるのか」という形で、SDGsを物差しとして活用しながら地域の課題を考え見つめ、どうすればより多くの課題解決につながるかを考えていただければ嬉しいです。SDGsには考えるヒントがたくさん含まれています。ぜひ物差しとして活用いただければ、知っていただければと思います。
例えば、日本の最大の問題は少子化ではないかと思っていますが、それぞれの地域でよりダイバーシティーが進んでいく取り組み、女性たちが活躍できる仕掛け、より女性たちのリーダーシップが育まれるような取り組みで解決していってほしいと期待しています。これまで、COGに参加していただいた皆さんは、色々な興味深いチャレンジをしてきてくれました。これからも、地域にとって本当にインパクトのある挑戦、つまりその地域にとって本質的で重要な社会課題に向き合うような大きなテーマへの挑戦がもっと出てくればうれしいですし、そうなるよう期待しています。