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InterviewCOG審査委員リレーインタビュー企画:
第5回 関本義秀 審査委員

――役立ちたい思いと行政の課題をコラボレーションさせる場に

 COGも5年目に入り、徐々に思想や考え方が皆さんに伝わってきているのではないかと思っています。作品のクオリティーも上がっていますし、最初に課題を出す行政側と、実際にソリューションを考える市民のコラボレーションもどんどんスムーズになってきているように感じています。

――万が一に備えた自治体と市民の関係構築の場に

 自治体の担当者はそもそも街の課題解決に取り組むことが仕事なので、「なぜあえてCOGに取り組まなければならないのか」と疑問に感じる方もいるかと思います。私は、「行政と市民がコラボレートする土壌を自由な形で作っておけば、いざという時に無理のない形で手伝ってくれる市民が出てくる」ということを皆さんにお伝えしたい。例えば野球のバッティングでも、いざという時にヒットを打つためには普段から素振りをしておかなければなりません。お互いの信頼関係が築かれていなければ、急なトラブルが発生したときに市民とコラボレートして活動することは難しいでしょう。これからの時代は、普段から見えない信頼関係とかコラボレーションを構築しておくという高度なことが自治体には求められるようになります。しかし、これはなかなか普段の仕事の中で構築するのは難しいですし、自分の仕事の範疇ではできないと感じる自治体担当者もいらっしゃるでしょう。ぜひ、関係構築の機会としてCOGに取り組むことを検討していただきたいですね。

――市民として「市長の頭で考える」を経験して

 私たちが普段からインフラが整備された状態で平和に生活できるのは、自治体の方が頑張ってくれているからで、どんな国でも必ずそうやって暮らせる訳ではありません。新型コロナウイルスの感染防止のために自治体の方がいろいろな面で対応してくれているのは、皆さんが認識しているところだと思います。大変な時には特に、物事を政府がトップダウンで示してくれれば一番効率的だと思いがちですが、普段からの市民の力があってこそ、危機対応が可能になるのです。

 しかし、そういうことに自分たちが関わりたいと思っても、なかなかアプライできないというのが現実ではないでしょうか。ボランティアや自治会というレベルで参画できても、もっとダイレクトに政策を提案する機会に接することは多くありません。ですが、COGの場に参加いただけると、行政の人が解くべき課題を提示してくれます。平時から市民が「データを使って何ができるか」「どういう提案ができるか」そして「どういう課題とどういうデータを結び付ければ世の中に正しく伝わるか」を考えるのが日常訓練としても大切なことです。「行政は何を言えば聞いてくれるのか」「何にはあんまり関心がないのか」といった「市長の頭で考える訓練」をすることは、きっと役に立つでしょう。自分たちのアイデアが生きる機会になるので、ぜひ参加を検討いただきたいと思っています。

 学生はピュアな研究だけでなく、そもそも世の中の課題が何なのかを知りたがっているし、微力でも役立ちたいという思いを持っていると思います。かつての学生たちもそうだったとは思いますが、今の学生はよりまじめで、かつ将来が見えづらい社会の中で自分が何かしないといけないという危機感が強いのかもしれません。彼らは被災地にボランティアに行くなどの行動を起こしていますが、そのほかにもどういう政策提案をすればいいのか、プログラミングやアプリ制作、シミュレーションといった自分がやっている研究が直接どう役に立てるのか、非常に関心を持っています。そういう意味で、COGはそもそもの課題も行政が示してくれているのでとてもいい場です。

――裾野を広げ、新しい団体の活躍を期待

 COGのような取り組みは興味を持つ団体とそれ以外にくっきり分かれてしまう傾向があり、新しい顔ぶれが入らず取り組む自治体が固定化してしまうという問題があります。我々の活動でもこうした傾向を危惧しており、裾野が広がっていってほしいと願っています。より多くの行政担当者にCOGの思想が伝わっていけばいいし、行政の外からうまく課題を見つけたり設定できたりする民間の力、人材が増えることを期待しています。