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InterviewCOG審査委員リレーインタビュー企画:
第4回 大橋弘 審査委員

――さらに社会へインパクト与える進化を

 私が専門にしている経済学は机の上で考えたり外から現象を観察したりするという作業が多いのですが、COG(チャレンジ!オープンガバナンス)の活動に携わるうちに、心の持ち方一つで世の中を変える一歩が踏み出せるものだと感じるようになりました。これまでCOGに挑戦して下さった方々は、自治体の皆さんと関心を共有できる課題を見つけ、実際に手足を動かすことで解決策を社会に実装してきました。仲間同士で和気藹々と話し合いながら作り上げていった解決策には発想の豊かさもありましたし、私はそこから元気をもらってきました。

 2020年になってから新型コロナウイルス問題で変わりゆく社会の中、新しい発見がある一方で、人と触れ合うことができないというもどかしさも感じているのではないかと思います。社会はアフターコロナ、ウィズコロナへと向かっていくでしょうが、完全にシフトするまでには、もう少し時間がかかるでしょう。さらに時間がかかればかかるほど、人と人との付き合い方は変容し、2019年までとは違う時代になるのかもしれません。仕事や娯楽の両面でデジタルが普及していくことになるでしょうし、人と人との付き合い方が変われば社会が抱える問題も変わってくるでしょう。これは私たちが初めて経験するような時代の局面です。COGは、生活の中で気づいた問題を市民自身が解決し、さらに社会全体を動かす取り組みに押し上げていく可能性を秘めています。2019年までをCOGの第1ステージだとすると、次のステージではさらに社会にインパクトを与え得るものに進化していくと期待しています。

――デジタル導入で住民目線に近づいて

 自治体の皆さんは給付金や助成金の支給などで大変な中「マイナンバーが使えればいかに楽だったか」と感じる機会もあったのではないでしょうか。確かにマイナンバーカードはありましたし、形式的な番号も存在していました。しかし、活用するためのデジタルシステムが浸透していなかったがために、紙の申請書のチェックや誤字や記入ミスについての確認といった、行政的な手間がかかる方法を選ばざるを得ないという問題が生じてしまいました。デジタル的なものを入れるだけで行政の働き方も変わるでしょうし、個人情報の扱いに気を付けながら役所内で色々な形でつなげていけば、部署で縦割りになっていたものがだんだん横につながって見えてくると思います。

 住民が見ている行政というのは縦割りではなく、横につながった姿です。つまり、デジタルを介して行政が横につながっていくことで、住民の目線にだんだん近づいていけるのではないかと思います。今の行政の枠に違和感がある方は、その志と思いをCOGにぶつけてください。その動きが波紋となって広がっていくのを楽しんでもらえれば自己実現にもつながりますし、「仲間は結構いるものだ」いうことも感じ取ってもらえると思います。

――「自分を変える」が「社会を変える」ことになる

 市民が社会・行政に対する不満を飲み込まざるを得なかった時代が長く続いてきましたが、SNSの発達によって市民が声を発することができるようになりました。これは、多くの市民に問題を共有してもらえるようになったという意味で、重要な第一歩です。けれども、その段階だけでは文句に過ぎないですし、「対行政」のような対立構造を作ってしまいかねず、問題解決に直接つなげるのは難しい面があるのも事実です。これからのデジタル時代には、そこからもう一歩踏み出して行政と一緒に解決方法を考えるということが必要になってきます。行政を変えていくということは、社会を変えていくことにつながります。市民である私たちが行動すると、自分の地域を「こうしたらよくなる」「ああしたらもっと別の形になる」が具現化していきます。その過程でいろんな人とつながって仲間も増えていくし、自分の価値観や社会観を変えることもできるでしょう。自分が変わることが社会をかえることになるのです。

――共有し解決するプロセス重視

 現代はアプリを作る技術を持った人も増え、解決できる課題は増えてきたと思います。しかし、本当に重要なことはアプリを作ることではなく、みんなとわいわいがやがやしながら共有できる問題を見つけること。そして、問題意識を共有しながら「どうやったら変えられるか」と話し合うというプロセスです。その中で、成功するものも失敗するものもあるでしょう。しかし、我々COGは成果を問うのではなく、プロセスを重要視しています。世の中は1、2年で変わるわけではありません。肩の力を抜きながら、新しい仲間や環境を作りつつ、自分を変えていってください。私たちも皆さんのプロポーザルを応援していきたいと思っています。