「COGはたくさんの希望が全国にあることを気づかせてくれる」
これは私と同じく審査委員を務めていらっしゃる宇野先生がおっしゃった言葉です。今、日本全体を見渡すと、新型コロナウイルスの感染拡大が問題になっており、それに伴って経済も大変な状況に陥っています。そんな中、国・政府にできることには限りがあります。新型コロナのほかにも、災害が発生したり高齢化率は上昇し続けたりと、地方行政の現場では、解決すべき問題は同時並行で起きているのです。私は自治という言葉が好きなのですが、住民や地元企業が手を取り合って、自分たちで社会を作っていく動きがもっと活発になって、確立していってほしいと願っています。COGを通して「自治の芽」をたくさん見ることで、毎年私は希望に気づかせてもらっています。
COGはこれまで「永遠のベータ版」という言葉を掲げて活動してきました。オープンに試行錯誤を重ね、失敗してもかっこ悪くても、笑って前向きに進んでいくというCOGの文化を象徴している言葉です。企画をアイデアだけではなく市民・学生と自治体の連携体制でも評価をするというのは新しいコンテストの形だと思うし、2020のキックオフイベントは新型コロナウイルスの感染流行対策として完全オンラインでの開催に挑戦するなど、COG自体も新しい形にもチャレンジしています。また、我々は参加者に対して「シック(thick)データ」や「デザイン」という、新しいキーワードを提起し続けています。COGが一つのところにとどまらず、中身を充実させ続けていることの表れであり、これからも大切にしていきたい部分だと思っています。
そして何よりも大切にしたい財産は、参加してくださる方とのコミュニティーです。参加者側が主役で、それぞれが顔を覚え合っていけるようなコミュニティーを育てていきたいと思っています。例えば、先述の2020キックオフイベントでは、先に審査員がそれぞれ思うところを話して参加者が質問をするという形ではなく、先に参加者が問題提起をした上でそのテーマにそって審査員が質問に答えていくという形にするなど、コミュニティーを参加者主導にし分厚くしていくための仕掛けをしました。これから参加を検討されている自治体の方には、ぜひこの中に飛び込んできてもらいたいですね。地域社会の運営は本当に色んな難しさがあると思います。しかし、悲観してばかりはいられないでしょうし、打開するためには様々な工夫が必要になるでしょう。COGのコミュニティーではたくさんの地域の方々が色んなアイデアを出し、試行錯誤の経験を持ち寄って紹介し合うというコミュニティーがあります。ぜひ参加してみませんか。一緒に考えていきましょう。
市民・学生の方々にとって「こういうところを良くしたい」ということにチャレンジするきっかけを届けていきたいと思っています。地域の課題に関心を持っても、なかなか仲間を募って自治体に働き掛けようと踏ん切りをつけるのは難しいもの。そういう時、「コンテストに応募しよう」という明確なターゲットがあれば、声をかけやすくなることもあるかと思います。また、COGは市民・学生と自治体との連携を評価するコンテストなので、自治体とのコミュケーションを密に行うほど報われます。頑張りがいがあると思いませんか? 仮にうまくいかなくても、参加するだけで、何十もの団体が試行錯誤し、切磋琢磨している取り組みの実例を見たり、意見交換をしたりすることもできます。自分以外の考え方を学ぶ機会として、ぜひ参加してください。新しいヒーロー、ヒロインはあなたです。
データの活用などを進めている研究者という立場からは、地域経済分析システム(RESAS)といったデータ活用ツールを、実際の現場で活用できるようにお手伝いをしていきたいと思っています。また、開催回数を重ねていく中で、各地で自発的な活動を立ち上げたいと考える人たちがぶつかる共通の壁というか、課題のようなものも見えてきていました。例えば、地域で自治体などがすでに行っている業務や活動の現場とどうやってコミュニケーションをとっていくか、それをいかに発展させていくのか。もしくは新規のプロジェクトを始める際、2年程度活動をしていくために必要な数百万円規模のお金をどうするのか――。このような、スタートアップを支援するための仕組みの整備が不可欠だと感じています。地方自治やITを活用した地域づくりを研究する身として、この課題を解決していきたいと考えています。
そして、市民・学生が自治体と一緒に取り組むという枠組みの中に、地元企業が関わっていく動きが出てこないか、注視したいと思っています。地域の中で色んな分野を担う企業が動き出せば、その影響力は計り知れません。「お付き合いで市民活動に参加する」のではなく、地域経済・社会を担っている重要なプレイヤー「法人という市民」として、企業が住民や行政と一緒になって課題に取り組んでいく流れがもっと強くなれば嬉しいですし、そういう姿を応援していきたいと思っています。