このゼミは、東京大学教養学部で行っている1・2年生対象の少人数ゼミ「読み破る政治学」を、高校生向けに行おうとする試みです。大学生対象のゼミ自体文系・理系を問いませんので、ここでも文系・理系の志望を問わず広く参加者を募ります。
大学ではこのようにゼミあるいはゼミナールという授業があります。週に1回、2時間から3時間くらいの時間をとって、10名から20名くらいの学生同士が討論を行う授業です。主体は学生です。誰かが意見を言えば、別の学生がこれに応じて質問をしたり、反対の意見を述べたり、最初の学生はそれに答え、また別の学生が質問したり、といった質疑を繰り返します。担当の教員は、議論をじっと聞いていて、ときに補足したり、ときに質問をしたり、意見を言ったりという形で学生同士の議論に割って入ります。
通常は、このような授業を通じて得られるものは、議論をする力だとされます。このゼミでもそうですが、ただ、そこに工夫を加えています。教員はあまり議論に対して口を挟みません。ただし学生の様子をよく見て、その発言をよく聴くように努めます。学生たちは、とにかく質疑を繰り返します。すると自分たちの力で少しずつより正しい見方があることに気づき始めます。そうした議論を繰り返すと、学生たちは同じくらいの力量の人たちと力を合わせて、正しい見方に近づくことはどういうことかを学ぶのです。これは得がたい経験です。ゼミを終えて専門学部に進学していった学生たちが、このゼミを振り返って充実したゼミだったというのも、そうした経験が成長の一つの核になっているからだと私は思っています。
東大教養学部での牧原ゼミのシラバスはこちらです。
こうしたゼミを続けて5年目が終わろうとしていた2018年初に、この経験を生かして高校生向けのゼミを開講しようと思い立ち、3月に開講しました。きっかけは、2017年6月に東大教養学部主催の「高校生のための金曜特別講座」でゼミ形式に近づけた講義をしてみたことでした。そこでしっかりと自分の考えを持っているたくさんの高校生に接して、手応えを強く感じました。その経験を生かしてみたいと考えました。続いて、2019年3月にも高校生向けのゼミを開講しました。
2017年の高校生のための金曜特別講座はこちらのページです
2020年3月には、対面で開催することを当初は想定していましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が広がっていた時期となり、Zoomによるオンラインでのゼミとなりました。
そして2021年3月・2022年3月には、ハイブリッド形式でゼミを行いました。対面での参加を希望する学生には対面を認め(十分なコロナ対策を行った教室に来ていただきました)、オンラインでの参加を希望する学生にはオンラインでという形で行いました。2023年も同じようは、高校生向けに、対面・オンラインのハイブリッド形式でゼミを開催しようと思います。
2023年の高校生ゼミについて
このゼミのねらいは次の3点です。
第1に、高校時代から本の読み方を少しでもいいから工夫してみてはどうかという提案です。読書とは孤独な営みですが、同じ本を読んでどのように理解を深めていくかという経験を早い段階で持つと、その後の本との接し方が変わるだろうと思います。そうしたきっかけを関心のある学生たちに提供してみようと考えているのです。
第2に、高校時代に、私の専門分野である政治学ないしは政治に関連する本をより深く読んでいただきたいということです。18歳選挙権が施行され、今では高校時代に政治参加をする機会があります。そして昨今の政治状況は大変流動的です。行く末の不透明な時代に、政治についての古典的な本を読む経験を積むことで、政治問題さらには政治学に関心を持っていただければと思います。
第3に、東大先端研という場所を生かして、ゼミを行うことです。大学でのゼミの特徴は、それまで学内でよく知っているわけではない学生と毎週顔を合わせ、自分とはバックグラウンドの異なるいろいろな学生と議論をすることにあります。ところが、高校生は、普段は自分の学校の生徒と授業を受けます。学外で活動があったとしても多くの場合は同じ都道府県内でしょう。そこで、このゼミでは、zoomで全員が視聴し、希望者はスペースがゆったりとしている先端研の広い講堂で受講するというハイブリッドの形式で行います。オンラインで受講する人は、できればパソコンを(タブレット等でもまず大丈夫だろうと思います)ご用意いただき、ヘッドフォンなどで視聴する形をとっていただく予定です。
ゼミのスタイルは、毎回の講読文献を各自が読み、他の本を読むなど理解を深めつつ、A4・1枚のエッセイを事前にメーリング・リスト宛に提出します。そこから全員にエッセイが配信されますので、それぞれが事前に他の学生のペーパーを読み、当日はいくつかのペーパーを特に取り上げて、それについて他の学生が質問を次々に出して議論をするという形になります。ペーパーは手書きでもかまいませんが、送付するときには写真でとる、スキャンするなどして、電子メールを用いて下さい。
ただし、今回は初回からハイブリッド形式での開催なので、ゼミというワイワイ議論する場と、そうした議論をまずは聞いてみようという人向けの場を兼ねた形にしようと思います。
つまり、初回は現在ゼミを受講している大学1年生数名が、いわば「模範試合」のようにペーパーを書いてきて相互に議論します。高校生の皆さんは、ペーパーを提出していただいて議論に加わってもいいですし(そのうちのいくつかを当日取り上げるでしょう)、「とりあえずどんなものか見てみたい」という気持ちで視聴してみるだけでもかまいません。ですから、ゼミという雰囲気と、シンポジウムという雰囲気の双方を兼ねたものになるわけです。まずは、どんなものか見てみたいという人でも構いません。また自分はペーパーを書いてみようと思った人は、どうぞペーパーを事前にご提出下さい。
2018年・2019年の春休み前後の時期には、全部で4回ゼミを開催しました。2018年には8名の高校生が参加し、うち4名が東京圏の高校生で、関西圏から2名、中京・東海圏から2名の参加者がいました2019年は、8名の高校生が参加し、中京・東海圏から3名、関東圏から5名の高校生が参加しました(このときは途中から東京大学に合格した2018年のとき高校生として参加した学生1名も加わりました。
2020年の春休みでは、おそらくは新型コロナウイルス感染症のためでしょうが、当初は対面での開催も視野に入れていたこともあり、東京の高校生が8名参加しました。
2021年の春休みは、対面では数名から10名程度の出席があり、オンラインでも20名程度の参加がありました。対面は関東圏からの参加でしたが、オンラインでは全国から視聴がありました。2022年もほぼ同じような形で行ったところです。
このようなゼミですが、参加していただいた学生の感想では、様々な意味で有意義であったというコメントを頂いています。
2023年春期では、上記のような性格のゼミですので、人数制限はしません。ただし、ゼミの対象は現在の高校1年生、高校2年生を念頭に置いていますが、高校進学が決まっていて意欲のある中学3年生も可能です。また大学進学が決まっている高校卒業生も例年は参加対象とはしていませんでしたが、参加いただいてもかまいません。
なおご参考までに、牧原ゼミにはFACEBOOKとtwitterがあります。また牧原研究室は、FACEBOOK、twitterがありますので、研究活動については、そちらもご覧下さい。
出席してみようかと思われた方は次のページをご覧下さい。ゼミの内容、参加方法がそちらに記載されています。
ゼミ内容・参加方法のページはこちらです