肝癌の治療について

化学療法(抗癌剤治療)

肝細胞癌の化学療法

肝細胞癌は肝臓の中にとどまることが多い癌ですが、治療の経過中、まれに肺や骨、リンパ節などの肝臓の外の組織や血管の中に入っていくことがあります。前述した手術、RFA、肝動脈塞栓術などの治療は基本的に肝臓の中にとどまっている腫瘍を治療する方法で、肝臓からでた腫瘍は全身化学療法(抗がん剤の治療)によって治療します。今まで肝細胞癌は従来の抗がん剤では効きにくい癌として知られていましたが、2009年5月20日、肝細胞癌に効果を認める画期的な新薬が承認され、使用されるようになりました。

この一般名ソラフェニブ、商品名ネクサバールは分子標的薬といわれる新しい薬で、腫瘍細胞自体が増えるために必要な分子を抑制するだけでなく、腫瘍が大きくなるために必要な腫瘍血管を作るときに必要な分子も抑制します。血管が豊富な肝細胞癌を制御するにはこのような作用が効果的であることがわかってきました。この薬を1日4錠内服することで、癌の進行をとどめることが可能になります。化学療法が適応と思われる肝細胞癌患者602例をくじ引きして、偽の薬投与群とソラフェニブ投与群に分けて比較した臨床試験(SHARP試験)でソラフェニブの生存期間延長効果が臨床的にも証明されました。東大病院消化器内科でもこの薬を積極的に使用し、肝細胞癌の患者さんの治療に役立てています。

ソラフェニブの副作用対策

画期的ともいえる予後延長効果を発揮するソラフェニブですが、その副作用にはひと癖あり、下痢、高血圧、腹痛、倦怠感とともに手足症候群という副作用を半分くらいの患者さんに認めます。手や足の皮膚が厚くなり、ひどい場合は、痛みも伴い歩くのも困難になるという副作用で、患者さんの日常生活の質を著しくさげてしまいます。ソラフェニブの使用がはじまった当初はこの副作用により、投与を中断せざるを得なかった患者さんもいました。これに対して、東大病院では、消化器内科だけでなく、肝胆膵外科、泌尿器科、皮膚科、循環器内科、内分泌内科、看護部が協力して、チームとして副作用対策に当たることになりました。皮膚のケアに関する指導を徹底的に行うことで手足症候群を予防し、最近はこの副作用で中止する方はほとんどいなくなり、ソラフェニブの効果を十分発揮させることができるようになりました。

新規薬剤の治験

ソラフェニブを投与していても効果が弱くなり、癌が再度大きくなるかたもいます。現在、ソラフェニブ以外に肝細胞癌への効果が大規模試験で証明された薬はありません。製薬会社は新規薬剤をつぎつぎと開発しており、東大病院消化器内科では、臨床試験支援センターと協力し、このような新規薬剤の治験も積極的に行っています。

肝細胞癌に対する抗がん剤治療が必要といわれ、ソラフェニブおよび治験薬による化学療法が必要と担当の先生に説明されたかたは是非ご相談ください。

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