東京大学工学系研究科機械工学専攻 金子・山﨑研究室

金子智彦君、米国カリフォルニア大学アーバイン校留学より帰国

カリフォルニア大学留学レポート

金子智彦

 

私は、東京大学工学部・大学院工学系研究科の交換留学制度を利用して、2004年9月から2005年7月まで、米国カリフォルニア大学アーバイン校に留学した。主たる目的は、昨今エネルギーや自動車の分野で発展の著しい燃料電池技術の学習と研究であった。同校に設置されている米国立燃料電池研究センターに所属し、主に燃料電池・マイクロガスタービンハイブリッド発電システムについて研究を行うとともに、研究に必要な講義を受講した。研究センターの教授やスタッフの方々、多くの友人に助けられ、大変素晴らしい経験が出来た。また、日本や他の国から米国に留学している人たちとも知り合うことが出来たことにも留学の意義があった。特に大きな怪我や病気、事故、トラブル等もなく、文句のつけようのない留学生活だった。私の留学にご支援・ご協力くださった全ての方々に、心から感謝したい。

1.動機

私は教養学部時代、東大とスタンフォード大学との短期交換研修に参加したことがある。大学受験を終えエネルギーをかなり消耗している東大生と比較して、いよいよこれから高等教育を受けるんだ、自分で学んでいくんだ、というエネルギッシュなアメリカ人の姿を見て、両者の違いに衝撃を受けた。もちろん努力次第では東大でも十分な学習と研究が出来るが、世界の最先端で、しかもこのようなやる気に満ち溢れた仲間と勉強することは大変重要なことだと思われたので、私はこの短期研修以来、米国で学ぶチャンスを探していた。その後工学部に進学した私は、国際交流室の存在を知り、交換留学を利用してアメリカに留学することを決意した。
私は、大学院で次世代エネルギーシステムの研究に携わっている。この分野では、最近「燃料電池」が注目を集めている。従来の内燃機関を利用したものと比較して燃料電池によるエネルギーシステムは、高いエネルギー変換効率と低環境負荷、低騒音、低振動など、多くの点で有利な特性を発揮することが知られている。私は、エネルギー分野の研究に携わる上で燃料電池をより深く理解したいと考え、留学が可能な米国大学の中から燃料電池の技術を学べる大学を選んだ。それがカリフォルニア大学アーバイン校だった。

2.研究と授業

カリフォルニア大学アーバイン校には、Advanced Power and Energy Program (APEP)という、エネルギーおよび環境を包括的に研究する組織がある。その下部組織として、Combustion Laboratory(CL)とNational Fuel Cell Research Center (NFCRC) が存在し、前者が主にマイクロガスタービンの研究、後者が燃料電池の研究を行っている。APEPは独自の太陽光発電パネルや風力発電設備も所有しており、エネルギーに関する多様な研究ができる環境が整っていたが、中でも私の興味があったのは、燃料電池とマイクロガスタービンのハイブリッド化に関する研究であった。APEPの主催者であり私の指導教官でもあったG. Scott Samuelsen教授に相談したところ、同ハイブリッドシステムの動的シミュレーションに関する研究を勧めて下さり、以後1年弱、この研究を行った。同室の研究仲間とたくさん議論し合い、切磋琢磨して素晴らしい経験が出来た。燃料電池をゼロから勉強できただけでなく、ガスタービンの理解もより深まり、さらにはシミュレーションプログラムにも習熟したことで、自分の研究力が総合的に大きく向上した。
研究に従事するのと同時に、研究に必要な講義を受講するよう、教授に勧められた。そこで、秋学期に「応用熱力学」、冬学期に「燃焼と燃料電池の基礎」、春学期に「燃料電池の技術」を履修した。上記のうち秋冬は学部のもの、春は大学院の講義である。もともと熱やエネルギーが専門だった私は、東大で履修したものと同様の学部講義を再度取ることには不満だったが、結果的に大満足だった。よく言われるようにアメリカの授業は実践的で、数多くの宿題をこなすうちに工学的センス(数値に対するカン)が養われた。また、英語による授業は当初理解が心配だったが、既に東大で受講している内容ということもあり、理解が容易だった。大学院の授業である「燃料電池の技術」については、東大ではもちろん未習だったものの、この頃にはすでに研究によって燃料電池の十分な知識が身についており、単位取得も容易であった。上記3つの授業以外にも、機械工学科の大学院一年生に必須である機械工学セミナーも聴講した。このセミナーでは、毎週一度、機械工学科の各研究室の研究紹介がなされるもので、多分野の最先端の研究を見ることが出来て非常に興味深かった。

3.交友関係

留学中の大きな支えになってくれたのは、現地で知り合った友人たちである。研究センターの仲間、ルームメイト、交換留学仲間(日本から、世界から)などである。研究センターの仲間やルームメイトは、車のなかった私をいろいろな場所へ遊びに連れて行ってくれたし、北欧からの交換留学仲間には一緒にパブへ行ったりビーチへ行ったりポーカーをしたりした(散々負けた)。日本人留学仲間とは頻繁に日本食を作ったり、お互いの生活の情報交換をした。また、スポーツ施設で偶然見つけて加入した弓道クラブの人たちにも、とても仲良くしてもらった。主に英語によるコミュニケーションが多かったが、特に日本人仲間と日本語で会話できたのは留学のストレス解消に大変大きな意味があり、とても助かった。幸運だったといえる。

4.生活

私は研究目的で留学したので、1週間のほとんどを研究室ですごした。ただ講義も各学期ひとつずつ受講していたので、1週間で4時間ほど講義棟へ出かけていく生活だった。夜は仲間とパブに行ってビールを飲んだり、日本人と日本食を作って食べたりした。週末はビーチでバーベキューをしに行ったり、ロサンゼルスやサンディエゴに遊びに連れて行ってもらったりした。連休にはラスベガスへも行った。
渡米前は食事のことが心配だったが、幸いロサンゼルス近郊は日本人が数多く住んでおり、日本食スーパーがあったおかげで食材も日本と同じものが揃った。また、日本食そのものがアメリカで市民権を得つつあるようで、例えば味噌、ダシ、醤油、だいこん、はくさい、米などは、日本食スーパーに行かずとも手に入った。私自身はアメリカのハンバーガーやステーキ、ピザやタコスといった食事も好きだったので、食に関して不便を感じたことは全くなかった。
治安も心配されたことの一つだったが、アーバイン市はアメリカ国内の人口10万人以上の都市の中で犯罪発生率が最低で、たいへん治安のいい土地であったこともあり、危険を感じることは全くなかった。ただ、夜間外出の際は集団行動を心掛ける、施錠はまめにする、貴重品の管理はしっかりするなど、基本的なことは守った。一度、施錠して駐輪しておいた自転車の盗難にあったが、それ以外のトラブルは全くなかった。

5.これから留学を考えている人へ

私の留学は、文句のつけようのない素晴らしいものだった。他の人にも是非留学をして自分を高めて欲しいと思う。振り返ってみると、留学そのものよりも留学 準備のほうが何倍も大変だったと思うので、夢を持ち続けて頑張って欲しい。英語に関しては、口と耳は慣れるが、語彙は留学では殆ど増えない。留学が決定し ても、渡米まで語彙を鍛えると良い。

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