一行日記

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2006年10月2日(月) 博士課程要項

午前中本郷まで出かけて博士課程の出願要項をとってきた。昼頃駒場着。食堂が新しくなってかなり綺麗になった。二階で食べた。今回とりあえずわかったよい点は、セットのごはんをsにして安くすることができるという点。Gor'kov方程式の行列表示について、うやむやだった点がはっきりした。これで修士論文に書く基礎事項の確認がだいたい終わり。

2006年10月3日(火) 基礎物理学実験

説明を聞いてきた。ちゃんとテキストを読まなければ。今の居室のプリンタの出張修理を頼んだら、今日のうちに担当の人がやってきて直していった。プロだ。cond-matに出ていたYNi_2B_2CのPoint-contact spectroscopyの論文、読んでもいまいちよくわからない。引用文献数が4つしかないところもよくわからない。Gor'kov方程式の行列表示part2のPDFファイルをアップロードした。tripletでunitaryな場合の議論があれで十分なのかが不安だ。

2006年10月4日(水) ホメロス

ホメロスの叙事詩「イリアス」の文庫版を読み始めた。退屈するかと思ったが意外と面白い。ホメロスは紀元前8世紀頃の詩人で、このころまだ日本は縄文時代。LDOSのプログラムの改良が終わり、物理的には妥当な結果を出力するようになったが、実験結果と定性的にも全然合わない。まあプログラムはできたので適当にいじるしかない。久々に駒場プールへ行く。連続775m。ちょうど5分休憩時間のアナウンスが流れてしまい、記録更新は25mでストップ。

2006年10月5日(木) 同時進行

LDOSのプログラム、熱伝導率の計算、Point-contact spectroscopyの意味、など同時進行で研究していると、ときどきそれまで何をやっていたのかわからなくなる。福島研セミナーのParisi輪講に参加する。繰り込み群、もうちょっとしっくりくるまで理解したい。cond-matにFullPaper1号のver3をアップロードした。cond-matはまれにリジェクトされるので(ファイル容量オーバー等が主な原因)いつもどきどきしながらアップロードすることになる。

2006年10月6日(金) 冬学期物性セミナー第一回

Prof. Yuriy Bunkov (CRTBT-CNRS, Grenoble, France)の「Superfluid 3He and cosmology」という題目だった。3Heは沢山の秩序パラメータがありそのせいもあってビッグバンを実験で研究する手段となる、というような話。外から粒子をぶつけて急速な断熱膨張で温度を下げ、相図上での3HeA相と3HeB相の線をまたぐような転移を起こす。このときAとBが入り混じった状態が実現する?と理解した。英語での講演だったので確証は持てない。聞き取りやすい英語だった。しかし、全体を通して5割ほどしか理解できなかった。全力集中が30分も持たない英語体力の無さが原因。宇宙と関連づくということはわかったが、あの3Heの実験自体がどのような結論になったのか、何が言いたいのかは理解できなかった。最後はグロッキーだった。
リスニング能力の無さに困り、家に帰ったあとMatrixのDVDを英語字幕で30分ほど見た。3部作全部あるので毎日少しずつ見れば上達するのか?
研究は、実験を再現できるノードの位置を探り当てた。単純なことだった。しかしそれがなぜそこなのかはよくわからない。熱伝導率の実験と矛盾するように思えるので、熱伝導率の解析をさっさと終わらせてしまおう。

2006年10月7日(土) 土曜日。

三連休初日ということで、午後から来てみた。DOSの計算をしたり、関連論文を読んですごした。Born近似が大事なのか? Green関数を使って考えていてDOSとはなんなのかがわからなくなってきた。もう少し整理しなくては。

2006年10月10日(火) Green関数

Green関数をいじる。Makiさんのformulationがよくわからない。一体どんな積分を行ったのだろうか、と悩むこと4時間。しかしわからず。読解力が足りないのか数学力が足りないのか。Mathematicaも総動員して式変形をしていた一日。

2006年10月11日(水) 相変わらず

Makiさんのformulationをいじる。合わない。なので、もっと基本的なレベルから考えることにした。連休中に原宿のBookOffのどれでも二冊で1200円キャンペーンでサイモン・シン著「ビッグバン宇宙論 上」とシルヴィア・ナサー「ビューティフル・マインド 天才数学者の絶望と奇跡」を買った。お買い得だった。下をどこで買うかが問題だ。しかし本を買いすぎて読む時間が足りない。

2006年10月12日(木) 格闘中

いまだに式変形ができなくて悩んでいる。基礎事項は固めた。複素数に関する理解は深まったが、まだ数学スキルが足りない。合間に4時頃基礎実験TAのためにオシロスコープと剛体の実験をしてきた。ひさびさに配線した。オシロスコープのスイッチ群は覚え切れない。

2006年10月13日(金) Doppler Shift

Doppler Shiftの本質を理解した! この理解が正しければノードの位置に関する自分達の理解はまだ不十分だったことがわかる。そして自動的に秋の学会の内容は修正するべきものとなる。そしてなんと、修正した結果は先日出したLDOSから推測されるノードの位置と矛盾しない気がする。あとはいくつかの計算で自分の理解が正しいかどうかを慎重に検証すればよい。

2006年10月14日(土) Doppler Shift2

本質を理解したはずだが、用いている数学の理解が足りない。解析的に何が起きているのか追えるようになってからでなければ数値積分は危ない気がする。少しずつ前に進んでいる感触はあるのだが、まだ捉えきれない。さっきは、せっかく積分が実行できたと思ったらキャンセルして0になった。論文の表式はいつの間にか絶対値の積分になっている。ここを理解できればきっとうまくいくはず。どの物理量を小さいと近似しているかがもう少し明瞭になるように計算したい。息抜きに基礎物理実験の電磁力を体感しつつ、ひたすらMathematicaと紙と鉛筆で計算した一日だった。

2006年10月16日(月) さいころ

基礎実験TA開始。今日は学部生に混じって六つのさいころを100回振って何個1がでるかを数えた。そして25時半にやっとMakiさんの論文の意味不明箇所を一つ攻略した。これで数値計算にかけられる式への変形を証明したことになる。複素数の偏角表示が非常に便利だということがよくわかった。

2006年10月17日(火) 解析接続

解析接続に関する知識を蓄えた。以前から気になっていたエネルギーが負のとき状態密度が負になるという非物理的状況は、Green関数をうまく解析接続すれば自然に回避される(正になる)ことがわかった。なのでその関連のPDFノートを作ってアップロードした。計算ノート(紙)の記録を見ると、加藤研で勉強ではなく研究を始めたのは05年11月11日らしい。約一年が経とうとしている。いろいろなことをやったなあと思う。そしてたぶんあと10日ほどで学振特別研究員(DC1)の書類選考の結果がやってくる。基本的に四六時中落ち着かない。

2006年10月18日(水) LDOS

LDOSと角度依存の比熱の計算が矛盾するかどうかを見るために、Doppler Shiftに基づいた比熱のプログラムを作る必要があるが、実は微妙なところが納得できていなくて数値計算に入れないでいる。なんとかしたいところだ。MathematicaでMakiさんの結果を再現したと思ったのだが用いた式が間違っていた。

2006年10月19日(木) 複素関数論

複素関数論の知識がかなり不足していることを実感した。学部時代に全くやっていない範囲だったので、それを補うように少し勉強した。リーマン面とブランチについて調べた。明日からプログラムに移ることにしよう。そういえば一週間ほど前にfortranに象限まで考慮するatan2(y,x)という関数があることを初めて知った。それまではいちいちatan(y/x)をif文で分岐していた。

2006年10月20日(金) 物性セミナー第二回

栗田 玲 氏(東大生研加藤研)の「分子性液体における液体・液体相転移現象」だった。実験とシミュレーション両方やっていてかつ質問に対して適切に答えていて、話がすっきりしていた。なのにD3というのだから凄い。過冷却領域中に存在する液2-液1転移線の温度に対する傾きは、気液転移線と同じくらいなのかが気になった。イントロにあった相図では気液転移線と同じ傾きで液液転移線が書かれていたが、それは本当なのだろうか。高圧でないと現れない転移であるならば、相図上で転移線が非常に傾いているのだろうか?

2006年10月23日(月) 基礎実験

基礎物理学実験のTAをやった。主に、実験ノートを見て再実験が必要かどうかを判断した。7時過ぎまでやったので、結局今日は自分の研究はその後の一時間ほどしかできなかった。初日だったせいかいろいろ慣れていなくていろんな人に迷惑をかけてしまった。土日は群馬に行っていたので研究をしていない。というわけで、いまはプログラムを組んでいる。あまりにも入り組んできたので少しsubroutineを整理した。某A先生はけしからんと言うそうだが、プログラムコメントを日本語で書いたら格段にプログラムが見やすくなった。

2006年10月24日(火) プログラム

Doppler Shiftのプログラムを組んでいるが、いまいちまともな結果が出ない。一日中プログラムとにらめっこの日だった。

2006年10月25日(水) 確認

とりあえず、Makiさんの論文における解析的な近似計算の妥当性を確かめるためにフルの数値計算(と言っても積分するだけだが)のためのプログラムのバグ取りが終わった。無事Makiさんの結果と同じ結果になった。運動量空間での表面積分をするのだが、被積分関数が有限値となる領域が非常に小さいためなかなか苦労した。明日か明後日に学振の書類選考の結果が来そうなので、落ち着かない。プログラムを任意の形状のフェルミ面に対応できるように拡張しようと思ったが落ち着かないので今日はやめることにした。

2006年10月26日(木) 来ない

学振結果がまだ来ないのでやはり落ち着かない。バンド計算フェルミ面を用いてDoppler ShiftによるDOSを計算するプログラムは大体完成。しかし誤差が大きすぎるのかプログラムが間違っているのかまともな結果が返ってこない。というわけでひたすらいじる。

2006年10月27日(金) 冬学期物性セミナー第三回

求 幸年 氏(東大工・物工)の「パイロクロア反強磁性体におけるフラストレーション」だった。フラストレーション系というのはカゴメ格子って英語でkagomeなんだ、くらいしか知らなかったので、実際に物質としてそのような系があり簡単なモデルでフィッティングできるということに驚いた。クロムスピネル化合物で、横軸磁場で磁化にプラトーが存在するという実験結果があり、スピン格子相互作用と最近接以外の近接相互作用を入れて計算すると同様なプラトーがでるというような話だった。スピン間相互作用Jなどが複数あり動かせるパラメータが沢山あるので、実験と合わせるためには第一原理計算の支援を受けてパラメータを決めたいと述べていたが、それってものすごく難しいことなのではないか、と思った。本気でフィッティングしにいくのか、定性的に目指していくのか、バンド計算のデータを使っている身としてはそこが気になった。
自分の研究は、バンド計算のデータ点数が少ないのでそれを補完して点数を増やすかどうかを迷っている。いまのぐちゃぐちゃしたデータがプログラムミスであればそれはしなくてもいいので、悩むところ。

2006年10月30日(月) 基礎実験2回目

だいぶ慣れてきた。学生がどこを間違いやすいかをもう少し把握できるようになるともっとノートチェックがスムーズに行きそうだ。ノートパソコンのVine Linuxにintel Fortranを入れていつもやっている計算をやらせてみたら、明らかに遅かった。

2006年10月31日(火) 学振

夕方学振から書類が来ました。書類落ちしました。不採用者のうちのおおよその順位はAということですが、ショックです。最近、慢心があったのかもしれません。気合い入れます。「研究者としての能力、将来性」、「研究業績」、「研究計画」の三つの評価項目があるのですが、そのうち「研究業績」はかなりよい点なのですが、ほかの二つが低かったです。ちょうど昼頃にDoppler Shiftのプログラムが完成してまともな結果を吐き出したので、それをまとめて整理して、三つ目の論文を出したいです。今度は海外のPhys.Rev.BかできればPhys.Rev.Lett.に出したいです。来年のDC2に向けて走ります。もう少し早く起きて、もう少しがんばることにします。というわけで、今夜は彼女さんと残念会酒飲みをしています。

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