ガラス転移を理解する

液体を急冷あるいは急圧縮すると、粘性が発散的に増大し、ついには構造が乱雑なままで固体になってしまう。 これがガラス転移です。粘性が発散するということは、分子の運動がスローダウンして凍結してしまうということです。 ではガラス転移は相転移でしょうか?実験室で見られるガラス転移は、単に分子運動の緩和時間が人間の観測時間を越えてしまい、人間にとって凍結してしまっただけのことです。 となると、まず考えるべきは、無限の観測時間が与えられたときに真正な相転移があるかということでしょう。 実は、この最初の問いの答えすら分かっていません。 ごく最近になって興味深い知見が蓄積されてきましたが、本質的解決を見るには更なるアイデアが必要です。
一方でガラス系の実験で実際に見られるのは、分子運動の劇的なスローダウンです。 では何がスローダウンを引き起こしているのでしょうか?液体がガラスになる直前の分子の運動を可視化してみると、単に乱れた配置をとっているとしか見えなかった分子達が、 実は、早く運動する粒子同士・遅く運動する粒子同士が固まって運動している、つまり協同的に運動していることがわかります。 これは動的不均一性と呼ばれるガラス系で幅広く見られる特徴であり、スローダウンの本質に関わると考えられていますが、現状では十分な理解はありません。 私達は、この錯綜した状況にあるガラス転移研究に筋道をつけることを大目標にして、理論的・数値的研究を進めています。

乱れた物質を理解して分類する

乱れた物質は身の回りにありふれています。 例えば窓ガラスやガラスコップが、ケイ素原子や酸素原子が乱れた配置のまま固まったものであることは良く知っているでしょう。 それ以外にも、歯磨き粉(コロイド粒子が液中に分散した系)はコロイド粒子が乱雑な配置のまま固まった系ですし、マヨネーズ(油滴が水中に分散した系、エマルションという)は油滴が乱雑な配置のまま固まった系です。 さらに視野を広げると、砂場にある砂山は、砂粒が乱雑な配置のまま固まった系だし、交通渋滞などもその一例といえるでしょう。 さて、我々がこれらの系の粒子の配置を見ても、単に乱れているとしか見えません。では、本質的にもこれらの系は同じものなのでしょうか? それとも人間の目が節穴だから同じに見えるだけであって、実は「乱れ方」に違いがあって、本質的には区別すべきものなのでしょうか? 私達は、多彩な乱れた物質を理解し、正しく分類することを目標にした研究を進めています。

修士課程・博士課程の大学院生として研究してみたい方へ

乱れた物質の物理の研究の魅力は、その広さと奥深さにあると思います。 身の回りにあるありとあらゆる乱れた物質が考察の対象になるという広さ、そして液体とも固体とも違う不思議な現象が見られるという奥深さです。 一緒に研究してみたいという学内・学外の志望者を歓迎いたします!

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