ヒストリー
生物生産工学研究センター(第一期)は、特に環境分野での種々の問題解決をめざし微生物学研究と構造生物学的研究を強力に推進するため、1993年に2部門制で設立された。以前より農学部付属施設として存在していた東京大学農学部生物生産工学研究施設を発展的に解消して設立されたもので、研究室スタッフが農芸化学科関連研究室(応用生命工学専攻、応用生命化学専攻)出身なこともあり、当時から現在に至るまで両専攻と非常に強い結びつきを持って運営されてきた。2000年12月に行われた第一期センターの評価を受け、2003年4月より第二期センターが設立された。第二期のセンターでは、環境問題、食糧問題の解決や有用物質の生産と言った重要な問題で、新たな発展を期すべく、一部門を新たに加え三部門制(環境保全工学部門、細胞機能工学部門、植物機能工学部門)で植物・微生物学研究を行っている。
環境保全工学部門(環境保全工学研究室と呼ばれることが多い。「かんぽ」と略称される。英語名はLaboratory of Environmental Biochemistry)は第一期センターの生物制御工学部門(大森俊雄教授、現在は東京大学名誉教授)の跡地に、第一期センターの終盤に生物構造工学部門教授であった山根久和を教授、生物制御工学部門助教授であった野尻を助教授に、同部門助手であった羽部浩を助手として2003年4月に発足した。その後、同年8月に岡田憲典を助手に迎えた。2006年3月に羽部が産業技術総合研究所に転出した後、長らくスタッフ3名の体制で研究室運営を行って来たが、その間に日本農芸化学より2012年に山根が日本農芸化学功績賞を授与されたのに加え、2006年に野尻が、2010年には岡田が同じく日本農芸化学会より農芸化学奨励賞を授与された。2012年3月に山根が定年退職し帝京大学理工学部バイオサイエンス学科に転出した。また、野尻は2013年に日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞を受賞している。なお、2013年9月に行われた外部評価会と本部による点検評価により2014年以降のセンターの継続が了承されている(設立当初は十年時限センターであったため、第一期、第二期という呼び方をしたが、現在、時限の設定はなくなっている)。
2013年1月に野尻が教授に、同11月に岡田が准教授にそれぞれ昇任した後、2014年4月には水口千穂を助手に迎えて現在の体制となっている。当研究室の研究は、ポスドク研究員の他、大学院生(日本学術振興会博士研究員を含む)、学部学生、共同研究先からの委託卒論生などにより行われている。また、多くの学内外の大学の研究室、企業、公的研究機関とも広く共同研究を行っている。
環境保全工学部門における主要研究テーマは、微生物研究テーマと植物研究テーマの二つに大別できる。微生物研究テーマとしては、①環境中での汚染物質分解能を制御するプラスミド機能の解明、②難分解性物質分解遺伝子群の分子遺伝学的研究が挙げられ、植物研究テーマとしては、③植物の病虫害抵抗性発現機構の解明、④抗菌性化合物ファイトアレキシンの生合成と転写制御機構の解明等が挙げられる。 微生物研究テーマ①②は野尻、水口が、植物研究テーマ③④は岡田が中心となって研究を遂行している。